Xbox、中国向け新Game Pass階層を準備か
Xbox Insiderビルドから2つの新コードネーム「Project Saluki」と「Positron」が発見された。中国市場向けGame Pass階層と、ディスクからデジタルへの移行プログラムを示唆している。
Xbox Insiderビルドから2つの新コードネーム「Project Saluki」と「Positron」が発見された。中国市場向けGame Pass階層と、ディスクからデジタルへの移行プログラムを示唆している。
アプリのコードに残っていた2つの名前
Xbox PCアプリの最新ビルドに、これまで存在しなかった2つのコードネームが埋め込まれていた。「Project Saluki」と「Positron」。一方は中国市場、もう一方はディスクからデジタルへの移行を指している可能性がある。
Microsoftはまだ何も発表していない。だが、コード内の説明文がほぼ用途を語ってしまっている。Project Salukiには「Game Pass、Rewards、サブスクリプション階層の中国市場向け拡張」という記述が添えられていた。複数の独立した情報源が、社内ビルドとPCアプリのデータマイニングの両方で同じコードネームを確認している。
2月にXboxのCEOに就任したアシャ・シャルマ(Asha Sharma)氏は、中国市場への拡大を戦略の優先項目に挙げてきた。今回見つかった内部参照は、その言葉が単なる方針表明ではなかったことを示す具体的な痕跡になる。
なぜ中国向けの「専用階層」が必要なのか
中国でXbox Game Passを売るには、グローバル版をそのまま持ち込むわけにはいかない。中国には新作ゲームの個別審査制度があり、認可されないタイトルは販売も配信もできない。Game Passの数百本規模のカタログを、そのまま中国で展開することは制度上ありえない。
中国では認可されたゲームしか流通できないため、Game Passの中国版は「審査を通過したタイトルだけで構成された別カタログ」になる必要がある。価格帯、決済手段、現地パートナーシップも別建てで設計しなければならない。
Microsoftは既にアクティビジョン・ブリザードの中国事業を抱え、NetEaseなどの現地企業と提携している。コンソール本体の販売実績もある。ただし、サブスクリプション形式のサービスを中国で運営するのは別物だ。Salukiが複数の階層と報酬体系を内包する設計になっているという情報は、中国市場向けに段階的な価格帯と、アイテム課金・ゲーム内通貨を組み合わせた現地仕様を示唆している。
中国市場の重要性は、数字で見ると分かりやすい。Newzooの2025年予測では、中国のゲーム市場規模は498億ドル(約7兆8000億円)に達し、米国の496億ドルを上回って世界1位になる見通しだった。中国業界協会の集計でも、2025年の実績は3508億元(約498億ドル)で過去最高を記録している。『黒神話:悟空』のような大型タイトルが続々と中国から世界に出ていく中、Xboxにとって中国は「将来の市場」ではなく「いま取りに行かないと差が開く市場」になっている。
もう1つのコードネーム「Positron」が指す方向
並行して見つかったPositronは、Disc2Digitalという内部識別子と紐づいていた。物理ディスクで持っているゲームを、デジタル所有権に変換する仕組みだと推測されている。
ここで、Xboxの歴史が顔を出す。2013年のXbox Oneお披露目時、Microsoftは「物理ディスクと同時にデジタル所有権も付与する」構想を打ち出した。中古販売や貸し借りに制限がかかる仕組みだったため、ユーザーと小売の双方から強い反発を受け、構想は撤回された。13年後、似た方向の機能が再びコード内に現れたことになる。
ただし状況は当時と異なる。今のXboxユーザーは、すでに大半がデジタル購入を選んでいる。PlayStationの直近データでは、ゲーム売上のデジタル比率は四半期で85%に達し、年間でも78%を記録した。Xboxの数字はおそらくこれより高い。
物理ディスクを持っている人は、その所有権をクラウドゲーミングやXbox Play Anywhereの対象として使えない。ディスクが手元にあっても、別デバイスから即座にアクセスする手段が無い状態が続いている。Positronがその穴を埋める設計なら、既存のディスク所有者にとっては実利的な機能になる。
問題は、ライセンスの整合性をどう保つかだ。ディスクを挿入してデジタル権利を得たあと、そのディスクを別の人に渡せば二重所有が成立してしまう。Microsoftは何らかの方法でディスク側のライセンスを無効化する仕組みを組み込む必要がある。挿入時のみ一時的にデジタル権利を付与する設計か、恒久的な権利移行と引き換えにディスクを使用不可にする設計か。コード内の情報だけでは、どちらに寄せるかは読み取れない。
次世代Xboxの輪郭との接続点
なぜいまDisc2Digitalなのか。次世代機の設計を考えると、答えが見えてくる。
開発コードネーム「Helix」と呼ばれる次世代Xboxは、コンソールとPCの中間に位置するハイブリッド機として開発されているとされる。Microsoftが公表している情報では、次世代Xboxはコンソール向けXboxタイトルとPCゲームの両方を実行でき、将来のDirectXとFSR機能に最適化されたAMD製カスタムSoCを搭載する。開発キットは2027年に開発者へ配布される見込み。
この設計思想からは、光学ドライブ非搭載の方向が読み取れる。ゲーミングPCもラップトップも、ディスクドライブを持たない世代に移行している。PlayStationが現行世代でディスクドライブを外付け化したのと同じ流れだ。
ここで困るのは、これまでディスクで買い集めてきた既存ユーザーになる。次世代機にドライブが無ければ、棚に並んだディスクは新しい本体で動かない。Positronがその橋渡しの役を担うなら、Xboxはユーザーの資産を次世代に持ち越せる導線を用意できる。
残された疑問
ただし、コード内に名前があるという事実だけでは、機能の実装範囲も公開時期も確定しない。Salukiが本当に中国向けの正式サービスとして始動するのか、それとも内部テストで終わるのか。Positronがすべてのディスクタイトルを対象にするのか、特定パブリッシャーのタイトルに限定されるのか。コード内の手がかりは、輪郭は示すが中身までは見せてくれない。
Microsoftが公式に何かを発表するまで、これらは「コード内に存在する」以上の意味を持たない。実装されないコードネームもXboxの歴史には数多くある。読み解ける範囲を超えて結論を急ぐと、後で梯子を外される。
新CEOのシャルマ氏は就任以来、Game Passの価格改定、組織再編、業界ベテランとの対話と、目に見える動きを矢継ぎ早に打ち出してきた。今回の2つのコードネームも、その流れの中で読み解くべき信号と言える。中国市場への進出と、物理メディア所有者の次世代機への取り込み。どちらも、これまでのXboxが踏み込めずにいた領域だ。
13年前に挫折した構想が、Positronという別の名前で戻ってきている。
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