FSR 4.1がRadeon RX 7000に正式対応。iGPU向け軽量モデルも開発中

FSR 4.1がRadeon RX 7000に正式対応。iGPU向け軽量モデルも開発中
AMD

AMDのFSR 4.1がRadeon RX 7000シリーズに正式対応した。予定は7月だったが前倒し。iGPU向けの軽量MLモデル開発も公表され、Computexで宙に浮いていたRDNA 3.5対応にひとつの答えが出た。


7月を待たずに来た

AMDのジャック・フイン(Jack Huynh)氏が6月22日、FSR Upscaling 4.1をRadeon RX 7000シリーズに正式展開すると発表した。同日公開の最新Adrenalinドライバで、RX 7000ユーザーはFSR 4.1を使えるようになる。

フイン氏は5月14日にRDNA 3対応を予告し、スケジュールは「7月」としていた。それが早まった。300本を超えるFSR 4対応タイトルがそのままRX 7000でも有効になり、ドライバのオーバーライド機能を使えばFSR 3.1対応のゲームにもFSR 4.1を適用できる。

RX 7900 XTXでCrimson Desertを4Kネイティブで動かすと平均43fps。FSR 4.1を有効にすると64fps。AMDが公開した数字だ。

AMD

ディスクリートとiGPUで分かれるモデル

今回の発表で見逃せないのは、iGPU対応への言及だ。

フイン氏はRDNA 3とRDNA 3.5のiGPU(APU搭載の内蔵GPU)向けに、新たな軽量機械学習モデルを開発していると明かした。ノートPC、ミニPC、ゲーミングハンドヘルドなど、ディスクリートGPUを積まないデバイスへの展開を見据えている。リリース時期は未定だが、対象にRyzen AI 300、Ryzen AI 400、Ryzen AI MAX(300/400)が含まれる。

ここまでの経緯を知っていれば、この発表の重さが分かる。

Computex 2026で、AMDのデヴィッド・マカフィー(David McAfee)氏はRDNA 3.5へのFSR 4.1対応について「現時点では予定していない」と述べた。フランク・アゾール(Frank Azor)氏が「そのような決定はなされていない」と打ち消し、マカフィー氏自身も改めて「来るとは言っていない」と補足する。AMD社内でさえ方針が固まっていなかった。

そして今日、フイン氏が「軽量MLモデルを開発中」と踏み込んだ。来るか来ないかに対して、「来る。ただし別のモデルで」というのがAMDの回答だ。

技術的な背景

FSR 4.1のアップスケーリングは機械学習モデルで画像を再構成する。RDNA 4(Radeon RX 9000シリーズ)はFP8(8ビット浮動小数点)演算に対応した第2世代AIアクセラレーターを搭載しており、これがFSR 4の本来の動作環境だ。

RDNA 3にFP8はない。搭載するのはINT8(8ビット整数)演算をサポートする第1世代AIアクセラレーターだ。AMDはFSR 4.1のMLモデルをINT8向けに最適化し、RDNA 4と同等の画質を実現するとしている。Computex 2026でAMDのチーフソフトウェアオフィサー、アンドレイ・ズドラヴコヴィッチ(Andrej Zdravkovic)氏とソフトウェアディレクターのテリー・メイクドン(Terry Makedon)氏は、基盤となるモデルはわずかに異なるが最終的な画質は同等になると説明した。

GPU世代別 FSR 4.1対応状況
GPU世代命令セット対応状況スケジュール
RDNA 4FP8対応済み
RDNA 3INT8対応済み6月22日配信
RDNA 3.5INT8軽量モデル開発中未定
RDNA 2INT8公式対応予定2027年初頭
※ RDNA 4はFP8ネイティブ対応。RDNA 3/3.5/2はINT8向け最適化モデルで動作

ディスクリートGPUとiGPUの差はCU(コンピュートユニット)数に表れる。RX 7900 XTXは96CU。Radeon 890M(RDNA 3.5)は16CU、Radeon 840Mに至っては4CU。同じINT8モデルをそのまま走らせれば、iGPUではアップスケーリング自体がフレームレートを食い潰す。だから「軽量モデル」が要る。

リークが先に答えを出していた

この1年、FSR 4の旧世代対応はつねにコミュニティが先行してきた。

フイン氏が発表した同じ6月22日、ValveのProton ExperimentalブランチからFSR 4.1.1(バージョン2.3.0)のDLLが流出している。AMDが6月20日に署名したバイナリで、RDNA 3.5のRadeon 890Mでも動作をコミュニティが確認した。AMDが「決定していない」と言い続けていた間に、リーク品が「技術的には動く」と証明してしまう。もう何度目か分からない

2025年8月のFidelityFX SDKソースコード誤公開に始まり、2026年2月のVanguard版DLL流出、3月のAMD公式CDN上でのバージョン発見、そして今回のProton経由のリーク。AMDの公式発表は、そのつどコミュニティの既成事実を追認してきた。5月14日のRDNA 3/RDNA 2対応発表自体が、1年にわたるユーザーの不満と非公式動作の蓄積に押された結果だ。

RX 7000ユーザーは何が変わるか

FSR 4.1への移行で変わるのは画質だ。FSR 3.1はシェーダーベースの空間アップスケーリングで、MLベースのFSR 4系とは再構成の質が根本的に異なる。草木や遠景の細部、パーティクルエフェクトの保持、動きのあるシーンでの時間的安定性。FSR 4.1はこれらすべてを大幅に引き上げる。

INT8で動かす以上、RDNA 4のFP8ネイティブ実行と比べて若干のパフォーマンスコストが生じる。非公式テストでは、RX 7800 XTの1440pクオリティモードでFSR 4.1.1 Int8が従来比約8%高速だったとの報告もある。ただし公式のパフォーマンス検証は、独立テストの結果を待ちたい。

RX 7000ユーザーは今日から最新のAdrenalinドライバをインストールすれば、FSR 4.1を利用できる。ドライバの設定画面から有効にするだけで、300本以上のタイトルですぐに画質の違いを確認できるはずだ。

残る問い

RDNA 2(Radeon RX 6000シリーズ)の対応は2027年初頭のまま変わっていない。RX 6900 XTなどで非公式にFSR 4を動かすと移動時にシマー(画面のちらつき)が出る問題が残っており、AMD側の最適化にはまだ時間がかかる。

iGPU向け軽量MLモデルのリリース時期も未定だ。ただし方向性は明確になった。AMDがiGPUを見捨てない理由は単純で、NVIDIAがRTX Sparkでハンドヘルド市場にDLSSのフルスタックを持ち込もうとしている。ROG Ally X、Legion Go 2、MSI Claw A8。RDNA 3.5のiGPUで動くゲーミングハンドヘルドが市場に並ぶなか、FSR 4の恩恵をディスクリートGPUだけに閉じ込めておく選択肢はない。

予定より早くRX 7000対応を出し、iGPU向けの軽量モデル開発を公表したこと。AMDが急いでいるのは確かだ。急ぐ理由も、はっきりしている。

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