マスクのTerafab、建設地が正式決定。投資額は発表のたびに変わる

ペンタゴンの15倍、Apple Parkの35倍。その床面積がどれほど異常かを示す比較画像が、1000万回以上閲覧された。

マスクのTerafab、建設地が正式決定。投資額は発表のたびに変わる
Terafab

ペンタゴンの15倍、Apple Parkの35倍。その床面積がどれほど異常かを示す比較画像が、1000万回以上閲覧された。


規模が可視化された瞬間

Giga Texas(1000万平方フィート)、ペンタゴン(650万平方フィート)、Apple Park(282万平方フィート)、Mall of America(560万平方フィート)。4つを足しても2500万平方フィートに届かない。

Terafabと主要建造物の床面積比較
※床面積は平方フィート。ペンタゴンは総床面積(オフィス面積370万平方フィートとは別)

Terafab(テラファブ)の計画床面積は1億平方フィート(約930万㎡)以上。東京ドームに換算すると約200個分になる。

現地時間8月6日、テスラとSpaceXはTerafabの建設地をテキサス州グライムズ郡に正式決定したと発表した。

ヒューストンの北西約1時間、ギガファクトリー・テキサスから約2時間の位置にある。

この発表の直後に、テスラ・SpaceXの動向を追うニック・クルス・パタネ(Nic Cruz Patane)氏がGiga Texas、ペンタゴン、Apple Park、Mall of Americaとの比較画像を投稿した

4つの建物がTerafabの敷地内に余裕で収まるという視覚化は、閲覧数1000万回を超え、規模の異常さを直感的に伝えた。

投資額の軌跡

Terafabの数字は、発表されるたびに変わってきた。

3月の発表時、イーロン・マスクは200億〜250億ドルを投資コストとして提示した。4月にIntelが製造パートナーとして参画を表明し、プロジェクトの輪郭が具体化し始めた。

5月、SpaceXがSEC(米証券取引委員会)に提出したS-1(上場申請書類)で、初期投資額として550億ドル、全フェーズ合計で最大1190億ドルという数字が出た。だが同じ書類の別の箇所には、Terafabは「一般的な枠組み」であり、拘束力のある合意は存在せず、知的財産の配分も未確定で、いずれの当事者も離脱可能だと記されていた。

そして現地時間8月6日の正式発表では、初期フェーズの投資額が168億ドルとされた。550億ドルとの差額380億ドル超について、SpaceXもテスラも公式には説明していない。

Terafab投資額の変遷
2025年末
自前のチップ工場構想に言及
マスク氏が将来のチップ不足を警告
2026年3月
Terafab正式発表
投資額200億〜250億ドル。2nm量産を宣言
2026年4月
Intel製造パートナーとして参画
14Aプロセス技術のライセンスを想定
2026年5月
SpaceX S-1をSECに提出
初期投資550億ドル、全体で最大1190億ドル。
同書類に「拘束力ある合意はない」と明記
2026年8月
住民894人が請願書を提出
12項目の保護条件を郡委員会に要求
2026年8月
建設地をグライムズ郡に決定
初期投資168億ドル、3000人雇用を発表
※投資額はSpaceXおよびテスラの発表・SEC提出書類に基づく

テキサス州知事グレッグ・アボット(Greg Abbott)は同日、SpaceXにテキサス企業基金から3000万ドルの助成金を提供すると発表した。プロジェクトは州のJETI法(テキサス雇用・エネルギー・技術・イノベーション法)の適格事業にも認定された。初期フェーズで3000人の雇用が見込まれ、のちにマスクは「3000人はフェーズ1のみの数字だ」と付け加えている。

住民が突きつけた12の条件

数字が先に来て、説明は後から来た。

現地時間8月5日の郡議会で、SpaceXとTerafabの代表者が初めて住民と直接対面した。それに先立ち、住民団体「Grimes County Citizens for Responsible Development」が894人分の署名を集めた請願書を郡委員会に提出している。請願書には12項目の保護条件が記されていた。郡が負担しない独立した法律顧問の配置、水資源と環境の保護、道路補修の義務、緊急サービスへの資金拠出、開発者が約束を履行しなかった場合の助成金返還条項(クローバック条項)などが含まれる。

SpaceXの代表者はこの場で、Terafabが地元の電気料金を引き上げないこと、地下水を使わず近隣のギボンズ・クリーク貯水池から取水すること、ナバソタ川の水位に影響しないことを約束した。

住民の懸念は、開発そのものへの反対じゃなかった。6月末のタウンホールミーティングでは、反対している住民はいない、問題にしているのは進め方だという声が複数上がっていた。

書類と現実の距離

Terafabの全体像を組み立てようとすると、部品がうまく噛み合わない箇所がいくつかある。

目標はロジック・メモリ・パッケージング・テストを1拠点に統合し、年間1テラワットの計算能力を生産することだという。Intelの14Aプロセス技術をライセンスし、テスラが採用したIntelのファブ立ち上げ経験者ゲイリー・ジアン(Gary Jiang)氏が指揮を執る。2nmクラスの最先端チップを、半導体製造の経験がないテスラとSpaceXが自前で量産するという構想だ。

NVIDIAのジェンスン・フアン(Jensen Huang)CEOは以前から、先端半導体の製造は工場を建てるだけでは成立せず、TSMCが培ってきた工学と技芸の蓄積なしには実現しないと指摘してきた。ASMLのクリストフ・フーケ(Christophe Fouquet)CEOは5月、マスクとTerafabについて直接協議していることを認めた。一方、業界アナリストの一人はリソグラフィのボトルネックに資金を投じるだけでは解決しないと語っている。

S-1に書かれた「一般的な枠組み」という表現と、テキサスの敷地で進み始めた造成工事との間には、まだ距離がある。テスラは現在もサムスンにAIチップの製造を委託しており、165億ドル規模のサムスンとの契約は2033年まで続く。Terafabは今の供給不足を解決するものじゃなく、数年先のボトルネックに備えた長期の賭けだ。

1億平方フィートの床面積を埋めるには、1台数億ドルのASML製EUV露光装置を数十台、さらにエッチング装置、成膜装置、計測装置を大量に調達し、TSMCやサムスンが何十年もかけて磨いてきた歩留まりの技芸をゼロから身につける必要がある。

建設地は決まった。だがチップを量産する技術は、テスラにもSpaceXにもまだない。

関連記事

この記事を共有する