Steam Machine価格発表近づく、社内で赤字許容論

メモリ不足で延期が続いてきたValveのSteam Machineが、ついに発表に動こうとしている。Insider Gamingが伝えた内部情報には、これまでの公式姿勢を揺さぶる一文が含まれている。

Steam Machine価格発表近づく、社内で赤字許容論
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メモリ不足で延期が続いてきたValveSteam Machineが、ついに発表に動こうとしている。Insider Gamingが伝えた内部情報には、これまでの公式姿勢を揺さぶる一文が含まれている。


「赤字を受け入れるか」の社内議論

Insider Gamingのマイク・ストロー(Mike Straw)が報じた一節は、これまでValveが対外的に語ってきた姿勢と微妙にズレている。

Steam Machineについて懸念する皆さんに伝えておきたい。Valveはあらゆる詰めの作業に近づいている。社内では価格について、そして短期的に赤字を受け入れるかどうかについて、議論が行ったり来たりしている。結論はまだ出ていないが、発表が近づいているという感触は内部にある。 ―― マイク・ストロー、Insider Gaming

注目すべきは「赤字を受け入れるか」の部分だ。Valveは2025年11月の発表直後から、Steam Machineは「コンソールのような赤字販売モデルは採用しない」と繰り返してきた。ソフトウェアエンジニアのピエール=ルー・グリファイス(Pierre-Loup Griffais)氏も、価格は「同等性能の自作PCと近い水準」になるとインタビューで述べていた。

その姿勢が、ここに来てぐらついている。原因は明白で、メモリとSSD価格高騰がValveの想定を超えて長引いているからだ。

Steam Controllerは99.99ドル、思ったより高い

価格の議論を加速させたのは、4月25日に流出したSteam Controllerのレビュー動画だ。YouTubeチャンネルがエンバーゴ(情報解禁日)を破って先行公開し、すぐに削除されたものの、複数の視聴者がスクリーンショットを取得して 99.99ドル という値段が拡散した。

この99.99ドルという数字は、コミュニティの一部で予想されていた60ドル前後の倍近くだ。Reddit上の反応は分かれている。「払う価値はある」と擁護する声がある一方、「Xbox Eliteコントローラーが壊れるまで待つ」と購入を見送る投稿も多い。Steam Controllerが本体とのバンドルだけでなく単体でも売られる以上、この99.99ドルが心理的な天井として作用する可能性は高い。

そしてこの値付けが意味するもう一つの事実がある。Valveは少なくともコントローラーについては、低価格路線を採らないと決めた。


「PC価格帯」の方針はどこへ

ここで思い出しておきたいのが、2025年11月にLinus Tech TipsのLinus Sebastian氏が伝えたエピソードだ。Linus氏が「(コンソール水準の)500ドルでないのは残念だ」とValveの担当者に伝えたところ、現場は気まずい沈黙に包まれたという。Linus氏自身の最終予測は699ドルで、これはSteam Machineを「同等自作PCの価格帯」に置く戦略と整合する。

ところがストローの今回の報道は、その路線が社内で揺れていることを示唆している。赤字を出してでも値段を抑えるか、それとも当初の「PC価格帯」の方針を貫いてユーザーの財布に痛みを押し付けるか。Valveはどちらを選んでも批判を浴びる位置にいる。

Steam Machineの内部スペックは、AMDのセミカスタムZen 4 CPU(6コア12スレッド)にRDNA 3 GPU(28コンピュートユニット)、16GBのDDR5システムメモリ、8GBのGDDR6 VRAMという構成。ストレージは512GBと2TBの2モデルが計画されている。発表当時の海外メディアの予想では512GBモデルは650~750ドル(約10万3000円~11万9000円)付近だった。

ただ、メモリの異常高騰がこの予想を維持できるかは怪しい。AI需要によるDRAM不足は深刻化しており、PCメインメモリとSSDの価格は2025年末から急騰を続けている。新ハードを発売するValveだけでなく、PlayStation 5を値上げしたソニーや、Steam Deck OLEDを国内で1万5000円値上げしたValve自身も、すでにこの波の影響を受けている。

VRヘッドセットの行方は依然不透明

ストローは、Steam MachineとSteam Frame(VRヘッドセット)が同時出荷されるのか、別々のタイミングになるのかには触れていない。

2025年11月の同時発表時、Valveは3製品を「2026年初頭」に出荷する計画だと公表していた。それが2月のFAQ更新で「2026年上半期目標」に後退し、3月の振り返り記事では「年内」とさらに表現が緩んだ。今回のストローの報道は「発表が近い」という感触を伝えるものだが、3製品が同時に動く保証はない

部品供給の影響を受けにくいSteam Controllerだけ先行リリースし、Steam MachineとSteam Frameは後ろに回す。そういう分割シナリオも、すでに一部の海外メディアが指摘している。Valve自身が「3つすべて年内に出荷する」と明言した以上、極端な遅延は現時点で否定されているが、同時発売のシナリオが崩れる可能性は残されている。


日本での発売はKOMODOが担当

国内での販売はSteam Deckと同じく、KOMODOが担当する。日本での価格と発売日の発表は、Valveがグローバルでアナウンスした後にKOMODOから出される流れになる見込みだ。為替が1ドル159円付近で推移している現状では、99.99ドルのSteam Controllerは単純換算で1万5800円前後となり、本体の予想価格650~750ドルは10万3000円~11万9000円前後となる。

Steam Deckが発売後しばらくして物流コストと為替を理由に値上げされた経緯を思うと、初値が想定以上になる準備はしておいたほうがいい。Valveが赤字許容を選ぶか否かに関わらず、最終的に消費者が支払う額は、海の向こうで決まる議論の結論にかなりの程度依存する。

価格を「行ったり来たり」させる議論の先で、Valveが下す決断は、Steam Machineが何の系譜の製品なのかを規定する。Steam Deckの延長か、家庭用ゲーム機との真っ向勝負か。


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