Windows 11の4月更新、複数バックアップソフトを一斉に止める

Windows 11の4月更新、複数バックアップソフトを一斉に止める

4月のセキュリティ更新KB5083769を当てたWindows 11で、Acronis・Macrium・NinjaOne・UrBackupといった主要バックアップソフトが軒並みVSSタイムアウトで失敗している。災害時の最後の砦が、セキュリティを守るはずの更新で崩されている。


バックアップが、突然動かなくなった

Windows 11 24H225H2を使っている多くのユーザーが、4月のセキュリティ更新を当てた直後から、いつものバックアップが完了しなくなる事態に直面している。複数のバックアップベンダーが同時に同じ症状を抱えるケースは、ここ数年でも例が少ない。

問題のセキュリティ更新は、Microsoftが2026年4月14日に配信した KB5083769(OSビルド26200.8246と26100.8246)。この更新を当てたPCでバックアップソフトを走らせると、ボリュームシャドウコピーサービス(Volume Shadow Copy Service、以下VSS)がスナップショット作成中にタイムアウトし、ジョブが失敗する。

最初に異変を察知したのは、長年Windowsの更新を観察してきたMicrosoft MVPのスーザン・ブラッドリー(Susan Bradley)だ。AskWoodyで運営する MS-DEFCON という独自のパッチ警戒度を、4月29日付で「3」(=様子を見る、急がない)に引き上げた。フォーラムには複数のIT管理者から同じ症状の報告が並んでおり、その共通点を整理した結果が今回の警告につながっている。

災害復旧の準備をしているはずの組織で、バックアップだけが完了せず止まる。気づくのは、いざ復元しようとした瞬間だ。これが今回の問題の本質だ。

影響を受けたバックアップソフトの広さが異常

今回の障害が他のVSS障害と違うのは、特定の製品に限定されない点だ。

報告されている影響範囲を整理すると、Acronis Cyber Protect Cloud、Macrium Reflect、NinjaOne Backup、そしてオープンソースのUrBackup Serverまで含まれる。さらに日本語のMicrosoft Q&Aには、Hasleo Backup SuiteやMiniTool ShadowMakerでも vssadmin list writers が応答しなくなる事例が報告されている。

つまり、商用・無料・オープンソースを問わず、VSSを介してスナップショットを作るあらゆる仕組みが影響を受けている。

Acronisは公式サポート文書を出して、こう書いた。

このアップデートはMicrosoft VSS(ボリュームシャドウコピーサービス)の動作に対し、システム全体に及ぶ問題を引き起こす可能性がある。場合によっては、当該マシンがクラウドコンソールとの接続を失い、オフラインとして表示されることもある。

エラーメッセージは判で押したように同じだ。「The backup has failed because Microsoft VSS has timed out during the snapshot creation」(スナップショット作成中にMicrosoft VSSがタイムアウトしたためバックアップに失敗した)。

VSSという「縁の下の力持ち」が壊れた意味

VSSは2003年のWindows Server 2003で導入された仕組みで、稼働中のシステムを止めずに整合性のあるスナップショットを作るための基盤だ。SQL ServerやExchangeのような業務アプリ、Windows Server Backup、System Center Data Protection Manager、そしてシステムの復元(System Restore)まで、すべてVSSの上に乗っている。

サードパーティのバックアップソフトが揃って動かなくなったということは、VSSの土台そのものが揺らいでいるということを意味する。実際、ユーザーフォーラムでは「vssadmin list writers を叩いてもプロセスがハングし、本来表示されるはずの7つほどのライターが何も返ってこない」という症状が複数報告されている。これはCOM+カタログが部分的に壊れた状態の典型的な症状だ。


Microsoftの「Known Issue」一覧に、この問題は載っていない

ここが今回の話のいちばん引っかかる部分だ。

Microsoftが公開しているKB5083769の公式ページには、4月23日時点で 既知の不具合(Known Issue) が2つ掲載されている。「BitLockerグループポリシー設定によっては回復キー入力が必要になる場合がある」と「リモートデスクトップ関連の警告が正常に表示されない場合がある」だ。

VSSとバックアップの話は、ここに書かれていない。

ユーザー側の認識としては、Acronisが先に公式サポートを出し、ブラッドリー氏がDEFCONレベルを上げ、英語圏の技術メディアが追いかけ、日本語の報道が続く、という順序で広まった。Microsoft自身からのアナウンスは、4月30日時点で確認できる範囲では出ていない。

要点を整理すると、バックアップソフト側からの報告と独立観察者の警告が先行し、Microsoftの公式既知不具合一覧にはまだ載っていない、という状態だ。
KB5083769関連で報告されている不具合と、Microsoft公式既知不具合一覧の認知ギャップ
不具合の内容 現場で報告 Microsoft
公式に掲載
VSSタイムアウトで
バックアップが失敗
×
BITSハングで
転送・OAB取得が止まる
×
AutoCAD等の
業務ソフトのフリーズ
×
BitLocker回復画面に
飛ばされる症状
リモートデスクトップ
警告表示の不具合
※ 現場の報告はAcronis公式サポート、AskWoody、Microsoft Q&A等で確認。Microsoft公式の掲載状況は2026年4月23日時点のKB5083769サポートページ記載のKnown Issueに基づく

単一の不具合ではない。KB5083769は複数の問題を同時に抱えている

VSS問題は氷山の一角に見える。同じKB5083769を起点として、ほかにも複数の不具合報告が並走している。

Microsoft Q&Aには BITS(Background Intelligent Transfer Service) がアイドル後にハングし、Outlookアドレス帳のダウンロードが止まる事例が投稿されている。AutoCAD系の業務ソフトがフリーズするという別系統の報告も上がっている。さらにはBitLocker回復画面に飛ばされる症状(これだけは公式に既知の不具合として認められている)。

これだけ複数のWindows基盤コンポーネントが、ひとつの累積更新を起点に同時に揺らいでいる状況は、単発のリグレッションというより、より 深い層での変更 が周辺に波及していると見るほうが自然だ。

ユーザーの選択肢は「セキュリティ」か「バックアップ」か

回避策はシンプルだが、シンプルすぎる。

設定 > Windows Update > 更新の履歴 > 関連設定 > 更新プログラムをアンインストールする、と進んで「Microsoft Windows用セキュリティ更新プログラム(KB5083769)」を消し、Windows Updateを一時停止して再起動する。これでVSSは復旧するという報告が大半だ。

ただしKB5083769はセキュリティ更新であり、4月のPatch Tuesdayで167件の脆弱性に対処したものに含まれる。アンインストールはそれらの修正を巻き戻す行為でもある。バックアップが動く環境を取り戻すために、最新の脆弱性修正 を捨てる、というトレードオフを個人と組織が自分で判断するしかない。

セキュリティ更新の適用と、バックアップ機能の維持。本来は両立して当然のはずの2つが、ユーザーの判断にゆだねられている。これが今回の状況の核心だ。

「世界にWindowsを配るプロセス」そのものへの疑問

ブラッドリー氏は4月20日の自ブログで、4月の更新を「dribble time(チョロチョロと出てくる時間帯)」と表現した。Secure Boot証明書の段階的展開を含め、Microsoftの更新の不透明さに対する慣れた皮肉だ。

しかし今回はもう一段先の問題がある。

3月にはプレビュー更新KB5079391がインストールエラー0x80073712で配信停止になり、緊急の帯域外更新KB5086672で差し替えられた。4月のKB5083769はその直後の累積更新だ。テスト期間がどれほど取られていたのかはMicrosoftにしか分からないが、結果として現場では、バックアップ・BITS・BitLockerの3系統が同時に火を吹いている。

2026年3〜4月 Windows 11更新サイクルの混乱
2026年3月26日 プレビュー更新 KB5079391 配信 Windows 11 24H2/25H2向けの3月オプション更新として配信。直後にインストールエラー0x80073712が多発し、配信が一時停止される
2026年3月31日 帯域外更新 KB5086672 で差し替え Microsoftが緊急のOOB(Out-of-Band)更新を配信し、KB5079391のインストール問題を修正。3月のプレビュー機能を再パッケージ化
2026年4月14日 セキュリティ更新 KB5083769 配信 4月Patch Tuesdayで配信。167件の脆弱性に対処。OSビルドは26200.8246(25H2)と26100.8246(24H2)に進む
2026年4月14日 BitLocker回復問題が公式に既知不具合化 推奨外のグループポリシー設定でBitLocker回復キー入力を求められる症状。配信日にKnown Issueとして掲載
2026年4月23日 リモートデスクトップ警告問題が追加掲載 「Remote Desktop関連の警告が正常に表示されない場合がある」症状を新たにKnown Issueに追加
2026年4月29日 スーザン・ブラッドリー氏 MS-DEFCON 3に引き上げ AskWoodyの独自警戒度を「3=様子を見る、急がない」へ引き上げ。複数ベンダーのバックアップソフトでVSSタイムアウト問題が発生していると警告
2026年4月30日 バックアップ障害が国際的に報道 Acronis、Macrium、NinjaOne、UrBackupでVSSタイムアウトによりバックアップが失敗する事象が広く認知される。Microsoft公式の既知不具合一覧には未掲載のまま
※ 各日付はMicrosoftサポート公式ページ(KB5083769、KB5086672)、AskWoody、各ベンダー公式サポート文書に基づく

Windows 10のサポートが2025年10月に終わり、Windows 11への強制移行が進んだ直後の春。バックアップソフトを売る側のMacrium・Acronisにとっても、買って使う側のIT部門にとっても、いちばん信頼が必要なタイミングで、いちばん信頼を裏切る形になった。

いま、できること

短期的には、ブラッドリー氏のMS-DEFCONレベルや、自社で使っているバックアップベンダーの公式アナウンスを確認するのが確実だ。Acronisはサポートページの更新を続けると明言している。

中期的には、バックアップソフトを単一のVSSパスだけに依存させない設計を検討する価値がある。Macrium Reflectのユーザーが共有している回避策の中には、COM+カタログをCBSから再構築するスクリプトもあるが、これは応急処置にすぎない。

長期的には、もっと根の深い問いが残る。Windowsという基盤の更新サイクルと、そこに乗るサードパーティ製品の動作保証は、誰がどこまで責任を持つのか。VSSという2003年生まれのインフラが、2026年に「Microsoftの公式Known Issueに載らない不具合」を起こしている事実は、その問いを避けて通らせない。

セキュリティのために配られた更新が、ユーザーのデータを守る最後の仕組みを止めた。そのねじれを見過ごしたまま、5月のPatch Tuesdayを迎えるわけにはいかない。


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