岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
Outlook for Macで返信すると会話が消えるバグ。修正の見通しなし

Microsoft

Outlook for Macで返信すると会話が消えるバグ。修正の見通しなし

返信ボタンを押した瞬間、メールの会話履歴が消える。6月中旬以降、Mac版Outlookのレガシークライアントで起きている不具合だ。直前のやりとりも、その前の経緯も、返信ウィンドウには何も残らない。メールクライアントとして最も基本的な機能が壊れている。 何が起きているのか バージョン16.110(ビルド26061317)へのアップデートが原因だ。6月18日前後に自動更新で配信されたこのビルドを適用すると、返信や転送の際に元のメッセージ本文が一切表示されなくなる。件名と差出人のヘッダーだけが残り、肝心の本文は空白。転送に至っては、中身のないメールを相手に送ることになる。 影響を受けるのはHTML形式のメールだ。プレーンテキストのメールでは症状が出ない。Microsoftのサポートフォーラムには5月中旬から散発的に報告が上がっていたが、ビルド26061317の自動配信が広がった先週から投稿が一気に増えた。Microsoft Q&Aには少なくとも10件以上の個別スレッドが立ち、いずれも同じ症状を訴えている。 Microsoftは6月17日付でサポートページを公開し、バグを「調査中」と

FSR 4.1.1がValve経由で誤公開 RDNA 3.5での動作も確認

GPU

FSR 4.1.1がValve経由で誤公開 RDNA 3.5での動作も確認

AMDが「決定していない」と言い続けたRDNA 3.5へのFSR 4対応が、Valveのうっかりミスであっさり証明された。 Proton Experimentalから消えた62MBのDLL 6月22日、Valveが配信するLinux向け互換レイヤーProton Experimentalの最新ブランチに、あるファイルが追加された。amdxcffx64.dll。AMDのFSR 4アップスケーリングを司るDLLで、バージョンは2.3.0。AMDによるデジタル署名の日付は6月20日。ファイルサイズは62.6MB。 この変更をいち早く検出したのが、SteamDBを定常的に監視しているブラッド・リンチ(Brad Lynch)氏だ。同氏が投稿した直後、Valveは直後にファイルを引き上げたが、削除前にダウンロードしたユーザーがいた。r/radeonのRedditユーザーu/AthleteDependent926氏だ。同氏はFSR 4のリーク品をこれまでも繰り返しテストしてきたコミュニティの常連で、今回も入手したDLLをOptiScaler経由で即座に検証し、結果を公開した。 FSR 4.

「消しても戻るAI」にEUは介入できるか

AI

「消しても戻るAI」にEUは介入できるか

自分の端末から、入れた覚えのないソフトウェアを消す。それだけのことが、なぜこれほど難しくなったのか。 FSFE(Free Software Foundation Europe、欧州フリーソフトウェア財団)が6月15日、欧州委員会に意見書を提出した。デジタル市場法(DMA)に基づくAndroid相互運用性コンサルテーション(事件番号DMA.100220)への正式な回答だ。要求は明快で、ユーザーがAI関連機能を端末から完全に削除できること。そして開発者がGoogleとの契約や登録なしに、Androidの相互運用性にアクセスできること。 消しても消えないAIモデル FSFEが意見書で名指しで取り上げたのは、5月にプライバシー研究者のアレクサンダー・ハンフ(Alexander Hanff)氏が公表した調査結果だ。Google Chromeがユーザーの同意なく、Gemini Nanoと呼ばれる約4GBのAIモデルをデスクトップ端末にダウンロードしている。OptGuideOnDeviceModelというフォルダにweights.binとして置かれるこのファイルを削除しても、Chromeは再

Rust製zlib実装がIntel CPUバグを回避。C言語なら黙って壊れていた

Rust

Rust製zlib実装がIntel CPUバグを回避。C言語なら黙って壊れていた

zlibのRust実装「zlib-rs」の最新版0.6.4が6月21日にリリースされた。AArch64のチェックサム修正やAVX-512の最適化も含まれる。だが今回の本題は別にある。Intel Raptor Lake世代のCPUバグに対する回避策だ。 Raptor Lakeが引き起こしたクラッシュ zlib-rsは、Trifecta Tech Foundation(オランダ)が開発するRust製のzlib互換実装で、ISRGのProssimoプロジェクトが初期の開発を支援した。2024年4月の初版から採用が広がり、2026年5月にリリースされたFirefox 151.0.0でgzip圧縮・展開のデフォルトバックエンドに採用されている。 問題が起きたのは、Firefoxがzlib-rsを統合した直後だった。Nightly版でクラッシュレポートが上がり始め、ログには「論理的にありえない境界チェックの失敗」が残っていた。開発者はローカルでは再現できず、レポートが積み重なるにつれてパターンが見えてきた。クラッシュの報告元が、Intel第13・14世代Core(Raptor Lake)に

TOTO、半導体部材に800億円。1nm時代を見据えた賭け

AI

TOTO、半導体部材に800億円。1nm時代を見据えた賭け

ウォシュレットの会社が、営業利益の過半を半導体で稼いでいる。そのTOTOが、次の5年でさらに800億円を投じると報じられた。いまの主戦場はNANDメモリー。その先にある「1nm世代のロジック半導体」を狙う。 300億円から800億円へ TOTOは4月30日、セラミック事業の成長投資を加速すると発表した。2028年度までに茅ヶ崎工場(神奈川県)、中津工場(大分県)、豊前工場(福岡県)の3拠点に約300億円を投じ、「さらなる生産増強に向けた大規模な投資計画を構想している」とした。 6月21日、その「構想」の輪郭が見えた。今後5年で800億円規模を投じるという。差額の約500億円は、まだ正式決定前の案件を含む。方向は明確だ。NAND向け静電チャックの増産に加え、茅ヶ崎工場でのロジック半導体向けR&Dが新たな柱になる。 回路線幅1nm台のロジック半導体は、現時点ではまだ数世代先の技術だ。だがTOTOの読みはこうだろう。NANDメモリーで築いた顧客基盤と技術力を、次の成長領域に先行投資で転用する。NAND向け静電チャックで成功した収益構造を、ロジック半導体の製造装置向けAD部材で再現す

Copilot強制インストール、完了予定をまた延期。8月末に後退

Microsoft

Copilot強制インストール、完了予定をまた延期。8月末に後退

Microsoft 365 Copilotアプリの自動インストール、Microsoftがまたスケジュールを書き換えた。6月15日付でメッセージセンター(MC1152323)が更新され、フィーチャーフラグの詳細スケジュールは消えた。残ったのは「6月中旬から7月中旬にかけてロールアウト」という一文と、完了予定が7月31日から8月28日に後退した事実だけだ。 予告の歴史が語ること この自動インストールには、もう長い経緯がある。 2025年9月の最初の予告では「10月から11月に完了」とされた。12月に実際にロールアウトが始まったものの、IT管理者の反発を受けて2026年3月に一時停止された。Microsoftは停止の理由を明示しなかった。6月2日の更新でMicrosoftは再開を告知し、4段階のフィーチャーフラグで7月1日に完了する計画を示した。 MC1152323 更新履歴 2025年9月自動インストールを予告10月〜11月完了予定で初版を発表2025年12月ロールアウト開始バージョン2511で配布開始2026年3月一時停止理由の明示なし。方針転換への期待が広がる20

AIが直した36秒、AIが間違えた原因

Linux

AIが直した36秒、AIが間違えた原因

ASUS ROG Strix G16のLinux起動が36秒も止まる。Ryzen 9に32GBメモリを積んだハイエンドノートでだ。Gemini 3.5 Flashが原因を突き止め、カーネルパッチまで生成した。GoogleのAI開発プラットフォームAntigravity上での作業だ。起動時間は正常に戻った。ただし、AIが示した「原因」は間違っていた。 36秒の沈黙 ASUS ROG Strix G16 G614は、日本でもRyzen 9 9955HX3D搭載モデルが販売されているゲーミングノートだ。Linuxを入れると、カーネルの起動だけで約36秒かかる。電源を入れてからデスクトップが出るまでの時間ではない。カーネルそのものの起動が36秒止まる。 この問題は以前からASUSフォーラムでも報告が上がっていた。G614の複数のサブモデルで同じ症状が見つかり、ファームウェアのバージョンによっては回避策もなかった。Linuxを使うユーザーにとっては、せっかく買ったハイエンド機がまともに起動しない状況だ。 Geminiの診断 マルコ・スカルドヴィ(Marco Scardovi)氏は、

GTA VIリーク価格€90。予約開始目前の真偽

ゲーム

GTA VIリーク価格€90。予約開始目前の真偽

6月25日の予約開始を控えたGTA VIに、価格の「リーク」が飛び込んできた。ポルトガルの大手小売Fnacのサイトに、ロックスター・ゲームスのSKUが複数掲載された。通常版とみられるRS1が€89.99、上位版RS4が€119.99、最高額のRS5が€199.99。いずれも発売日を11月19日としており、ロックスター公式の日付と一致する。 「EANコードが合わない」 Fnacはフランス発の大手小売チェーンで、Fnac Dartyグループとしてポルトガル・スペイン・ベルギー・スイスなど欧州各国に直営店を展開している。過去にもゲーム情報のリーク元になった実績があり、今回もSKU登録が予約開始の4日前だったことから、信憑性を認める声が広がった。 しかし、billbil-kun氏がすぐに反論を出した。Dealabs誌でリーク調査を手がける同氏は、PlayStation Plusの月替わりタイトルをほぼ毎月事前に的中させてきた人物だ。 Looks like many people (including R*) are trying to disturb my holidays Tho

Ryzen 9 9900Xの故障報告 基板背面に膨張痕を確認

AMD

Ryzen 9 9900Xの故障報告 基板背面に膨張痕を確認

AMDのRyzen CPUが内側から壊れる報告が、また一つ増えた。今度の主役はRyzen 9 9900X。MSI MAG X870E Tomahawk WiFiとの組み合わせで、購入から1年足らずで突然起動しなくなった。 何が起きたか ある日、PCがPOSTを拒否した。ファンだけが回り、マザーボードのPOSTコードは「00」、CPUデバッグLEDが赤く点灯したまま動かない。CMOSリセットもBIOSフラッシュバックも効果なし。 クーラーを外してCPUを取り出すと、ヒートスプレッダの表面は無傷だった。サーマルペーストの塗り広がりも正常。だが裏面の中央付近に、小さな膨らみがあった。基板の層が内側から剥離し、泡のように盛り上がっている。指でなぞれば凸がわかる。投稿者はこれを「水ぶくれ」と表現した。 My Ryzen 9 9900X just suddenly died (Code 00 / Red CPU LED). Pulled it out and found a physical

ブラジルの緊急警報システムが不正利用 信頼性への影響と対策

セキュリティ

ブラジルの緊急警報システムが不正利用 信頼性への影響と対策

真夜中にスマートフォンが叫んだ。サイレントモードでも関係ない。画面に割り込んできたのは「Defesa Civil」の文字と、「misantropi4」の一語。ポルトガル語で「人類への嫌悪」を意味する。洪水でも地滑りでもない。 深夜の強制鳴動 現地時間2026年6月19日午後11時40分ごろ、ブラジル南部パラナ州クリチバの住民の携帯電話が一斉に鳴り始めた。W杯ブラジル対ハイチ戦の直後だった。 表示されたのは「Alerta Extremo」(最高レベルの緊急警報)。洪水やサイクロンなど命に関わる事態にだけ使われるカテゴリで、端末の設定を無視して強制的に音を鳴らし、画面上のあらゆるアプリを押しのける。その警報の本文が「misantropi4」だった。ポルトガル語「ミザントロピア」(人類への嫌悪)の末尾のaを数字の4に変えた、ネットスラング的な表記だ。 数分後にはサンパウロとリオデジャネイロでも同じ警報が鳴り、さらにブラジリア連邦区やバイーア州、アクレ州などへ広がった。最終的に8州と連邦区で少なくとも10件の不正アラートが送信されている。ベロオリゾンテでは「エイリアン襲来。われわれは

Polymarketの「大勝ち動画」に演出があったと判明 制作手法を検証

暗号資産

Polymarketの「大勝ち動画」に演出があったと判明 制作手法を検証

10万ドル勝った。次の動画では6万ドル。Polymarketで儲けている若者たちの映像が拡散し、予測市場ブームを支えてきた。だがその賭けは、一度も成立していなかった。 ダミーサイト、偽の取引、報酬つきの台本 ある大学生が1月に投稿した動画がある。トランプ大統領がその月に「McDonald's」と発言するかどうかに10万ドルを賭けて的中させたように見える。この大学生の動画は145件にのぼり、賭け金の合計は41万ドル近くに達する。 だが、賭けは一つも本物ではなかった。 調査報道によると、この大学生はPolymarketが報酬を払って雇った数十人のクリエイターの一人だった。大半は大学生世代で、Polymarketから指示書つきの台本を受け取り、偽の取引を撮影していた。「勝った」ように見えなければ撮り直し。月額の報酬は2,000ドルから3,000ドル(約32万〜48万円)で、Polymarketとの関係は一切伏せるよう求められていたという。 ここまでなら、よくあるステルスマーケティングの話に見える。だが手口はもっと巧妙だった。 Polymarketは自社サイトのほぼ完全なコピーを

Amazonが「人による監視」を信用しない理由

AI

Amazonが「人による監視」を信用しない理由

AIエージェントの暴走を防ぐ最後の砦は、人だと信じられてきた。その信頼に疑問を突きつけたのが、Amazon自身のセキュリティ責任者だ。 「人はそんなに一貫していない」 エリック・ブランドワイン(Eric Brandwine)氏はAmazonセキュリティ部門のバイスプレジデント兼ディスティングイッシュトエンジニアだ。インタビューで語った内容は率直だった。AIエージェントが企業のITシステム内で自律的に動く時代に、「human-in-the-loop(人による監視)はゴールドスタンダードとは限らない」と言い切った。 ブランドワイン氏の論点はこうだ。AIエージェントに承認判断を繰り返し求められる立場に人を置けば、最初はきちんとやる。しばらくすると「まあまあ」になる。そしてすぐに、雑になる。 これは推測ではない。2017年のAWS re:Inventでブランドワイン氏自身が講演で取り上げた概念が、そのまま当てはまる。「逸脱の正常化」(normalization of deviance)だ。 アラームが鳴っても飛び上がらなくなる この概念を提唱したのは社会学者ダイアン・ヴォーン(

米国の日焼け止めが20年遅れだった理由。FDA、ベモトリジノールを承認

ヘルスケア

米国の日焼け止めが20年遅れだった理由。FDA、ベモトリジノールを承認

ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン。アネッサの成分表に載っている、舌を噛みそうな名前の紫外線吸収剤だ。日本では何年も前からごく普通に使われている。この成分がアメリカでは2026年6月まで、一切使えなかった。 四半世紀の空白 FDAは現地時間6月9日、ベモトリジノール(BEMT)をOTC日焼け止めの有効成分として正式に承認した。1990年代後半以来、米国で初めて認められた日焼け止め成分だ。発効は8月9日。配合製品は早ければ今夏にも店頭に並ぶ。 欧州では1999年から使われている。日本でも、韓国でも、オーストラリアでもとっくに流通している。なぜアメリカだけ四半世紀も遅れたのか。 米国では日焼け止めがOTC医薬品として分類される。欧州やアジアでは化粧品だ。医薬品として審査するぶん安全性の基準は高いが、新しい成分を市場に出すまでの時間も桁違いに長い。ベモトリジノールを開発したCiba Specialty Chemicals(2008年にBASFが買収)がFDAに最初の申請を提出したのは2005年。その後、原料供給会社のDSM(現dsm-firmenich)が

AI訓練に使われた2100万曲、検索可能に

AI

AI訓練に使われた2100万曲、検索可能に

テイラー・スウィフト、ビートルズ、ニルヴァーナ。AI音楽生成サービスが訓練に使った楽曲のデータベースが、誰でも検索できる形で公開された。自分の曲が含まれているかどうか、アーティスト自身の手で確認できる。 「91年分の音楽」を飲み込んだデータセット The Atlanticのスタッフライター、アレックス・ライスナー(Alex Reisner)氏がAI開発コミュニティで流通する4つの巨大な音楽データセットを特定し、検索可能な形で公開した。同氏が主導する調査プロジェクト「AI Watchdog」の音楽版だ。 AI Watchdog - The AtlanticThe Atlantic’s ongoing investigation of the books, videos, and other media used by the world’s most powerful tech companies to train their AI