サムスン元研究員、18nm DRAM漏洩で懲役7年
サムスン電子(Samsung Electronics)の元研究員が、10nm級DRAMの製造工程600以上を手書きで写し取り、中国CXMT(長鑫存儲)へ流していた。ソウル中央地方裁判所は産業技術保護法違反で懲役7年を言い渡した。報酬は29億ウォン、日本円でおよそ3億円。
サムスン電子の元研究員が18nm DRAMの工程情報を中国CXMT(長鑫存儲)へ流した事件で、ソウル中央地方法院が懲役7年を言い渡した。6年間の金額は約29億ウォン。裁判所が量刑で「大企業側の補償制度への疑問」を有利な事情に挙げたことが、新たな論点を浮かび上がらせている。
判決の骨子
ソウル中央地方法院の刑事合議28部(裁判長・ハン・デギュン部長判事)は4月22日、産業技術の流出防止および保護に関する法律違反(国家核心技術の国外流出など)の罪で起訴されたサムスン電子エンジニア出身のチョン某氏(56)に懲役7年を言い渡した。チョン氏は共犯と共謀し、国家核心技術に指定されているサムスン電子の18nm DRAM工程情報を中国のCXMT(長鑫存儲、Changxin Memory Technologies)へ流したと認定された。
サムスン電子がこの18nm DRAM技術の開発に投じた金額は、約1兆6千億ウォン(約1700億円)。裁判所は「大企業が巨額の開発費と多数の研究人材を投じて確保した核心情報を、構成員が取得して外国で使用させた」事案であり、「大企業はもちろん大韓民国にまで損失を与えた」として、厳罰で臨む必要があると指摘した。
チョン氏は元サムスン電子幹部と共にCXMTへ移籍する過程で工程技術を持ち出したうえ、核心人材の引き抜きを通じてCXMTのDRAM開発計画の策定にも関与したと認定されている。捜査への対策も徹底しており、偽装会社を通じてCXMTに入社し、逮捕に備えて共犯間で暗号を伝播するなど、発覚を避ける体制を整えていた。
裁判所が量刑で挙げた「補償制度への疑問」
注目すべきは、量刑理由に現れた一文だ。裁判所は加重事由として国家と大企業への損失を強調しつつ、犯行当時、大企業側の営業秘密遵守に対する十分な補償があったか疑問がある点を、被告人に有利な事情として考慮したと述べた。
この一文は、個人の給与水準の話ではない。退職者が持ち出せる核心技術に対して、企業が在職中および退職時にどのような補償制度を設けていたか、という制度論に踏み込んでいる。
国家核心技術を敵対的な競合へ売り渡した行為は厳しく処罰される。その一方で、機密保持の対価が制度として十分だったかは問い直される余地がある。裁判所はその両方を天秤に載せたうえで、7年という刑期を導いた。機密保持を現場の良心だけに委ねる時代は、司法の側からも静かに終わりが告げられている。
「元部長キム氏事件」の追加捜査から見つかった
今回の判決は、単独で起きた事件ではない。チョン氏の犯行は、サムスン電子の元部長キム某氏がDRAM工程技術の無断漏洩容疑で拘束起訴された事件を追加捜査する過程で発覚した。
そのキム氏の裁判は、さらに複雑な軌道を描いている。1審で懲役7年が言い渡された後、2審で懲役6年・罰金2億ウォンに減刑され、大法院(最高裁)が2026年2月、原審を有罪取旨で破棄して差し戻した。差戻審の判決は、チョン氏判決の翌日である4月23日午後2時に予定されている。
大法院の破棄差戻しは、原審の結論を覆すか量刑の見直しを求める判断。有罪取旨の場合、差戻審で量刑が加重される可能性が高い。同一のCXMT事件関連で、2件の有罪判決が連日で確定する流れになる。
司法は機密漏洩に対して明らかに厳罰方向へ舵を切っている。同時に、量刑の議論には「企業の補償制度が十分だったか」という新しい物差しが入り込み始めている。
CXMTという舞台装置
漏洩の受け手となったCXMTは、中国地方政府が2兆6千億ウォンを投じて設立した、中国初のDRAM半導体会社だ。2016年の設立直後からサムスン電子の核心人材を迎え入れ、DRAM開発の体制を急速に整えてきた。
その後のCXMTの技術進展は、通常の半導体メーカーには描けない曲線をたどっている。2022年に17nm DRAM、2023年には中国初・世界で4番目となる10nm級DRAMの量産を達成した。EUV露光装置へのアクセスがほぼ絶たれている中国企業が、独力でここまでの飛躍を実現したと見るのは、確かに無理がある。
18nmはCXMTが10nm級に進む前の世代に相当する。サムスンから流出した工程情報が、CXMTの技術的土台のどこかを支えていたかは、今回の判決が「使用された」と認定した事実をどう読むかに関わる。
それでも、買う側の選択肢としてのCXMT
半導体サプライチェーンの現場では、別の力学が動いている。世界的なDRAM不足のなか、HPはCXMTを含む中国系サプライヤーからの調達を検討していると報じられ、デル(Dell)もサプライヤー資格を与える動きを見せている。エイスース(ASUS)とエイサー(Acer)は中国メーカーからの現地調達を交渉しているとされる。
HBMに生産能力を割かれて汎用DRAMが不足するなか、CXMT製メモリは買わざるを得ない選択肢になりつつある。CXMTは米国防総省が中国軍事関連企業と疑う「セクション1260Hリスト」に掲載されているが、現時点で米国の完全な輸出禁止対象にはなっていない。このグレーな位置づけが、PCメーカー各社にとっては好都合に作用している。
サムスンから流出した工程情報が土台の一部となった可能性のあるDRAMが、サムスンの顧客だったPCメーカーの製品に積まれていく。この皮肉な構図が成立する舞台は、もう整いつつある。
紙とペンが、半導体大国を揺らした
今回の判決は、終わりではなく節目に過ぎない。昨年末には他にも10人の元サムスン社員が同種の容疑で起訴されており、ソウル中央地検は韓国史上最大規模の産業技術漏洩事件として捜査を続けている。
現代の半導体産業は、数千億円規模の設備投資と、数万人の技術者の経験の積み重ねの上に成り立つ。その核心が、一人の退職者の記憶と手を通じて国境を越えた。この事実は、どれほど高度な防御網を張っても、人間の判断の前では脆いものだと示している。
技術の先端を走る企業が本当に守るべきものは、ファイアウォールの外側にも広がっている。
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