Meta、SNS依存訴訟3000件超の棄却に失敗。水曜に1.4兆ドル裁判も開廷

SNS企業が30年間頼ってきた法的防壁が、裁判を止める「盾」から、裁判の中で使う「防御手段の一つ」に格下げされた。今週水曜には、Metaの時価総額に匹敵する賠償請求の裁判が始まる。

Meta、SNS依存訴訟3000件超の棄却に失敗。水曜に1.4兆ドル裁判も開廷

SNS企業が30年間頼ってきた法的防壁が、裁判を止める「盾」から、裁判の中で使う「防御手段の一つ」に格下げされた。今週水曜には、Metaの時価総額に匹敵する賠償請求の裁判が始まる。


「免責」から「防御」へ

米第9巡回区控訴裁判所は現地時間8月10日、Meta、バイトダンスのTikTok、AlphabetのYouTube、Snap、Robloxなどが起こした控訴を棄却した。各社は、通信品位法第230条(Section 230)を根拠に連邦裁判所に係属する3,000件超の訴訟を一括して退けようとしていた

第230条は1996年に成立し、プラットフォーム上のユーザー投稿に対する法的責任からサービス提供者を保護してきた。各社の主張はこうだ。依存性の警告を怠ったという訴えも、この条項で免責される。だから訴訟の前に控訴で決着させるべきだ、と。

第9巡回区控訴裁の判断は明快だった。第230条が与えるのは責任に対する「防御」であって、訴訟そのものからの「免責」じゃない。つまり、裁判が終わる前にこの条項を使って訴訟を潰すことはできない。控訴は時期尚早だ、と退けた。

意見書を書いたジャクリーン・グエン(Jacqueline Nguyen)判事の発言が報じられている。「議会が訴訟からの免責を与えたいとき、議会はそう書く方法を知っている」

何が変わるのか

この判断が意味するのは、第230条の中身が否定されたわけじゃないということだ。裁判の途中で「この盾があるから裁判自体をやめろ」とは言えない、という手続き上の判断にすぎない。

だが実質的な影響は大きい。各社は今後、3,000件超の個別訴訟で証拠開示や審理を経なければならない。法廷で、自社のプラットフォーム設計が若者にどう作用したかを具体的に問われる。それを避ける手段が、少なくとも裁判が終わるまでは消えた。


水曜日にはもう一つの裁判が始まる

同じ日、第9巡回区控訴裁はMetaの裁判延期申請も却下した。

カリフォルニア州オークランドの連邦裁判所で、現地時間8月12日に陪審員選定が始まる。冒頭陳述は8月18日、審理は約6週間の見通しで、判決は10月初旬とされる。29州の司法長官が連名でMetaを訴えた裁判で、カリフォルニア、コロラド、ケンタッキー、ニュージャージーの4州が代表して審理に臨む

訴えの内容は、InstagramとFacebookが子どものデータを違法に収集し、依存性のある設計で若者を引き止め、その安全性について消費者を欺いたというもの。連邦児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)違反も含まれる。

州側が求める制裁金は最大1.4兆ドル(約224兆円)。Metaの時価総額は直近の取引日で1.5兆ドルを超えている。会社の時価総額とほぼ同額の請求だ。この数字は、各州の消費者保護法が定める違反1件あたりの罰金額に、影響を受けた未成年ユーザーの推定数を掛け合わせた法定算出に基づく。

マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)氏が証人として出廷する予定だ。2月のロサンゼルスでの裁判でも証言台に立っている。


半年で積み上がった9億4200万ドル

この裁判の前にも、Metaの法廷での敗北は続いている。

2026年3月、ニューメキシコ州の陪審がMetaに3億7500万ドルの制裁金を命じた。プラットフォームの安全性について消費者を欺いたと認定された。3月にはロサンゼルスでも、MetaとGoogleに対してSNS依存で精神的健康を害されたとする20歳の女性への600万ドルの賠償判決が出ている。

現地時間8月6日には、ニューメキシコ州のブライアン・ビードシャイド(Bryan Biedscheid)判事がMetaを「パブリック・ニューサンス」(公的迷惑行為)と認定し、追加で5億6700万ドルの拠出を命じた。SNS企業がこの法的概念で認定されたのは初めてだ。判事はMetaのプラットフォームを、有害物質を排出する工場にたとえた。

5億6700万ドルの大半にあたる4億2000万ドルは若者の精神保健治療に充てられる。残りは予防教育や啓発に配分される。ニューメキシコ州でのMetaの制裁金は合計9億4200万ドル(約1,500億円)に達した。

2026年前半のMeta訴訟タイムライン
2026年3月
ニューメキシコ州、3億7500万ドル判決
消費者保護法違反で陪審が制裁金を命令。州司法長官による初の勝訴
2026年3月
ロサンゼルス、SNS依存で600万ドル判決
MetaとGoogleの設計上の過失を陪審が認定。依存訴訟初の判決
8月6日
SNS企業初のパブリック・ニューサンス認定
5億6700万ドルの是正基金を命令。制裁金合計は9億4200万ドルに
8月10日
控訴裁、Section 230での一括棄却を却下
「免責じゃなく防御手段」と判断。3000件超の訴訟が個別に進行へ
8月12日
29州司法長官の裁判、陪審員選定を開始
最大1.4兆ドルの制裁金を請求。審理は約6週間の見通し
※日付は現地時間。3月の2件はいずれも2026年3月下旬

Metaは控訴の意向を示している。


原告が3,000件、被告の逃げ道が1つ減った

訴訟の全体像はこうだ。連邦裁判所にはMDL(多地区訴訟)として3,137件が係属している(2026年8月時点)。州裁判所にも約3,300件がカリフォルニア州で集約されている。原告は州政府、自治体、学区、個人と多岐にわたる。

原告側の戦略は一貫している。ユーザーが投稿したコンテンツの問題じゃなく、プラットフォームの設計そのものを問う。無限スクロール、自動再生、通知、いいね表示、おすすめアルゴリズム。これらの機能は、ユーザーの投稿とは独立して存在する。だからSection 230の守備範囲の外だ、というのが原告の主張であり、これまで複数の裁判所がその論理を受け入れてきた。

Metaは「未成年者の保護に取り組んでおり、事実を歪めた主張に対しては引き続き防御する」としている。TikTokはコメントの要請に応じていない。

今、Metaの前には3つの時計が動いている。水曜のオークランド裁判、ニューメキシコ州の控訴手続き、そして3,000件超の個別訴訟。第230条という最も太い防壁で訴訟群を一掃する戦略は失敗に終わった。残る防御は、法廷の中で一件ずつ争うことだ。

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