メモリ価格、ジェフリーズがQ3に最大50%上昇を予測

メモリ価格、ジェフリーズがQ3に最大50%上昇を予測

2026年6月最終週、メモリ市場の全員が同じ結論に辿り着いた。投資銀行が予測を出し、メーカーが5年契約を結び、PCメーカーが「ニューノーマル」と公言し、Appleが制裁対象の中国企業に調達を打診した。それぞれ別の立場から、同じことを言っている。2025年以前の価格には戻らない。


ジェフリーズの数字と、その周囲

米投資銀行ジェフリーズ(Jefferies)のエクイティ・リサーチ部門が6月27日に公表した予測は、2026年後半のメモリ価格について最も強気な数字を出した。2026年第3四半期に前四半期比40〜50%、第4四半期にさらに30〜40%の上昇。2027年も前年比で40〜45%上がり、意味のある価格下落は2028年以降、新規生産能力が15〜20%増加するまで来ないという見立てだ。

この予測が出た直後、別の投資銀行Aletheia Capitalの数字と並べて読まれた。Aletheia側はサーバーDRAMのASP(平均販売価格)が第3四半期に30%上昇、第4四半期に10〜15%上昇と、ジェフリーズより穏やかな見通しを出している。業界コンセンサスは第3四半期20%、第4四半期30%とされる。ジェフリーズの数字はこの中で最も悲観的で、コンセンサスの倍に近い。

2026年後半 メモリ価格予測の比較(前四半期比)
0%10%20%30%40%50%40〜50%30%20%30〜40%10〜15%30%Q3 2026Q4 2026ジェフリーズAletheia Capital業界コンセンサス
※ ジェフリーズの予測はDRAM・NAND全体、Aletheia CapitalはサーバーDRAMのASP

だが、予測の数字より重要なのは、その前提にある構造認識だ。ジェフリーズは、クラウド大手(CSP)が現在メモリ生産能力の50%を長期契約で押さえており、これが70%に達する可能性があると指摘した。一般消費者向けの製品、つまりPC、スマートフォン、ゲーム機に回るメモリは、残りの枠を奪い合うことになる。

中国勢が状況を変えるという期待についても、ジェフリーズは2026〜2027年の時間軸では否定した。中国最大のDRAMメーカーCXMT(ChangXin Memory Technologies)の技術は、サムスンやSKハイニックスに対して1.5〜2世代遅れている。EUV露光装置へのアクセスが制限されている以上、DDR6やHBM3Eへの移行は自力では不可能だ。CXMTの生産能力が海外市場に影響を及ぼすのは、2028年以降に同社とYMTCが新工場と新ラインを本格稼働させてからになる。

マイクロンが結んだ「取り消し不能」の5年契約

ジェフリーズの予測が出る3日前、6月24日にマイクロンが2026年度第3四半期(3〜5月期)決算を発表した。売上高は414億5600万ドル。前年同期比346%増。5四半期連続の過去最高だ。

だが、市場が最も注視したのは業績ではなく、SCA(Strategic Customer Agreements)と呼ばれる長期契約の開示だった。マイクロンはデータセンター、コンシューマ、自動車の3分野にわたり、16件のSCAを締結した。契約期間は2026年から2030年までの5年間。take-or-pay(引き取り義務付き)条件で、顧客が購入しなくても代金が発生する。預け入れ金と信用供与の合計は220億ドル。14件の契約を最低価格で計算した累計売上は約1000億ドルに達する。

CEOのサンジャイ・メロートラ(Sanjay Mehrotra)氏は決算説明会で、全計画中のSCAが完了すれば、マイクロン売上の半分以上がこの長期契約でカバーされると述べた。

これが消費者に何を意味するか。マイクロンのDRAM生産量の20%、NAND生産量の3分の1が、すでに5年間にわたって特定の大口顧客に割り当てられた。契約には価格の上限と下限が設定されているが、下限はマイクロンの過去最高四半期利益率を上回る水準だという。景気が冷え込んでも、マイクロンが安く売る理由は構造的に消えた。

メモリ産業はこれまで景気循環の激しさで知られていた。需要が落ちれば在庫が積み上がり、価格が崩壊する。その崩壊が次の回復を生む。マイクロンのSCAは、この循環を契約で止めようとしている。サムスン電子とSKハイニックスも同様の長期契約戦略を進めている。3社がそろって同じ方向に動いている。

Appleが制裁リストの中国企業に接触した

6月25日、Appleは日本を含む全世界でMac、iPad、HomePod、Apple TV、Vision Proの価格を引き上げた。日本ではMacBook Proの14インチモデルが9万1000円、MacBook Air 13インチが4万円の値上げ。3月に9万9800円で登場したばかりのMacBook Neoは、3カ月で11万9800円になった。

Apple製品の値上げ幅(2026年6月25日、日本)
02万4万6万8万10万+9.1万円+4万円+2万円MacBook Pro14インチMacBook Air13インチMacBook Neo256GB単位:円(税込)
※ 最小構成ベース。MacBook Pro 14インチは248,800→339,800円、MacBook Air 13インチは184,800→224,800円、MacBook Neoは99,800→119,800円

ティム・クック(Tim Cook)CEOは値上げ発表に先立つ6月17日のインタビューで、部品コストの上昇について語った。40年以上のキャリアで見たことのない規模の値上がりだという趣旨の発言だ。

そして6月27日の報道で、Appleが米商務省に対しCXMTからのメモリ調達について打診していたことが明らかになった。CXMTは米国防総省の「中国軍事関連企業リスト(1260Hリスト)」に掲載されている。このリストに載っていること自体は民間企業間の取引を法的に禁じないが、Appleが求めているのは、CXMTが今後より厳しい「エンティティリスト」に追加されないという保証だ。エンティティリストに載れば、米国企業はライセンスなしに取引できなくなる。

Appleの現在のDRAM調達先はマイクロン、サムスン電子、SKハイニックスの3社のみ。ここにCXMTを加えれば調達先が増え、価格交渉力も上がる。しかしCXMTには、サムスンの元従業員10名がCXMTへ技術を流出させたとして逮捕された事件や、SKハイニックスのエンジニアがHBMプロセス技術を持ち出そうとした事件など、知的財産をめぐる問題がつきまとう。Appleは政治的リスクを承知の上で動いた。それ自体が、メモリ調達の逼迫の深刻さを示している。

なお、2022年にもAppleはYMTC(中国最大のNANDメーカー)からの調達を検討し、米議会から強い警告を受けて断念した前例がある。CXMTも同様の政治的逆風に晒される可能性は高い。

レノボが「もう戻らない」と言い切った

6月26日、ドイツで開催されたISC 2026でレノボの担当者がDRAMとNANDの価格推移を示すスライドを提示し、2025年初頭の価格水準には「二度と」戻らないと述べた。「二度と」の部分はジョーク混じりだったと報じられているが、その後の説明は冗談ではなかった。2030年以降も現在の高水準が「ニューノーマル」になるという見方だ。

レノボの認識はSKハイニックスのチェ・テウォン(Chey Tae-won)会長が示した見通しと一致する。チェ会長はComputex 2026で、メモリの需給逼迫が2030年頃まで続く可能性に言及した。SKハイニックスはウェハー生産能力の増強計画を当初の2040年以降から2030年以降に前倒しし、生産量を3倍にする目標を掲げている。それでもレノボは、この規模の増産では需給ギャップを埋めきれないと見ている。

数字より先の話

ジェフリーズの予測が40〜50%か、Aletheiaの30%か、コンセンサスの20%か。どの数字が正しいかは、消費者にとって本質ではない。

本質は、ここ1週間で起きた出来事が全て同じ方向を指していることだ。メーカーが5年間の価格下限を過去最高益水準に設定し、PCメーカーが価格の正常化を期待しないと公言し、Appleが安全保障上のリスクを冒してまで調達先を探している。これらは「値上がりの程度」ではなく、「戻るか戻らないか」に対して産業全体が出した答えだ。

マイクロンの決算説明会で、CBO(最高事業責任者)のスミット・サダナ(Sumit Sadana)氏が語った話がある。メモリ市場が低迷していた2023年、一部の大口顧客が極端な値下げ交渉を仕掛けた。その結果、メーカー各社の利益率が壊滅し、生産能力への投資が止まった。あの時期に投資が止まったことが現在の供給不足につながったと、サダナ氏はWSJに語っている。買い手が値下げで勝ちすぎた結果、供給側の投資余力が失われ、数年後に供給不足として跳ね返ってきた。SCAはその反省から生まれた仕組みだ。

消費者からすれば、「待てば安くなる」はPC組み立ての鉄則だった。その前提を、この1週間で売り手も買い手も公式に否定した。MacBook Proの14インチモデルは日本で33万9800円になった。MacBook Neoは10万円を割る唯一のMacBookだったが、3カ月で10万円を超えた。メモリの値動きがこうした完成品の価格にそのまま転嫁されている。

2028年にCXMTとYMTCの新工場が立ち上がり、15〜20%の供給増加が実現すれば、ASPは下がるとジェフリーズも見ている。だが、マイクロンのSCAが示すように、メーカーは価格下限を高い水準で固定する契約をすでに結んでいる。供給が増えても、その分がどこに流れるかは契約で決まっている。消費者向けの余剰が生まれるかどうかは、AI需要の成長速度次第だ。

Apple製品の値上げ幅を見れば、数字の意味は体感できる。だが、値上げの理由は「メモリが高いから」だけではない。メモリが高い状態を、産業全体が今後数年間の前提として織り込み始めたことが、今週起きた本当の変化だ。

参照元:Jefferies — Global Research & Strategy

他参照:

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