OpenAI再編、ブロックマンが製品統括に正式就任

OpenAI再編、ブロックマンが製品統括に正式就任
OpenAI

OpenAIが組織再編を発表した。共同創業者で社長のグレッグ・ブロックマンが製品戦略の責任者に正式就任し、ChatGPT・Codex・開発者APIが1つのコア製品チームに統合される。


暫定から正式へ、4月の空席が埋まる

5月15日(米国時間)、OpenAIは社員向けに組織再編を通知した。共同創業者で社長のグレッグ・ブロックマンが、これまでのインフラ統括に加えて製品戦略を正式に率いる。WIREDが内部情報として伝えた。

ブロックマンは4月から製品部門を暫定的に見ていた。AGI展開部門CEOのフィジ・シモが、持病であるPOTS(体位性頻脈症候群)の治療のため療養に入ったためだ。シモは2025年にインスタカートCEOからOpenAIに移籍し、約半年で同社のアプリケーション事業全体を背負う立場にあった。

POTSは自律神経系の異常で、立位時に心拍数が急上昇する慢性疾患。シモ本人が4月の社内メモで「これまで治療を後回しにしてきたが、限界が来た」と説明している。

療養はいまも続いており、ブロックマンの暫定統括が「正式」へ書き換えられた形になる。

ChatGPTとCodexを「1つのコア製品」へ

再編の核心は、製品ラインの統合にある。ChatGPT、Codex、開発者APIがそれぞれ独立した組織で動いていた状態が解消され、1つのコア製品チームに束ねられる。

社員向けメモでブロックマンはこう書いている。「消費者と企業の両方で勝つために、エージェント時代へ向けて最大限の集中で実行するべく、製品の取り組みを統合する」。

組織図の動きから、その「集中先」が透けて見える。Codexのエンジニアリング責任者だったティボー・ソティオが、コア製品とプラットフォームの責任者に昇格する。ChatGPTを立ち上げから率いてきたニック・ターリーは法人向け製品へ、元インスタグラム幹部のアシュリー・アレクサンダーが消費者向け製品の責任者となる。

5月15日の組織再編で動いた4人
人物 これまで 新ポジション
グレッグ・
ブロックマン
社長
(インフラ統括)
製品戦略
正式責任者
ティボー・
ソティオ
Codex
エンジニアリング
責任者
コア製品と
プラットフォーム
責任者
ニック・
ターリー
ChatGPT
立ち上げから
統括
法人向け製品
責任者
アシュリー・
アレクサンダー
ヘルス製品
責任者
(元Instagram)
消費者向け製品
責任者
※ Codex出身者が組織の中核へ移り、ChatGPT立ち上げ世代は法人領域へ。フィジ・シモは療養中。

ChatGPTの週間アクティブ利用者は9億人超、Codexは週400万人。規模で10倍以上の差があるCodexの責任者が、コア製品全体を見るポジションへ動いた。

週間アクティブ利用者数の規模差
※ 縦軸は対数スケール。9億と400万の差を1本のグラフで見せるため、線形軸では弟側のCodexがほぼ見えなくなる。数値はOpenAI公式発表(2026年2月時点 ChatGPT 9億人 / 2026年5月時点 Codex 400万人)。

なぜCodexが中心に置かれるのか

直前の動きを見ると、組織再編は単独のイベントではない。5月14日、OpenAIはCodexをChatGPTのiOS/Androidアプリに統合した。ノートPCやMac mini上で稼働するCodexを、スマートフォンから監視・承認・操作できるようになる仕組みだ。

機能の本体はCodex本体ではなく、「承認と制御」の層にある。エンタープライズ向けには、管理者がモバイルからの遠隔操作を許可制で設定でき、CIパイプライン用の認証トークンも提供される。Codexのセッションはユーザーがチャットを閉じた後も稼働を続け、課金は別建てのクレジット制になる。

Codexの週間利用者は400万人、ChatGPTは9億人を超える。規模で200倍以上の差がある「兄弟製品」の弟側が、承認・認証・課金の設計を先に獲得している。

つまりCodexは、コードを書くツールから「エージェントを動かし続けるための制御面」へと姿を変えつつある。その制御面の上に消費者向けChatGPTも企業向けワークフローも乗せていく、というのが今回の組織図が描く絵だ。

4月以降、OpenAIでは大型の人事が連続している。Soraチームのビル・ピーブルズが退社し、企業向けアプリ部門の幹部も社員に離脱を伝えた。動画・科学研究・コンシューマーアシスタントといった「拡張領域」が独立した組織として残らず、Codex起点の構造に吸収されていく流れにある。

「DeployCo」と価格戦争の最中

組織再編は、エージェント市場の価格競争が激化する時期と重なる。Axiosが5月14日に報じたところでは、Anthropicが第三者エージェントハーネス向けの有償Claude利用枠を絞り始めた。一方でOpenAIは、新規法人顧客に対しサム・アルトマンが「Codexを2か月無料」とSNSで提示している。

5月11日にはOpenAI Deployment Company(通称DeployCo)の設立が発表された。40億ドル超の初期投資を伴う子会社で、顧客企業の社内システムとOpenAIモデルをつなぐ実装専門の組織だ。Reutersによれば、買収した英Tomoroから約150人のAIエンジニアと実装担当者を初日から抱える。

Codex本体、Codexの法人向けシート、そしてDeployCoの実装部隊。3つの層を製品戦略の責任者として束ねるのがブロックマンの新しい役割になる。

ブロックマンを巡るもう1つの戦線

ブロックマンには別の戦線もある。マスク対アルトマン訴訟だ。

ブロックマンは5月、オークランドの法廷で「自身のOpenAI株式の評価額は約300億ドルに達する」と証言したとBloombergが報じている。OpenAI側は同社の非営利部門が保有する株式の評価額を約2000億ドルと申告している。マスク側の弁護団はブロックマンとアルトマンの経営からの排除、そして営利法人化の取り消しを求めている。

社内で製品戦略・インフラ・DeployCoの3本柱を束ねる責任者が、社外で巨額の係争の当事者でもある。OpenAIの執行体制が分厚いとは言えない状況で、この1人に集中する負荷は決して軽くない。

シモが療養から戻った時点で、再びこの体制が組み替えられる可能性もある。だが、それまでの数か月でCodexを中心に組み直された製品構造は、シモが当初構想した「アプリケーション」という枠組みとは別物になっているはずだ。


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