岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
カリフォルニア州、ストリーミング広告の音量規制を7月1日施行。イリノイ州も追随

テクノロジー

カリフォルニア州、ストリーミング広告の音量規制を7月1日施行。イリノイ州も追随

深夜、子どもを寝かしつけた直後にNetflixの広告が大音量で鳴る。カリフォルニア州のトーマス・アンバーグ(Thomas Umberg)州上院議員がこの法案を提出したきっかけは、スタッフの赤ん坊がストリーミング広告の音で起こされたことだった。2026年7月1日、その怒りが法律になる。 テレビでは16年前に解決した問題 カリフォルニア州法SB 576は、ストリーミングサービスに対し、広告の音量を視聴中のコンテンツと同じ平均ラウドネスに揃えることを義務づける。ギャビン・ニューサム(Gavin Newsom)知事が2025年10月6日に署名し、2026年7月1日に施行される。 テレビ放送では2010年にCALM Act(Commercial Advertisement Loudness Mitigation Act)が成立し、2012年から地上波・ケーブル・衛星放送のCMの音量が番組と同じ平均水準に揃えられている。ところがストリーミングサービスはこの連邦法の適用外だった。NetflixもAmazon Prime Videoも、法律上は広告を好きなだけ大きな音で流せる状態が続いていた。

PS6の部品原価が3ヶ月で200ドル上昇。960ドルに到達

ゲーム

PS6の部品原価が3ヶ月で200ドル上昇。960ドルに到達

3月末に760ドルだったPS6の部品原価が、6月下旬時点で960ドルまで膨れ上がった。1000ドルまであと40ドル。699ドルで出せるかもしれないという3ヶ月前の議論は、もう成立しない。 760ドルから960ドルへ リーカーのKeplerL2氏が現地時間6月27日、NeoGAFのスレッドで投稿した。3月に自身が示したPS6のBOM(部品原価)見積もりについて問われ、その数字から約200ドル上がったと回答している。 3月時点のBOM見積もりは約760ドルで、ソニーが妥当な補助金を負担すれば699ドルでの発売も不可能ではないとKeplerL2氏は述べていた。あれから3ヶ月。状況は一変した。 200ドルの増加は、ほぼ全てメモリとストレージに起因する。PS6には30GBのGDDR7と1TBのSSDが搭載されるとみられており、この2つの部材が今、急激に値上がりしている。 メモリ危機は構造的に終わらない 同じ週に、この上昇が一時的ではないことを裏付ける材料がいくつも揃った。 6月25日、マイクロンが決算で16件の長期供給契約を公表した。データセンターと家電向けは2026年から20

孫正義氏が宇宙データセンターを否定する理由。全員が自分の財布の話をしている

AI

孫正義氏が宇宙データセンターを否定する理由。全員が自分の財布の話をしている

AIデータセンターの運用コストに占める電力の割合は約7%。宇宙で電気代を浮かせても、残り93%のチップや保守費が消えるわけではない。ソフトバンクの孫正義氏が株主総会で示した数字は、SpaceXの宇宙データセンター構想への反論であると同時に、自社が地上に賭けた14兆円を守るための論理でもある。 株主総会で出た「7%」という数字 6月23日、ソフトバンクの定時株主総会で、株主からSpaceXの宇宙データセンター構想への対応を問われた孫正義氏は、参入を明確に否定した。 宇宙にデータセンターを置く最大の売り文句は、太陽光発電による電力コストの削減だ。だが孫氏の指摘はその前提を崩す。AIデータセンターの運用コスト全体で見れば、電力が占めるのは約7%。大半はGPUをはじめとする半導体チップとその関連費用だ。宇宙に持っていったところで、チップの値段は変わらない。むしろ打ち上げ費用、通信遅延、軌道上での保守という新たなコストが積み上がる。 「宇宙での成果は十数年かかる。AIの戦いはいま目の前の十数年で勝利者が決まる」。孫氏はマスク氏を「大変な改革者」と評価したうえで、時間軸の違いを強調した。

AIがシリコンバレーから奪っているのは雇用ではなく睡眠だった

AI

AIがシリコンバレーから奪っているのは雇用ではなく睡眠だった

AIの不安はもう開発者だけの話ではない。起業家、CEO、非技術職、投資家。シリコンバレーの全層が、仕事から離れられなくなっている。 出力100倍、労働時間も倍 マット・バン・ホーン(Matt Van Horn)氏は、もうノートPCの電源を切らない。4人の子を持つ連続起業家で、Lyftの前身Zimrideを共同創業し、スマートオーブンのJuneを設立・売却した経歴を持つ。現在はClaude Codeで常時6つ以上のAIエージェントを稼働させ、新たな会社を立ち上げている。出力はAI導入前の100倍になったと本人は語るが、同時にこうも認めている。かつてないほど働いている。 エージェントが仕事を代行してくれるはずだった。だが現実には、AIの出力を監視し、判断し、指示し直す作業が途切れなく発生する。人の手が離れた瞬間にエージェントは止まる。止まっている間に競合は進む。だからノートPCを閉じられない。 バン・ホーン氏だけの話ではない。音声AI企業Wispr AIのCEO、タナイ・コタリ(Tanay Kothari)氏は毎日16時間以上働き、5月には3週間連続でオフィスに泊まり込んだ。スタ

トランプ政権のAI規制を業界が懸念 政策変更と献金の関係を検証

AI

トランプ政権のAI規制を業界が懸念 政策変更と献金の関係を検証

シリコンバレーの億万長者たちは、バイデン政権のAI安全政策が米国のイノベーションを潰すと警告し、トランプ陣営に巨額を献金した。AIを自由に伸ばす、規制はしない。就任直後のトランプ大統領はその期待通りに動き、州レベルのAI規制を封じることに注力した。 2026年6月、その約束は跡形もない。 「バイデン式の規制が恋しい」 6月に入り、ホワイトハウスはAnthropicとOpenAIに対して立て続けに介入した。Anthropicの最上位モデルMythos 5とFable 5には輸出管理指令が出た。外国籍者へのアクセスを禁じる内容で、Anthropicは国籍の即時判別ができないため全ユーザーを遮断した。OpenAIにはGPT-5.6のリリースを政府が承認した約20社に限定するよう要請した。いずれもサイバーセキュリティ上の懸念が理由とされるが、具体的な基準は示されていない。 6月26日、ラトニック(Howard Lutnick)商務長官がAnthropicに書簡を送り、Mythos 5については100社超への再配布を許可した。ただしFable 5の制限解除には触れていない。同じ日にOp

GTA6のパッケージ版にディスクはない。今後の予定もない

ゲーム業界

GTA6のパッケージ版にディスクはない。今後の予定もない

ロックスター・ゲームスが6月25日に予約受付を開始したGTA6。日本価格は通常版9,800円、アルティメット・エディション1万2,280円。だが価格と同時に、もうひとつの事実が明らかになった。パッケージ版を買っても、箱の中にはダウンロードコードが1枚入っているだけで、ディスクは入っていない。 箱を開けたらコードが一枚 GTA6には通常版とアルティメット・エディションの2種類がある。いずれもPS5とXbox Series X|S向けに11月19日発売で、プリロードは1週間前の11月12日から可能になる。パッケージ版もこの日に店頭に並ぶが、中身はダウンロードコードだけで、ディスクはない。 テイクツー・インタラクティブの公式説明はこうなっている。パッケージ版にはダウンロードコードが封入されており、11月12日からプリロードに使える。デジタル版と同じタイミングでダウンロードを始められる。違いは、コードが箱に入っているかどうかだけだ。 これだけなら「ディスクは後から出るのでは」と思える。実際、そういう期待が広がった。 サポートメールが生んだ誤解と、その否定 予約開始の翌日、ロック

メモリ価格、ジェフリーズがQ3に最大50%上昇を予測

メモリ価格

メモリ価格、ジェフリーズがQ3に最大50%上昇を予測

2026年6月最終週、メモリ市場の全員が同じ結論に辿り着いた。投資銀行が予測を出し、メーカーが5年契約を結び、PCメーカーが「ニューノーマル」と公言し、Appleが制裁対象の中国企業に調達を打診した。それぞれ別の立場から、同じことを言っている。2025年以前の価格には戻らない。 ジェフリーズの数字と、その周囲 米投資銀行ジェフリーズ(Jefferies)のエクイティ・リサーチ部門が6月27日に公表した予測は、2026年後半のメモリ価格について最も強気な数字を出した。2026年第3四半期に前四半期比40〜50%、第4四半期にさらに30〜40%の上昇。2027年も前年比で40〜45%上がり、意味のある価格下落は2028年以降、新規生産能力が15〜20%増加するまで来ないという見立てだ。 この予測が出た直後、別の投資銀行Aletheia Capitalの数字と並べて読まれた。Aletheia側はサーバーDRAMのASP(平均販売価格)が第3四半期に30%上昇、第4四半期に10〜15%上昇と、ジェフリーズより穏やかな見通しを出している。業界コンセンサスは第3四半期20%、第4四半期30

Claudeに何が起きているのか。6月の障害記録を読む

AI

Claudeに何が起きているのか。6月の障害記録を読む

「最近Claudeがおかしい」。そう感じているなら、確認すべき事実がある。6月に入ってからAnthropicのインフラでは連日のように障害が発生しており、公式が認めたものだけで20件を超える。そしてステータスページの「Resolved(解決済み)」は、エラー率の回復を意味するだけで、応答品質の回復を保証するものではない。 6月12日を境に何が変わったか 6月12日午後5時21分(米東部時間)、米商務省がAnthropicに輸出規制指令を出した。Fable 5とMythos 5への外国籍ユーザーのアクセスを即時停止せよ、という内容だった。 Anthropicは国籍ベースのアクセス制御をリアルタイムで実行する仕組みを持っていなかった。部分的な対応では規制違反のリスクがあるため、全ユーザーに対して両モデルを無効化した。日本のユーザーも、米国のユーザーも、同じタイミングで同じ措置を受けた。 Fable 5は発表時点でPro、Max、Team、Enterpriseの全プランに追加料金なしで含まれていた。リリースからわずか3日で停止され、Anthropic自身がFable 5の代替として

Steam Machine、出荷前から予約権がeBayで3倍の値に

ゲーミングPC

Steam Machine、出荷前から予約権がeBayで3倍の値に

6月29日から順次届く購入招待メールを待つまでもなく、eBayではすでに売買が成立している。Steam Machineの予約枠に、定価の3倍近い値がついている。Valveが転売対策として導入した抽選制は、予約権そのものの転売という抜け道を塞げなかった。 出荷ゼロの段階で成立した2800ドル Steam Machineの予約確認メールが届き始めたのは6月26日。Valveは購入招待の送付を6月29日からと告知していたが、確認メールが届いた時点でeBayに出品が並び始めた。512GB+Steam Controllerの同梱版(定価1128ドル)が3200ドル。2TBモデル(定価1349ドル)には3500ドルの値がついた。 出品だけではない。同じ512GB+Steam Controllerの同梱版が2800ドルで落札されている。2TBモデルも2700ドルから2900ドルの範囲で複数の取引が成立した。512GB単体も2000ドルで落札された。 売り手が持っているのは予約確認メールだけで、実機はまだ存在しない。購入招待を受けた人は72時間以内に決済を完了しなければ枠を失う。出品者がその

DDR4メモリの新製品が2026年に出る意味

メモリ

DDR4メモリの新製品が2026年に出る意味

ポーランドのメモリメーカーGOODRAMが、デスクトップ向けDDR4メモリの新シリーズ「RIVAL DDR4 RADIANT」を発売した。容量は4GBから32GBまでの4種類。動作クロックは3200MHz、レイテンシはCL16またはCL18。黒基板にレッドまたはグリーンのヒートシンクを載せた2色展開で、永久保証が付く。 2026年にDDR4の新製品を出す。その意味は、スペックの外にある。 誰も作らなくなったものを、作る DDR4の供給は崩壊に近い。サムスン、SKハイニックス、マイクロンの大手3社は生産ラインをAI向けHBMとDDR5に集中させ、DDR4のウェハー生産比率は2026年後半に1桁台前半まで落ちる見通しだ。マイクロンは2026年2月に個人向けブランドCrucialの出荷を終了し、コンシューマー向けDRAM事業から事実上撤退した。3社体制だった市場は実質2社に絞られている。 DDR4チップのスポット価格はこの1年で異常な動きを見せた。16Gbチップは2025年半ばの約3.20ドルから一時74ドル超まで跳ね上がり、上昇率は2200%に達した。ビット単価でDDR5を上回る

Appleが中国CXMTからのメモリ調達を政府に直訴。値上げの翌日に

Apple

Appleが中国CXMTからのメモリ調達を政府に直訴。値上げの翌日に

Mac・iPadの大幅値上げから一夜明けた6月26日、Appleがトランプ政権に対し、中国DRAMメーカーCXMT(長鑫存儲)からのメモリチップ購入許可を求めてロビー活動を展開していることが明らかになった。2月に浮上した中国メモリ調達の構想は、いまや米政府への正式な働きかけに変わっている。 値上げとロビー活動の時系列 Appleの動きには明確な段階がある。 6月17日、ティム・クック(Tim Cook)CEOがウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで、メモリ価格の高騰を受けた値上げは不可避だと認めた。安全保障上の規制で米企業が中国メモリメーカーと取引しにくい現状を問われると、「あらゆる供給先を検討すべきだ」と踏み込んでいる。 6月25日、Appleは実際にMac・iPad・Apple Vision Proなどの価格を一斉に引き上げた。日本国内ではMacBook Air(M5、13インチ)が18万4800円から22万4800円へ4万円増、MacBook Pro 14インチは24万8800円から33万9800円へ9万1000円増と、値上げ幅が最も大きい構成では10万円近い

スリーマイル島再稼働の内部情報で約2.3億円。技術者が起訴された

インサイダー取引

スリーマイル島再稼働の内部情報で約2.3億円。技術者が起訴された

AIデータセンター向け原発再稼働という国家規模の案件の内側で、インサイダー取引が起きていた。米証券取引委員会(SEC)と連邦検察が現地時間6月24日、コンステレーション・エナジーの元技術者を証券詐欺とインサイダー取引で起訴した。 社内コードネーム「プロジェクト・テトリス」 ケイシー・マグルストン(Casey Muggleston)氏、44歳。デラウェア州ウィルミントン在住。コンステレーション・エナジーでライセンス更新を担当するエンジニアリング・マネージャーだった。 コンステレーション・エナジーは2024年当時、2019年に閉鎖したスリーマイル島原子力発電所1号機の再稼働を内部で検討していた。社内コードネームは「プロジェクト・テトリス」。マグルストン氏は原子力規制委員会(NRC)への申請業務を通じて、このプロジェクトの進捗情報に直接アクセスできる立場にあった。 2024年5月21日、社内メールがライセンスチームの進捗を「極秘」扱いで伝えた。マグルストン氏もこのメールを受け取っている。3日後、同氏はスリーマイル島近くに住む親族に連絡を取り、再稼働を見越した不動産投資について相談し

Mythos 5が限定復活、Fable 5はまだ止まっている

AI

Mythos 5が限定復活、Fable 5はまだ止まっている

6月12日に全世界で遮断されたAnthropicの最上位AIモデルが、2週間ぶりに動き出した。ただし「全面復旧」ではない。米政府が認めたのはMythos 5だけ、対象は約100の米国組織だけ、一般向けのFable 5は書簡で触れられてすらいない。同じ日にOpenAIのGPT-5.6も政府承認済みの約20社にしか公開されなかった。誰が最も強いAIモデルを使えるか。それを決めるのは、もう開発企業ではない。この2週間で、その構造が既成事実になった。 書簡の中身 現地時間6月26日金曜日、ハワード・ラトニック(Howard Lutnick)商務長官からAnthropicのトム・ブラウン(Tom Brown)共同創業者に宛てた書簡が届いた。宛先がCEOのダリオ・アモデイ(Dario Amodei)氏ではなくブラウン氏になっている理由は後述する。 書簡の要旨はこうだ。6月12日の指令以降、Anthropicは米政府とともにリスク対応に取り組み、十分な成果が得られた。よって「信頼されたパートナー」に限り、Mythos 5へのアクセスを認める。ラトニック氏は承認リストをいつでも変更できるとし、

基準なき規制がフロンティアAIを止めている

AI

基準なき規制がフロンティアAIを止めている

Fableが止まった。GPT-5.6も制限された。だが何が安全かの基準は、まだ存在しない。 「許可」の条件を、誰も知らない フロンティアAIモデルの一般公開が、米国政府によって事実上の許可制に移行している。 AnthropicのFable 5が輸出管理指令で全ユーザーから遮断されたのは6月12日。それから2週間、復旧のめどは立っていない。6月26日にはOpenAIのGPT-5.6が、政府が個別に承認した約20社のパートナーだけに限定リリースされた。フロンティアモデルの公開を米国政府が事前に制限したのは、これが初めてになる。 フロンティアAI規制の経緯(2026年2月〜6月) 2月Anthropicをサプライチェーンリスクに指定国防総省が指定。連邦機関での利用を禁止 3月Anthropicがトランプ政権を提訴サプライチェーンリスク指定の違憲性を主張 6月2日AIサイバーセキュリティ大統領令に署名「任意の」事前テスト提供を規定。事実上の事前承認制 6月4日Great American AI Act ドラフト公表超党派の連邦AI規制法案。269ページ 6月9