GoogleがTenor APIを停止。Discord・X・WhatsAppのGIFが一斉に変わる
GIFを検索してメッセージに貼る。その仕組みが、2026年6月30日を境に変わった。
Googleが自社のGIF検索プラットフォームTenorのAPIを停止した。Tenor自体は消えない。ウェブサイトもアプリもGboardも、Google自身のサービスではこれまで通り動く。閉じたのはAPIだけだ。外部の開発者やアプリがTenorのGIFライブラリに接続するための経路、それが断たれた。
API停止の影響は、Discord、X、WhatsApp、Bluesky、Signal、Telegramといった主要プラットフォームのGIF機能に及んでいる。
8年前にGoogleが買ったもの
Tenorは2014年にサンフランシスコで設立されたGIF検索プラットフォームで、月間120億件以上のGIF検索を処理していた。2017年時点で利用者は3億人を超えており、Googleは2018年3月にTenorを買収した。Google画像検索やGboardにGIF検索を統合するのが買収の狙いだった。
買収後もTenorは独立ブランドとして運営され、APIを通じてDiscordやWhatsApp、Xといった外部アプリにGIFライブラリを提供し続けた。APIは無料で開放されており、無数のアプリやボットがTenorのGIF検索に依存する状態が長く続いていた。
1月にAPIの新規登録を止め、6月末で全停止
Googleは2026年1月13日、Tenor APIの廃止を告知した。同日をもって新規APIキーの発行と新規連携が停止され、既存のAPIキーは6月30日まで有効とされた。
コア製品の強化にリソースを集中するための判断です(Googleサポートページ)
6月30日以降、移行を終えていないアプリからのAPIリクエストはすべてエラーを返す。告知から半年。猶予は十分に見えたが、期限は来た。
各プラットフォームの対応
影響の規模に対して、混乱は小さかった。多くのプラットフォームが停止期限より前に移行を完了していた。
Discordは2026年1月にTenorからの移行テストを開始し、GIPHYとKlipyの2社をA/Bテストで比較した。現在はKlipyへの移行が完了しており、GIF検索窓の表示も「Search Klipy」に変わっている。お気に入りに保存済みのGIFはDiscordのサーバーに保持されているため、移行の影響を受けない。
WhatsAppもKlipyへの移行を選んだ。もともとTenorとGIPHYの2社体制だったが、Tenor分をKlipyに置き換える形で切り替わる。移行は自動で行われ、ユーザーが何かを操作する必要はない。送信したGIFに「Klipy」のラベルが表示されるようになったのが唯一の変化だ。
XはGIPHYに移行した。プロダクト責任者のニキータ・ビア(Nikita Bier)氏は6月20日、「自分たちの判断ではなく、Tenorが先週サービスを終了したため移行を余儀なくされた」と説明している。XではTenorとGIPHYの2つを併用していたが、Tenorの停止でGIPHY単独体制になった。「最近使用したGIF」の履歴がリセットされ、検索で見つかるGIFの数が減ったとの報告がユーザーから相次いでいる。
Signalはデスクトップ版でTenorを使っていたが、モバイル版と統一する形でGIPHYに切り替えた。
Telegramは対応が遅れている。内蔵の@gifボットがTenorに依存しており、代替プロバイダーへの移行は発表されていない。
| プラットフォーム | 移行先 | ユーザーへの変化 |
|---|---|---|
| Discord | Klipy | 検索窓が「Search Klipy」に変更 |
| Klipy | GIFに「Klipy」ラベルが自動表示 | |
| X | GIPHY | GIF履歴リセット、検索結果の減少あり |
| Signal | GIPHY | モバイル版と統一。変化は軽微 |
| Telegram | 未発表 | @gifボットがTenorに依存中 |
Tenorを作った人が、Tenorの代わりを作っている
移行先として急浮上したKlipyの共同創業者フランク・ナワビ(Frank Nawabi)氏は、Tenorの共同創業者でもある。Tenorを作り、Googleに売り、Googleが閉じた。その後継を、今度は自分の新会社で手がけている。
KlipyのAPI構造はTenorとほぼ同一で、開発者はベースURLを差し替えるだけで移行できるよう設計されている。2026年6月にはGoogleのAI Futures Fundを含む投資家から380万ドルの資金を調達した。WhatsAppとDiscordという大口が移行先に選んだことで、GIF配信市場でのポジションは一気に固まった。
一方のGIPHYは、Metaが2020年に4億ドルで買収した後、英国の競争・市場庁(CMA)から売却を命じられ、2023年にShutterstockへ5300万ドルで売却された経緯がある。買収額の87%を失う結果となったが、GIPHY自体は運営を続けており、Tenor APIの停止後はXやSignalがGIPHYに移行した。
GIF配信、相次ぐ撤退と移管
GIF配信を支えるプラットフォームは、ここ3年で次々に形を変えた。
2023年にはSnapchat傘下のGfycatが閉鎖され、蓄積されたGIFライブラリが消失した。同年、MetaがGIPHYをShutterstockに売却。そして今回のTenor API停止。GIF検索を支える主要3社すべてが、短期間でオーナーシップの変更か閉鎖を経験している。
ユーザーの目に見えるのは、メッセージアプリのGIF検索窓に入力して、結果が出てくるかどうかだけだ。だがその検索窓の裏にあるAPIは、提供企業の方針が変われば止まる。Googleがフォーカスを変えれば、数千のアプリのGIF機能が壊れる。GIPHYもオーナーが変わった。無料で広く使われたAPIほど、その停止は広範囲に響く。
Tenor APIの停止は、GIF検索がなくなるという話ではない。移行先はすでにある。DiscordもWhatsAppもXも動いた。だが今回と同じことは、GIPHYでもKlipyでも起こりうる。無料APIの継続を決めるのは、利用者ではなく提供者だ。
参照元:FAQ Articles
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