HUDIMM DDR5、実測で帯域ほぼ半減「安い」の代償
DDR5価格が跳ね上がるなか、ASRockがIntel・TeamGroupと打ち出した救済策「HUDIMM」の実性能が明らかになった。HKEPCがASUSの協力で実測した結果、帯域幅は標準UDIMM比で最大48.9%低下。安さの代償は、想定より大きい。
ASRockの「性能は良好」という主張の実態
HUDIMM(Half Unbuffered DIMM)は、標準的なDDR5 UDIMMが持つ2本の32-bitサブチャネルを1本に削る設計だ。同じ容量を達成するために必要なDRAMチップが半分で済むため、製造コストが下がる。ASRockは4月17日、Intel 600/700/800シリーズのマザーボードでBIOSサポートを有効化したと発表。Intel エンスージアスト・チャネル・セグメント事業部の副社長兼ジェネラルマネージャーを務めるRobert Hallock氏も公式発表に名を連ね、「Intelユーザーが今後もDDR5メモリの恩恵により多くアクセスできるようにする」とコメントした。
ASRock自身は宣伝資料で、8GBのHUDIMMと16GBのUDIMMを組み合わせた非対称デュアルチャネル構成が、24GB UDIMM単体より若干速いと主張している。ただし、この比較は2枚対1枚の比較であり、そもそもフェアとは言えない。AIDA64という合成ベンチマークで取られた数字でもある。
そしてASRockの資料では、レイテンシは約90nsと記載されており、現代のDDR5としては明らかに高い。「良好」という表現の裏に、見えにくい形で性能低下は忍ばせてあった。
HKEPC実測、4構成で出揃った数字
今回HKEPCが行った検証は、ASUSのR&Dチームの協力のもと、ROG Maximus Z890 ExtremeとCore Ultra 9 285Kの組み合わせで実施された。メモリモジュールのサブチャネル側にテープを貼って物理的に遮蔽し、HUDIMM相当の動作状態を再現する方式だ。DDR5-7200動作で、AIDA64のCache & Memoryベンチマークを走らせている。
BIOS上では「G.Skill Intl 16384MB 4800MHz」と認識されたモジュールが、実際には8192MB DDR5-7200として動作する。つまり容量と帯域が半分に削られた状態だ。CPU-Zでも「Channel # 1×32-bit」と表示され、HUDIMMの動作環境が正確に再現されている。
実測された4構成の数値はこうだ。
HUDIMM(1×32-bit Single Channel) 8GB 1枚 Read 32,447 MB/s / Write 25,195 MB/s / Copy 26,894 MB/s / Latency 87.7ns
UDIMM(2×32-bit Single Channel) 16GB 1枚 Read 58,913 MB/s / Write 48,800 MB/s / Copy 52,648 MB/s / Latency 85.7ns
同じDDR5-7200で、読み書きコピーすべてがUDIMM比で45〜49%の低下。桁違いの差ではなく、ほぼきっちり半分だ。サブチャネルを半分に減らしたのだから帯域が半分になるのは理屈上当然とはいえ、実測値として目の前に並ぶと重みが違う。
レイテンシは87.7nsと85.7nsでほぼ誤差範囲。ASRockが宣伝資料に載せた90nsという数字は、実測ではもう少し改善しているが、それでも2nsほど劣化している。
2枚挿しHUDIMMより1枚のUDIMMが速いという逆転
ここからが皮肉な話になる。HKEPCは続けて、2DIMMでのDual Channel構成も実測している。
HUDIMM(1×32-bit Dual Channel) 16GB 2枚 Read 58,928 MB/s / Write 48,461 MB/s / Copy 51,473 MB/s / Latency 86.5ns
UDIMM(2×32-bit Dual Channel) 32GB 2枚 Read 106.02 GB/s / Write 93,235 MB/s / Copy 97,522 MB/s / Latency 86.4ns
HUDIMMを2枚挿してDual Channelで動かした構成(16GB)の数字を、UDIMM 1枚のSingle Channel構成(16GB)と並べてみてほしい。Read 58,928 MB/s対58,913 MB/s、ほぼ同じだ。HUDIMM 2枚の帯域は、UDIMM 1枚と同等でしかない。
HUDIMMを2枚挿すと、物理的には2スロット占有する。将来のアップグレードの余地も消える。それで得られるのがUDIMM 1枚分の性能。「安く済ませた」というより「スロットを無駄に使った」に近い構図になる。
もちろんHUDIMM 2枚同士のDual Channelが、HUDIMM 1枚の約2倍になっているので、規格としての整合性は取れている。ただ、性能観点で見た時の経済合理性は、かなり怪しい。
2×32-bit UDIMM Dual Channel、これが本来の姿
最後に、健全なUDIMM 2枚Dual Channel構成の数字を置いておこう。Read 106.02 GB/s、Write 93,235 MB/s、Copy 97,522 MB/s。HUDIMM 1枚のSingle Channel構成と比べるとRead帯域で約3.3倍の差がある。
DDR5の持つ本来の性能を引き出すには、2×32-bit構成のUDIMMを2枚挿すのが当然の選択肢だった。HUDIMMを使うというのは、その基準点から帯域を意図的に削り、コストと引き換えにする選択になる。
DDR5高騰の根元に触れない対症療法
HUDIMMが出てきた背景には、AI向け需要による深刻なDRAM不足がある。3DCenterの調査では、2025年7月から2026年1月にかけてDDR5モジュール価格は平均340%上昇、つまり平均4.4倍まで跳ね上がった。TrendForceは2026年を「構造的な価格上昇の年」と位置づけており、Micronは2025年末に消費者向け市場から事実上撤退、供給側は実質2社体制に縮小している。
DDR5モジュール価格:2025年7月比で平均4.4倍。TrendForceは2026年も上昇基調を予測し、TeamGroupのGerry Chen氏は「正常化は2027〜2028年以降」と警告している。
こうした状況で「チップ半分で作れる」HUDIMMが提案されるのは理解できる。ただ、根本的な供給不足を解消するわけではないし、ユーザーが手にする性能は確実に削られる。エントリーPCやオフィス用途ならという但し書きは付くものの、HUDIMMで組んだPCが数年後にパフォーマンスを求められる局面でアップグレードしようとしても、DIMMスロットが2本とも埋まっていれば買い替えるしかない。
コストを下げる代償に、DDR5が本来持つ帯域を半分放棄する規格だ。DDR5-7200という高クロックのプラットフォームに挿しても、出る数字は従来のDDR5-4800 Dual Channel構成より低い水準に落ち着く。規格の成り立ちと使いどころを理解していないと、選択を誤る構図になる。
「半分の価格なら半分の性能でもいい」の数字は
HKEPCが記事の締めくくりで出した結論は直接的だ。「高性能なDDR5プラットフォームを組もうとしているなら、8GBのHUDIMMは使うべきでない」。容量の不足が問題なのではなく、上位CPUの性能を浪費する構造的な問題だと指摘している。
つまり、CPUやマザーボードに投じたコストを回収できないという構図になる。エントリー向けH610M+Celeron級の構成なら妥当でも、Z890+Core Ultra 9で使うメモリではない。ASRock自身もそう位置づけているわけだが、店頭に並び始めた時にその境界線が守られるかどうかは、別の話になる。
価格高騰を耐えるための応急処置として出てきた規格が、その応急処置らしい制約をきちんと背負っている。買う側が使いどころを誤ると、安物買いの銭失いになる。
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