RTX 5090 D v2、中国が自ら輸入を禁止

エヌビディアが中国のためだけに開発したGPUを、その中国が受け取らなかった。米国の規制をかいくぐって生まれたカードが、行き場を失っている。

RTX 5090 D v2、中国が自ら輸入を禁止

エヌビディアが中国のためだけに開発したGPUを、その中国が受け取らなかった。米国の規制をかいくぐって生まれたカードが、行き場を失っている。


「自国専用」を自国が締め出す

エヌビディアのGeForce RTX 5090 D v2が、中国への輸入を事実上禁止された。今回の規制は米国からではなく、中国側が自ら動いた。

ここに至るまでには、少し長い経緯がある。まず2024年末、エヌビディアはRTX 5090と同時に中国専用モデル「RTX 5090 D」を発売した。ところが米国の輸出規制強化を受け、このカードも中国での販売が禁止される。そこでエヌビディアはさらにスペックを落とした第2世代、「RTX 5090 D v2」を2025年8月に市場に投入した。

VRAMは32GBから24GBに削減、メモリバス幅も512ビットから384ビットに絞られた。AIの処理能力を意図的に抑えた、いわば規制仕様のゲーミングGPUだ。

それが今、また止まった。ただし今度は米国側の判断ではない。

中国税関が「処理不可」の通知

香港の業界メディアHKEPCが報じたところによると、中国のマザーボードメーカー各社が最近、中国税関から一斉に通知を受けた。内容はシンプルで、「GeForce RTX 5090 D v2は通関処理が認められず、輸入できない」というものだ。

中国のマザーボードメーカー複数社が、中国税関からGeForce RTX 5090 D v2の通関を認めない旨の通知を受けたと報告。輸入業者も販売許可を取得できなくなった。突然の禁止令にエヌビディアは完全に不意を突かれた形だ。

― HKEPC(2026年5月)

タイミングが皮肉だった。米中両政府はちょうど貿易交渉の場でH200 AIチップの輸入再開に向けた動きを進めており、ジェンセン・ファン氏がトランプ氏とともに米国で会談を行ったばかりだった。緩和の流れが来ると市場は楽観視していた。ところが中国は逆方向に動いた。

なぜ中国は自国市場向けGPUを拒むのか

理由については、中国のメーカー各社も「わからない」と言っているようだ。ある中国のマザーボードメーカーは次のように述べている。

RTX 5090 D v2のAI演算性能はすでにロックされている。このカードを禁止したところで、中国国産AIチップの開発が進むわけではない。なぜ税関がこの判断をしたのか、我々にも理解できない。

― 中国系マザーボードメーカー(HKEPC経由)

業界では一つの見方が広まっている。中国政府がRTX 5090 D v2を「性能を削られた侮辱的な製品」と見なし、自国市場に並べたくないと判断したという解釈だ。

確かに中国の消費者の反応も複雑だった。RTX 5090 D v2はスペックダウンしたにもかかわらず、前モデルと同じ1万6499元(約38万円)という価格で発売された。「下位モデルを同じ値段で買わされる」という批判は、発売当初から上がっていた。

行き場のないGPU

問題はここからだ。RTX 5090 D v2は中国専用に設計されたカードで、それ以外の市場では販売できない。中国に入れなければ、文字通り行き場がない。

中国税関は物流会社にも通知済みで、RTX 5090 D v2への輸入許可証は発行しないとしている。中国専用製品であるため他国での販売もできず、エヌビディアは完全に手詰まりの状態だ。

― HKEPC(2026年5月)

現実的な流通経路として浮上しているのが、闇流通だ。中国の業者がブラックマーケットを通じて第三国に横流しするか、あるいはAI企業に直接持ち込む可能性がある。

実際、中国最大のECプラットフォームであるJD.comは以前、「AIグラフィックボード」として禁輸品のエヌビディアGPUを販売するページを開設し、その中にRTX 5090 D v2も含まれていた。このページはメディアに取り上げられた直後に削除されている。

AI企業の間でも対処法が横行している。RTX 5090 D v2を入手したAI系企業の中には、VRAMを倍増して48GBに改造するケースが多数報告されており、元の仕様はもはや形骸化している。

中国のゲーマーが払うツケ

最終的なしわ寄せは、ゲームをしたいだけの一般ユーザーに来ている。

RTX 5090 D v2が禁止された今、中国で最速のゲーミングGPUとして残るのはRTX 5080だ。RTX 5080とグローバル市場のRTX 5090との間には、性能でかなりの差がある。

中国は国産GPUメーカー各社の開発を後押しするなどしてきたが、いずれもエヌビディアのRTX 50シリーズには遠く届かない。中国のゲーマーが使えるGPUの選択肢は、また一段と狭まった。

― HKEPC(2026年5月)

米国の規制を回避しようとエヌビディアが用意したカードを、中国自身が拒んだ。そのしわ寄せは、規制とも外交とも無縁なゲーマーたちに届いている。


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