Apple、3月期売上1111億ドルで過去最高、iPhone 17が押し上げる
Appleが2026会計年度第2四半期決算を発表した。売上1111億ドル、純利益295億ドル、EPS2.01ドル。すべてが3月期として過去最高。iPhone 17の需要が想定を超えた。
過去最高の3月期決算という事実
Appleが日本時間5月1日朝、2026会計年度第2四半期(2026年3月28日締め)の決算を発表した。売上1111億8000万ドル(前年同期比17%増)、純利益295億7800万ドル、希薄化後EPSは2.01ドル(前年比22%増)。会社全体の売上、iPhone売上、EPSの3つで3月期記録を更新し、サービス部門売上は四半期として過去最高を更新した。
事前のウォール街予想はEPS1.95ドル、売上1096億6000万ドル。すべての主要セグメントで予想を上回った。決算後、 AAPL株は時間外取引で一時5%上昇 している。
「Appleにとって最高の3月期決算をご報告できることを誇りに思う」(ティム・クック)
クックCEOは声明でこう述べた。同氏が9月1日にエグゼクティブ・チェアマン(取締役会長)へ退き、ハードウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントのジョン・ターナスへCEO職を譲ることはすでに発表済みだ。今回の決算は、クック体制下での実質的な最後の本格的な業績発表となる。
| 項目 | 実績 | 予想 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 総売上 | $111.18B | $109.66B | 超過 |
| EPS | $2.01 | $1.95 | 超過 |
| サービス | $30.98B | $30.39B | 超過 |
| Mac | $8.40B | $8.02B | 超過 |
| iPad | $6.91B | $6.66B | 超過 |
| Wearables | $7.90B | $7.70B | 超過 |
| 粗利率 | 49.3% | 48.4% | 超過 |
数字だけを見れば文句のつけようがない。だがこの決算には、引き継がれる側のターナスにとっての宿題と、市場が注視する伏線がいくつも埋まっている。
iPhone 17が引っ張った四半期
iPhoneの売上は569億9400万ドル。前年同期の468億4100万ドルから22%伸びた。3月期としての過去最高を更新している。
クックは「iPhone 17シリーズへの並外れた需要が3月期iPhone売上記録を牽引した」と説明した。CFOのケバン・パレクは決算電話会議で「iPhone 17ファミリーは当社史上最も人気のあるラインナップだ。当四半期にシェアを獲得したと考えている」と踏み込んでいる。
ただし、iPhone単体の売上はメディアによって評価が割れた。CNBCはLSEG基準で予想を下回り「ここ3四半期で2回目の予想未達」と報じる一方、wccftechやAppleInsiderなどは予想(56億5000万ドル前後)を上回ったと評価している。市場の事前期待値が上方修正されすぎたか、実需に微妙な陰りがあったかで解釈が分かれる数字だ。
地域別では中華圏(Greater China)が204億9700万ドルと前年同期比28%の伸びを示した。前年の落ち込みからの反発として、市場は素直に好感している。日本も84億ドルと過去最高水準を維持した。
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米州$45.09B / 40.6%
欧州$28.06B / 25.2%
中華圏$20.50B / 18.4%
日本$8.40B / 7.6%
その他アジア太平洋$9.14B / 8.2%
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サービス部門が過去最高を更新
サービス部門は309億7600万ドル。前年同期の266億4500万ドルから16.3%増えた。これも四半期として全期間の過去最高だ。
App Store、iCloud、Apple Music、Apple TV+、AppleCare、広告などを含むこの部門は、Apple全体の粗利率を底上げする役割を担っている。今四半期の全社粗利率は49.3%まで上昇した。前年同期は47.1%、前四半期は48.2%だった。製品単体での粗利率は上がりにくいなか、サービスの構成比が高まるほど企業全体の収益性が改善する仕組みが、いまもAppleの中核に効いている。
サービス事業はクックCEOが15年の在任で最も注力した領域とされ、いまや営業利益の半分近くをサービスが生み出すまでに成長している。
ただ、これだけ依存度が上がると、次の問いも自然に立ち上がる。サービスはこの2桁成長を維持できるのか。Tim Cook以後のAppleが直面する最大の経営課題のひとつになる。
1000億ドル自社株買いと増配
取締役会は新たに最大1000億ドルの自社株買いプログラムを承認した。配当も四半期あたり0.27ドルへ4%引き上げ、5月14日に5月11日時点の株主へ支払われる。
1000億ドル規模の自社株買いは、もはやAppleの恒例行事のような響きすらある。ただ、これだけのキャッシュを株主還元に振り向けられる企業は世界でも数えるほどしかない。営業キャッシュフローは四半期で280億ドル超。手元には現金・有価証券で686億ドル相当を抱えている。
問われているのは「使い方」だ。マグニフィセント・セブン(米国大型テック7社)のうち、Alphabet・Amazon・Meta・MicrosoftはAIインフラに桁違いの設備投資を進めている。Metaは2026年の設備投資計画を最大1450億ドルへ引き上げ、決算後に株価が8.55%下げたが、Alphabetはクラウド受注残4600億ドルを理由に逆に9.96%上昇した。市場は「AI能力への投資」を評価軸に据え始めている。
そのなかで、Appleの研究開発費は今四半期114億1900万ドル。前年同期の85億5000万ドルから33%伸びた。売上の伸びを大きく上回るペースだ。クックは決算電話会議で「AIは私たちにとって本当に重要な投資領域だ。通常の製品ロードマップへの投資に上乗せして、段階的に投資を増やしていく」と語った。
クック最終四半期の意味
ここで一度、Appleが置かれている状況を整理しておきたい。
4月20日、Appleはティム・クックが9月1日付で退任し、ジョン・ターナスが次期CEOに就任すると発表した。クックは退任後もエグゼクティブ・チェアマンとして取締役会に残り、世界各国の政策立案者との関係構築を担当する。15年間Appleの非執行会長を務めてきたアーサー D. レビンソンは、同日付で筆頭独立取締役へ退く。
ターナスは2001年にApple入社、25年のキャリアの大半をハードウェアエンジニアリングに費やしてきた人物だ。直近では今春に発売されたMacBook Neo(A18 Pro搭載・99,800円から)の開発を主導している。低価格ノートパソコン市場でのAppleの本格的な巻き返しを象徴する製品で、ターナスの手腕を市場に印象付ける1台になった。
「ターナスはエンジニアの思考、イノベーターの精神、そして誠実さと敬意を持って人々を導く心を兼ね備えている」(クック)
CEO交代の発表時、AAPL株は 2.52%下落 した。クックの15年は時価総額を約3500億ドルから4兆ドル規模へ押し上げた歴史だ。市場が交代を「変化への期待」より「不確実性」として受け止めた瞬間がそこにあった。
今回の決算は、その不安に対するクックからの最後の答え合わせでもある。
ターナスへの引き継ぎ事項
数字は強い。しかしこの好決算の裏側には、ターナス時代のApple運営に直結する論点がいくつも積み重なっている。
ひとつ目は、研究開発費の急増。前年比33%という伸びは、過去のAppleでは滅多に見ない水準だ。AI投資を本格化させる以上、当面は粗利率の向上ペースが鈍化する可能性がある。市場がそれを許容するかどうかは、ターナスがどんな製品とサービスでリターンを示せるかにかかる。
ふたつ目は、サービスの2桁成長維持。今四半期16%増という伸びはAppleの規模では立派な数字だが、ベース額が大きくなるほど維持は難しくなる。広告とApp Storeの規制リスクも依然として横たわる。
みっつ目は、iPhone依存からの脱却の見通し。今四半期、Appleの製品売上のうちiPhoneは71%を占めている。Vision Pro、AirPods、Apple Watchといった新カテゴリの貢献はまだ限定的だ。MacBook Neoが示したような「価格帯を広げる」戦略がノートPC以外にも展開できるか、ターナスのハードウェア出身という経歴が試される領域でもある。
クックは決算電話会議でターナスを紹介し、ターナス自身も登壇した。引き継ぎは演出ではなく実務として進んでいる。
数字の力で押し切れた最後の四半期。次回の発表では、舞台の中央に立っているのはおそらくターナスだ。新しいAppleがどんな顔をしているのか、市場が確かめる時間は間近に迫っている。
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