岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
Xfce Waylandコンポジタ「xfwl4」初版が公開

Linux

Xfce Waylandコンポジタ「xfwl4」初版が公開

今年1月に開発が発表されたXfceのWaylandコンポジタ「xfwl4」の初のプレビュー版が出た。約半年の開発を経たアルファ版で、広くテストしてもらう段階に入る。 半年の開発が形になった Xfceには長年、X11ウィンドウマネージャーのxfwm4がある。xfwl4は、そのWayland版にあたるコンポジタだ。Rustで一から書かれている。 1月にXfceプロジェクトがコア開発者のブライアン・タリコーン(Brian Tarricone)氏への開発スポンサーシップを発表し、年初から同氏がフルタイムで開発に集中してきた。当初「年半ばにリリース」としていた目標を、ほぼ予定どおりに達成した格好だ。 タリコーン氏はこれをアルファ版と位置づけている。バグや未実装機能は残るが、より多くの環境で動かしてフィードバックを集める時期に来たとしている。 「X11と区別がつかない」が最終目標 xfwl4の開発目標は、Xサーバー上で動くXfceデスクトップの操作感を、Wayland上でも可能な限り再現することだ。既存のxfwm4設定ダイアログやxfconfの設定値をそのまま流用できるよう設計され

Claudeが身分証を求める日。Anthropicが書き換えた規約の中身

AI

Claudeが身分証を求める日。Anthropicが書き換えた規約の中身

AIチャットボットを使うために、パスポートを差し出す。プライバシーポリシーの改定という静かな手続きのなかで、その現実はもう動き始めている。 7月8日から変わること Anthropicは6月8日、Claudeの個人向けプライバシーポリシーを改定した。発効は7月8日。新設された「Verification Data(確認データ)」の項目が、今回の核心にあたる。 「特定の状況において、年齢または本人確認を求める場合がある」。ポリシーにはそう記され、収集するデータが列挙されている。政府発行の身分証明書の画像とそこに印字された情報(ID番号、生年月日)、写真または動画、そして顔のジオメトリテンプレート。最後の項目についてはAnthropic自身が「一部の法域では生体データとみなされうる」と注記している。 対象はClaude Free、Pro、Maxの個人ユーザー。Team、Enterprise、API経由のビジネス顧客には適用されない。 すでに動いていた仕組み この仕組みは唐突に現れたわけではない。すでに報じた通り、Anthropicは4月14日からサンフランシスコのKYC企業Pe

米国、量子コンピュータの開発加速と暗号移行を同時に命令

量子コンピュータ

米国、量子コンピュータの開発加速と暗号移行を同時に命令

量子コンピュータを国家事業として造り、同時に量子コンピュータから国を守れ。トランプ大統領が6月22日に署名した2本の大統領令は、同じ技術の「攻め」と「守り」を一つのパッケージにまとめた、率直に言って野心的な文書だ。 「造る」と「守る」を束ねた理由 量子コンピュータは、従来のコンピュータが数千年かかる計算を短時間で解く可能性を持つ。創薬、新素材開発、気候モデリング、金融最適化。恩恵のリストは長い。だが同じ計算能力は、今のインターネットを支える暗号をも破壊しうる。銀行取引、軍事通信、個人情報。デジタル社会の安全は、量子コンピュータがまだ「十分に強力でない」という事実の上に載っている。 この二面性に対し、米国はこれまで「開発促進」と「暗号防御」を別々の政策文書で扱ってきた。2018年の国家量子イニシアチブ法は開発側、2022年のバイデン政権NSM-10は防御側。今回の2本同時署名は、両者を初めて一つの政策判断として結びつけた。 背景には、中国の量子分野への集中投資がある。そしてもう一つ、量子コンピュータの性能向上によって「暗号が破られる日」(Q-Day)の推定時期が繰り上がり続けて

Sakana AIのFugu。一つの最強に賭けないAI

AI

Sakana AIのFugu。一つの最強に賭けないAI

6月22日、東京を拠点とするSakana AIが「Sakana Fugu」を一般提供開始した。単一のAPIの裏側で複数のAIモデルを動的に使い分け、フロンティアモデルに匹敵する性能を出すと同社は主張する。Fable 5が一夜で消えた直後に出てきたこの製品は、リリース文の冒頭から輸出規制に言及している。 消えたフロンティアモデル 6月9日、AnthropicはClaude Fable 5を公開した。同社史上もっとも高性能なモデルで、SWE-Bench Proで80.3を叩き出し、エンジニアリング系タスクでは競合を圧倒した。3日後の6月12日、米商務省が輸出管理指令を発令し、Fable 5とMythos 5への全ユーザーのアクセスを即時停止させた。 指令の根拠は、安全機構を迂回してMythosのサイバーセキュリティ能力を引き出せる手法が見つかったという報告だ。Anthropicは「狭い範囲の非汎用的な迂回であり、他社モデルでも同様のことは可能」と反論しているが、6月22日時点でFable 5は復旧していない。Anthropic幹部は「数日以内の復旧に自信がある」と発言したものの、具

Windows 11、AI不要の実用5機能が7月に全員へ

Windows

Windows 11、AI不要の実用5機能が7月に全員へ

Windows 11の7月アップデート(KB5095093)で、Copilot+ PCもAIサブスクリプションも不要な5つの実用機能が全PCに展開される。更新の一時停止をカレンダーで選べるようになり、PCを72時間前の状態に丸ごと巻き戻す復元機能が一般提供される。ウィジェットは静かになり、Bluetoothは一度にこれだけ直るのかというほど手が入った。6月のプレビュー配信を経て、7月14日のPatch Tuesdayで全ユーザーに届く。 「AIではない」ことの意味 2026年のWindows 11は、毎月のようにAI関連の機能を積んできた。Copilotがタスクバーに住みつき、AIエージェントがバックグラウンドで走り、Recallはセキュリティ研究者からの指摘が絶えない。そのたびにSNSで繰り返されてきた声がある。「AIより先にやることがあるだろう」。 7月のアップデートは、その声に対するMicrosoftの回答に見える。5つの目玉機能はどれもCopilot+ PCを必要としない。NPUもクラウドも関係ない。Windows 11 24H2と25H2が動くすべてのPCに届く、地に

Bcachefs 1.38.6、「実験的」卒業後の実力をベンチマークで確認する

Linux

Bcachefs 1.38.6、「実験的」卒業後の実力をベンチマークで確認する

「実験的」の看板を外したBcachefs。その最初のリリースとなる1.38.6が、データベースやコンパイルといった実ワークロードでどれだけ前に進んだのか。独立したベンチマークが公開された。 200本のパッチが積み上げたもの 開発者のケント・オーバーストリート(Kent Overstreet)氏がBcachefs 1.38.6を「パフォーマンスリリース」と呼んだ。Bツリーのイテレータからトランザクションコミット、ジャーナル、ファイルシステムレベルのコードまで、200本以上のパッチを投入している。 変更の中身は地味だが効いている。ジャーナルのフラッシュパスは完全にロックフリーになった。Bツリーのシャーディングも手が入り、新規inodeの割り当てをCPUではなくPIDに基づかせ、ロック競合時にはスレッドをデータのシャードに対応するCPUへ移動させる。トランザクションコミットのホットパスが4KBのマシンコードにまで縮んだ。 ここで一つ、開発者が掘り当てた厄介な原因がある。GCCが static_branch_unlikely() を適切に処理できていなかった。Linuxカーネルにはラ

欧州23か国に35台。NVIDIAが仕掛けるAIスパコン大拡張の全容

AI

欧州23か国に35台。NVIDIAが仕掛けるAIスパコン大拡張の全容

欧州23か国で35台のAIスーパーコンピュータが動き出す。ハンブルクで開幕したISC High Performance 2026でNVIDIAが発表した。300万人超の研究者に計算資源を届ける計画で、欧州大陸におけるAIインフラの単年拡張としては過去最大になる。 数字が語る規模 35台は国立スーパーコンピューティングセンター、AIファクトリー、大学の研究機関にまたがり、昨年からの通算で800AIエクサフロップスの計算能力が稼働済みまたは発表済みとなる。 NVIDIAはもう一つの数字を示した。欧州のAIファクトリー構築の 90%超 がNVIDIAのインフラで動いている。BlackwellとHopperの両アーキテクチャが主軸であり、Quantum InfiniBandネットワーク、CUDA-Xライブラリ、NIMマイクロサービス、AI Enterpriseソフトウェアまで含めたフルスタックでの提供となる。 ジェンスン・フアン(Jensen Huang)CEOはこう述べた。「AIは科学の新たな道具であり、欧州はそれを数百万の研究者に届けるインフラを築いている」 主要5拠点の設計

「数年ではない、数か月だ」ファイブ・アイズがAIサイバー脅威で共同声明

AI

「数年ではない、数か月だ」ファイブ・アイズがAIサイバー脅威で共同声明

米英豪加NZの5カ国サイバーセキュリティ機関の長が連名で共同声明を出し、フロンティアAIモデルが攻撃・防御の双方を根本から変えると警告した。Fable 5の輸出規制が続くなかで発された今回の声明は、サイバーリスクを「IT部門の問題ではなく、経営者の責任だ」と名指しで突きつけている。 6人の署名 現地時間6月22日、ファイブ・アイズ(米国・英国・オーストラリア・カナダ・ニュージーランド)のサイバーセキュリティ機関がそろって共同声明を発表した。署名したのは、英国NCSCのリチャード・ホーン(Richard Horne)CEO、NSAサイバーセキュリティ局のデビッド・インボルディーノ(David Imbordino)局長、CISA暫定局長のニック・アンダーセン(Nick Andersen)、オーストラリアACSCを率いるステファニー・クロウ(Stephanie Crowe)、カナダ・サイバーセンターのラジブ・グプタ(Rajiv Gupta)、ニュージーランドNCSCのカトリオナ・ロビンソン(Catriona Robinson)の6名。中間管理職ではない。各国のサイバー防衛を預かるトップ

OpenAI Daybreak拡大。脆弱性は見つかる、直す手が足りない

AI

OpenAI Daybreak拡大。脆弱性は見つかる、直す手が足りない

AIが脆弱性を見つける速度は、すでに人の手で修正できる速度を追い越した。OpenAIが出した答えは「見つけるだけでなく、直すところまでやる」仕組みの拡張だった。 5月の宣言から6月の実装へ OpenAIは現地時間6月22日、サイバーセキュリティ構想「Daybreak」の大幅なアップデートを発表した。5月11日の初回発表では構想と基盤が中心だったが、今回は具体的な成果と新たなプログラムが揃う。柱は4つ。セキュリティ特化モデル「GPT-5.5-Cyber」の正式版リリース、Codex Securityプラグインのアップデート、パートナー企業向けの「Daybreak Cyber Partner Program」、そしてオープンソースの脆弱性を実際に修正するイニシアチブ「Patch the Planet」だ。 4月にAnthropicがフロンティアモデル「Claude Mythos Preview」を限定公開し、Project Glasswingを立ち上げてから2ヶ月あまり。しかもAnthropicは6月12日、米商務省の輸出管理指令によりFable 5とMythos 5への全アクセス

SpaceX、IPOの10日後に社債発行 AI投資と資金需要を分析

テクノロジー

SpaceX、IPOの10日後に社債発行 AI投資と資金需要を分析

保有する現金は約1008億ドル(約16兆3000億円)。それでも、金を借りに来た。史上最大のIPOを終えたSpaceXが、今度は社債市場に乗り込んできた。 ロケット企業が債券市場へ SpaceXは現地時間6月22日、無担保優先債(シニア・アンセキュアード・ノート)の発行を発表した。上場からわずか10日。同社にとって初めての社債発行となる。 公式には調達規模を明かしていない。関係者の話として、200億ドル(約3兆2000億円)以上を目指すと報じられている。満期は5年物から30年物まで複数の年限が設定される見込みで、投資家向けの説明は22日から始まった。 格付けは3大機関が揃って投資適格を付与した。ムーディーズがBaa1、フィッチがBBB+、S&PグローバルがBBB。Starlink(スターリンク)の安定収益と、軌道打ち上げ市場での圧倒的シェアが評価された。フィッチは、2023年以降に地球から軌道へ運ばれた質量の80%以上をSpaceXが担ったと指摘している。 では、なぜこれだけの現金を抱えて借りるのか。 xAIの負債、200億ドルの借り換え 答えは2月に遡る。Space

Steam Machine、1,049ドルから。メモリ危機が値札に刻まれた

ゲーミングPC

Steam Machine、1,049ドルから。メモリ危機が値札に刻まれた

Valveがようやく値札を見せた。Steam Machineの512GBモデルが1,049ドル、2TBモデルが1,349ドル。現地時間6月22日、Valveは予約ページの公開と同時に価格を明かした。初回出荷は6月29日から順次始まる。日本の価格はKOMODOからの発表待ちだが、1ドル161円換算で512GBモデルが約16万9,000円、2TBモデルは約21万7,000円になる。 当初目標から大きくずれた値札 Valve自身が認めた。公式ブログで、部品の調達価格が当初の想定から大幅にずれたことを説明している。 Steam Machine, like our other hardware products, is made up of many components that we source from manufacturers around the world. The price at which we sell our hardware is a direct

FSR 4.1がRadeon RX 7000に正式対応。iGPU向け軽量モデルも開発中

GPU

FSR 4.1がRadeon RX 7000に正式対応。iGPU向け軽量モデルも開発中

AMDのFSR 4.1がRadeon RX 7000シリーズに正式対応した。予定は7月だったが前倒し。iGPU向けの軽量MLモデル開発も公表され、Computexで宙に浮いていたRDNA 3.5対応にひとつの答えが出た。 7月を待たずに来た AMDのジャック・フイン(Jack Huynh)氏が6月22日、FSR Upscaling 4.1をRadeon RX 7000シリーズに正式展開すると発表した。同日公開の最新Adrenalinドライバで、RX 7000ユーザーはFSR 4.1を使えるようになる。 We power over 1 billion gaming devices worldwide. That scale comes with responsibility: push innovation forward and bring it to more gamers everywhere.

NVIDIAがロボット安全基盤を発表。自動運転の技術をヒューマノイドへ転用

AI

NVIDIAがロボット安全基盤を発表。自動運転の技術をヒューマノイドへ転用

ヒューマノイドロボットが倉庫で人間の隣に立ち始めた。だが「隣に立てる」ことと「隣に立っていい」ことの間には、まだ何も敷かれていない。NVIDIAが現地時間6月22日に発表した「Halos for Robotics」は、その空白を埋めようとする試みだ。 自動運転で作った安全の骨格を、ロボットに移す Halosという名前に聞き覚えがあるなら、それは正しい。NVIDIAが2025年3月に発表した自動運転車向けのフルスタック安全システムがHalosだ。ハードウェアからOS、AIの挙動制限、第三者認証まで、すべてを一本の設計思想で貫く。Mercedes-Benzの新型CLAへの搭載をはじめ、自動車産業での実装が進んでいた。 今回の発表は、その安全設計をロボティクス領域に拡張するものだ。構成は3層。ハードウェア層にあたるNVIDIA IGX Thorとセンサ接続モジュールのHoloscan Sensor Bridge、ソフトウェア層にあたるHalos OS(安全関連の動作機能と安全アプリケーションを担うソフトウェアスタック)、そして認証準備を支援するHalos AI Systems Ins

スターマー辞任が残すテック政策の宿題

テクノロジー

スターマー辞任が残すテック政策の宿題

キア・スターマー(Keir Starmer)首相が6月22日、辞任を表明した。2024年7月の地滑り的勝利からわずか2年足らず。英国は10年で7人目の首相を迎えることになる。スターマー氏がテック政策に残した遺産を検証する。 「AI超大国」を掲げた2年間 スターマー政権のテック政策は、一言でまとめるなら「壮大な計画書と、未完の法律」だ。 2025年1月、首相はマット・クリフォード(Matt Clifford)氏に委託した「AI機会行動計画」を発表し、50の提言すべてを受け入れると宣言した。国内のAI計算資源を2030年までに20倍にする。750万人にAIスキル研修を受けさせる。英国をG7最速のAI導入国にする。数字は大きく、意思は明確だった。 辞任のわずか2週間前、London Tech Week 2026の壇上でも勢いは衰えていなかった。AIチップ購入に4億ポンド(約850億円)を含む11億ポンド規模のAIハードウェア計画を発表。AMDが最大20億ポンド、ネビウス(Nebius)が17億ポンドの英国投資を表明し、英国初のソブリンAIフロンティアモデル「Lumen Sovere