Fable 5とMythos 5の輸出規制が全面解除。18日ぶりにアクセス再開へ

Fable 5とMythos 5の輸出規制が全面解除。18日ぶりにアクセス再開へ
Anthropic

6月12日に止められたClaude Fable 5が、18日後に返ってきた。何が変わったのか、政府もAnthropicも明かしていない。


商務省が3通目の書簡

6月30日(現地時間)、Anthropicは商務省からClaude Fable 5とClaude Mythos 5の輸出規制を解除する通知を受けたと発表した。アクセスは翌7月1日から順次復旧する。

ハワード・ラトニック(Howard Lutnick)商務長官は共同創業者トム・ブラウン(Tom Brown)氏宛ての書簡で、FableとMythosの輸出・再輸出・国内移転にライセンスは不要になったと伝えた。6月12日の規制命令、6月26日のMythos 5部分解除に続く3通目の書簡で、今回は両モデルの制限がすべて撤廃された。

ラトニック長官は同日の投稿で、この2週間で商務省がAnthropicと協議を重ね、Fable 5を検証・承認したと説明している。

日付宛先対象措置
6月12日アモデイ氏両モデル輸出規制を発動
6月26日ブラウン氏Mythos 5のみ部分解除
6月30日ブラウン氏両モデル全面解除
商務省からAnthropicへの3通の書簡。宛先が2通目からブラウン氏に変わっている

アモデイ氏の不在

解除に至るまでの交渉を主導したのは、CEOのダリオ・アモデイ(Dario Amodei)氏ではなかった。

6月12日の規制命令以降、Anthropicは技術幹部と政策担当者をワシントンに送り込み、商務省やホワイトハウスとの協議を続けてきた。その前面に立ったのがブラウン氏と、広報・政策責任者のサラ・ヘック(Sarah Heck)氏だった。ラトニック長官は6月26日の書簡も、今回の書簡も、ブラウン氏に宛てた。

アモデイ氏がターゲットになった理由は複数ある。AI安全性をめぐる発言が政権と繰り返し衝突してきたこと、2024年の大統領選で民主党候補のカマラ・ハリス(Kamala Harris)氏を公然と支持したこと。政権にとってアモデイ氏は、技術者である前に政治的な対立者だった。

18日で何が変わったのか

6月12日の命令は、Fable 5のセーフガードを迂回するジェイルブレイク手法を安全保障上の脅威と認定したことが根拠だった。Anthropicはこれに反論し、同じ手法は競合のGPT-5.5でも再現可能であり、ジェイルブレイクで取得できる情報にMythos固有の優位性はないと主張していた。

18日が過ぎ、規制は解除された。Anthropicが技術的に何を変えたのか、政策面でどのような譲歩をしたのか、公式の説明はない。ラトニック長官の書簡は「Anthropicと協力してリスクに対処した」と述べるだけで、具体的な変更には触れていない。そもそも規制の発端だった外国籍ユーザーのアクセス制御をどう解決したのかも分かっていない。

規制が正しかったなら、解除の根拠を示す必要がある。規制が過剰だったなら、18日間の全面停止は何だったのか。どちらの答えも出ていない。

規制が残したもの

この18日間で変わったのは、モデルではなく周囲の状況のほうだった。

中国のオープンソースモデルはClaude Opus 4.8に匹敵する水準に迫っている。Anthropicのフロンティアモデルが不在だった18日間は、そのまま中国勢の追い上げ期間になった。テック企業や投資家からは、米国政府が自国のAI産業を自ら弱体化させているとの批判が相次いだ。

OpenAIも同時期に影響を受けている。GPT-5.6の最上位モデルSolは、政府の要請により約20の承認済みパートナーのみへの限定公開となった。フロンティアAIモデルの公開に政府の承認を求める事実上の制度が、法的な枠組みを持たないまま動き始めている。

8月には、トランプ大統領が6月初旬に署名した大統領令の期限が到来する。フロンティアモデルのセキュリティリスク評価基準を定める内容だが、今回のFable 5をめぐる一連の経緯は、その基準がまだ存在しない段階で輸出管理権限が行使された事実を残した。ルールの前に権限が動く。その前例が、今後のすべてのフロンティアモデル開発者に影響する。

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