Xboxの真の敵はソニーではなくMicrosoft自身

Xbox新CEOアシャ・シャルマが向かう相手は、PlayStationでもSteamでもない。Windows Centralのジェズ・コーデンは、Microsoft自身こそが最大の敵だと書く。10年以上Xboxを追った記者の苦い結論だ。

Xboxの真の敵はソニーではなくMicrosoft自身
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Xbox新CEOアシャ・シャルマが向かう相手は、PlayStationでもSteamでもない。Windows Centralのジェズ・コーデンは、Microsoft自身こそが最大の敵だと書く。10年以上Xboxを追った記者の苦い結論だ。


「30%の壁」がXboxを内側から壊した

ジェズ・コーデン(Jez Corden)が現地時間5月4日にWindows Centralに掲載した論考は、新CEOアシャ・シャルマ(Asha Sharma)への期待ではなく、彼女が直面する構造的な障害から始まる。Xboxの不振はソニーやValveに敗れた結果ではなく、Microsoftが自らの手で設計した結果だ。そういう論旨である。

中心にあるのは、ゲーム業界では常識外れに高い30%の利益率目標である。2025年10月、Bloombergのジェイソン・シュライアー(Jason Schreier)の取材で、CFOエイミー・フッド(Amy Hood)が2023年秋にXbox部門へ「アカウンタビリティ・マージン」と呼ぶ30%の利益率を課したことが報じられた。ゲーム業界の平均は17〜22%の範囲で、過去のFTC裁判の資料ではXboxの利益率は12%前後にとどまる時期もあった。Microsoftは2025年12月にCNBC経由でこの30%という数字を「正しくない」と否定したが、コーデンの記事は否定を踏まえたうえで「30%というキーワードが今日の話の軸になる」と書き進める。

「数字としての30%」が公式に正しいかどうかではなく、その水準を志向する短期志向が、Xboxの判断を内側から歪めてきた、というのがコーデンの主張だ。

Xboxは10年以上、同じパターンを繰り返している。Microsoftが何かを良くするたびに、自分で仕掛けた落とし穴に自分で落ちる。

文章の温度はそのまま諦観に近い。ただし、的外れな諦観ではない。

ハードウェア収益はもう「自由落下」になっている

論考の通り、Xboxのハードウェア事業はすでに惨状と言ってよい段階にある。Microsoftの公式四半期報告によれば、ハードウェア収益は3四半期連続でマイナスを記録しており、いずれも30%前後の前年同期比減だ。FY26 Q1(2025年7〜9月)が-29%、Q2(10〜12月)が-32%、そして直近のQ3(2026年1〜3月)が-33%。Q3はXbox Series世代における最低水準とも報じられている。

数字だけ見れば「消費者がXboxを欲しがっていない」という解釈になる。ただ、コーデンが指摘する真相はもう少し辛い。店頭にXboxがないのだ。コーデンによれば、Microsoftは利益率重視の経営判断のもとで、需要に見合うだけのコンソール在庫を発注してこなかった。ハードウェアそのものが直接的な高利益率を生まない以上、売る数を絞るほうが「30%」の見かけに近づく。そういう逆説的な構造が起きていたという報告だ。

そして、その判断がGTA 6の年にXbox Series X|Sの在庫枯渇という致命的な結果を呼び込みつつある、と彼は書く。次世代向けのDRAM/NANDメモリは、年単位で計画を立てるソニーや競合企業がすでに買い占めた。さらにAIデータセンター需要が市場を圧迫し続けている。今からCEOが「在庫を倍にせよ」と号令しても、調達できる部材がない。

目先の小銭を惜しむ今日と、慌てふためく明日。サティア・ナデラ体制下のMicrosoftの典型的な行動パターンが、いまXbox、Windows、その先まで飛び火している。

この一文は、コーデンの記事のなかでもっとも厳しい。

次世代機Project Helixも、その重力から逃げられない

Xboxの次世代機Project Helixは、3月のGDC 2026で正式に存在が語られた。AMDのカスタムSoCを採用し、Xboxのコンソールゲームに加えてPCゲームも動かすハイブリッド機として位置づけられている。開発キットは2027年から配布予定とされ、発売時期は未定のままだ。

シャルマはGame Fileのスティーブン・トティロ(Stephen Totilo)の取材に対し、「メモリコストは価格に影響し、入手性にも影響する」と明言した。発売タイミングを切れない理由として「世界はかなり動的だ」とも答えている。アナリストの予測では、Project Helixの価格帯は900〜1,500ドル(約14万1,000〜23万5,000円)に達する可能性があり、もはや伝統的なコンソールというよりPCに近い価格帯だ。

コーデンは、前任体制がバックワードコンパチビリティ(過去のXbox One/Xbox Series X|Sタイトルを動かす互換機能)の維持を社内で強く守った経緯を「奇跡」と表現している。社内資料には、互換性を切り捨てて「ハードウェアからソフトウェア中心へ移行する」案まで含まれていたという。

切り捨てる立場の論理は、コスト削減とマージン改善である。ただ、それを実行していれば、Xboxというブランドそのものを支えてきた長期の信頼が崩れていた。次世代機がいま「コンソールとしての形」を保てているのは、内部での抵抗が踏みとどまった結果だ。コーデンはそう解釈している。

Project Helixが存在することそのものが、ある種の奇跡だ。

この一文には記者の安堵と疲労が同居している。

値上げ、撤回、そして失われた信頼

ハードウェアと並ぶもう一つの問題が、Xbox Game Pass Ultimateの価格政策だった。Microsoftは2025年10月、Game Pass Ultimateを月額19.99ドルから29.99ドルへ約50%値上げした。Call of Dutyシリーズの新作を発売日から提供するための原資を確保する目的だった。

結果は、サブスクライバーの大量解約だった。

そして2026年4月21日、シャルマ体制下で月額22.99ドルへの値下げが実行された。同時に、Call of Dutyの新作はリリース1年後にGame Pass入りする方針へ変更された。発売日からCall of Dutyを遊びたかったプレイヤーには痛手だが、月額30ドルが重すぎたユーザーには救済となる。コーデンは「シャルマはやれることをやっている。低い枝の果実を取る判断は的確だ」と書く。

ただし、これらは応急処置の域を出ない。

Microsoftの直近の四半期決算報告では、Game Passを含むXboxコンテンツ&サービス収益も5%減少した。ナデラは投資家向けの発言で「Xbox Game Passの最近の価格変更を反映」して、次四半期も低い10%台のマイナスを予想していると述べている。値下げの効果が出るには時間がかかり、その間も収益は減り続ける構造だ。

シャルマ自身も決算後にX上で、「ビジネスとマージンの拡大では前進したが、プレイヤーと収益の成長は私たちの野心にはまだ達していない」と認めている。就任2か月のCEOがここまで率直に書くのは異例だ。

「Microsoft Gaming」という名前すら、もうない

シャルマの動きで象徴的だったのは、「Microsoft Gaming」という呼称の廃止だ。4月、シャルマとCCOマット・ブーティ(Matt Booty)はXbox Wireへの長文投稿で、組織の名称を「Xbox」へ統合・回帰させると宣言した。

その背景には、ハードウェアからサービスまでを縦に統合するフルスタック体制の必要性がある、と彼女は書いている。「Microsoft Gaming」は構造を表す内向きの言葉に過ぎず、プレイヤーから見たアイデンティティは「Xbox」のはずだ──そういう整理だ。

コーデンはこの動きをポジティブに見ているが、同時に強い留保も付けている。新生Xboxの旗印、新CEOの就任会見、価格の見直し、すべて評価できる。だが、Microsoftの上層部が再び短期志向に傾いた瞬間、これらの取り組みは止まる、と。

アシャは不可能な仕事に挑んでいる。勢いを得たValveと、優位を保つPlayStation、GoogleとAppleの寡占。それに加えて、Microsoft自身の敗北主義的な短期志向にも勝たなければならない。

「敵は外ではなく内にいる」。コーデンの論旨は、ここで一本にまとまる。

25周年のXboxに残された問い

Xboxは2026年秋に25周年を迎える。シャルマがCEOに就いてからまだ3か月足らず、フィル・スペンサー(Phil Spencer)は夏までアドバイザーとして残る。社内でも社外でも、節目としては悪くないタイミングだ。

ただ、コーデンの結論は祝祭からは遠い。Xboxの問題はソニーでもValveでも、Apple/Googleの寡占でもない。Microsoft自身が、自らに課した非現実的な利益率目標と短期志向によって、自分のゲーム部門を内側から痩せさせてきた──。

ここで一つ、慎重に書きたい点がある。Microsoftは公式に「30%」という具体的な数字目標を否定している。Bloombergの取材を含む複数の報道は、社内の証言としてその数字を伝え続けているが、それでも会社としての公式見解は「正しくない」のままだ。コーデンの論考は、その否定があってもなお、行動の結果として現れた短期志向は数字以上に明白だ、という立場で書かれている。

ゲームは年単位で作られる。プラットフォームの信頼も、年単位で積み上がり、年単位で崩れる。四半期ごとの数字に最適化された判断が、5年後のXboxを支えられるのか。コーデンの記事を素直に読むなら、答えは「支えられない」だ。

シャルマがこの引力圏の外に飛び出せるとしたら、それは「コンソール文化への原点回帰」という社内向けマニフェストを、ナデラとフッドに長期投資の言葉で翻訳できたときだろう。決算スライドの上で見栄えのいい数字ではなく、5年先のXboxの姿に対して資本を張ること。それを上に説得できるかが、最後の関門になる。

25年前、Microsoftはリビングルームの覇権を懸けて、社内の本流に逆らって緑のロゴを灯した。同じMicrosoftが今度は、その火を四半期決算の風で消そうとしている。シャルマの長期計画にナデラとフッドが付き合う覚悟を決めるまで、Xboxはまだ森を抜けていない。


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