ROG Equalizerは均等化しない、der8auerが検証

ROG Equalizerは均等化しない、der8auerが検証
ASUS

ASUSが約7,800円で売る特殊ケーブル「ROG Equalizer」は、内部の金属ブリッジを取り外したほうが電流分布が改善した。der8auerの分解検証が、製品の核心を否定した。


ASUSの「均等化」、検証で崩れる

ROG EqualizerはRTX 5090の電源ケーブルとして発表され、ASUSは「PSUからGPUへの電力を均等に配分する」と謳ってきた。1ケーブルあたりの定格を9.2Aから17Aへ、ほぼ倍に引き上げた数字も、この製品の売り文句の中心にある。価格はアメリカで49.99ドル、日本円にしておよそ7,800円。普通の12V-2×6ケーブルが半額以下で手に入る中で、その差額を正当化する根拠は「より均等な配分」と「より高い電流耐性」のはずだった。

ところが、ドイツ人エンジニアでThermal GrizzlyのCEOを務めるder8auerが、この主張の根拠を一つずつ崩していく動画を公開した。Thermal GrizzlyのWireView Pro IIで電流分布を測定した結果、ROG Equalizerは通常の12V-2×6ケーブルより電流の偏りが大きかったのだ。

ピン1からピン6までの電流は、最高10A・最低6Aと4Aもの差を示した。比較対象として測定された他社の標準ケーブルは、deleyConが0.7A、ASUS自身のThor付属ケーブルが0.6Aの差にとどまる。「均等化」を売りにした製品が、何の工夫もない普通のケーブルより不均等だったことになる。

抜き差しのたびに偏りのパターンが変わる。最大値のピンが毎回違う。設計が安定的に均等化を生んでいるのではなく、たまたまの結果として偏りが出ている。
12V-2×6ケーブル4製品のピン間電流差(最大-最小)
数値が小さいほど均等に電流が分配されている。
※ Thermal Grizzly WireView Pro IIによる測定値。RTX 5090で計測。

ブリッジの正体、開けて分かったこと

der8auerはコネクタを物理的に切断し、内部構造を露出させた。出てきたのは、コネクタ直前で12Vラインを全て一つにつなぎ、グランドラインを別の一つにつなぐ金属ブリッジだった。ASUSが「cable comb(ケーブルコーム)」と呼んでいた構造の正体は、能動的な電流制御回路ではなく、ただの導電板である。

なぜこれが問題になるのか。ブリッジで全ての12Vラインを短絡的に接続すると、電流は最も抵抗の低い経路に集中して流れる。各ケーブルや各コンタクトの抵抗には製造ばらつきがあるため、結果として一部のピンに電流が偏る。ASUSの意図は「均等化」だったのかもしれないが、物理的には逆効果になっていた。

der8auerは前回動画でこの構造の問題を理論的に予測していた。今回は、その予測が正しいことを実機で証明した形になる。設計思想そのものを否定する検証だった。


ブリッジを外した瞬間、分布が改善した

検証の核心は、ブリッジを除去したROG Equalizerを再びテストした場面にある。各ワイヤーを絶縁して同じ電源・同じGPUに接続し、WireView Pro IIで再測定。

結果は劇的だった。最低ピンが7.5A、最高ピンが約8.9A。4Aあった差は1.5Aに縮まった

ブリッジを取り除いたら配分が改善した。ASUSが「均等化のための機構」だと売っていた部品が、実際には不均等を生んでいた。
ROG Equalizer内部ブリッジの有無による電流分布の変化
同一ケーブルから金属ブリッジを除去した前後の比較。
※ ピン間の最大電流差。ブリッジ除去後は最低7.5A・最高8.9Aで分布が安定した。

これは単なる偶然ではない。ブリッジを除去したことで各ワイヤーが独立した電流経路になり、コンタクト抵抗のばらつきが個別に均されたのだ。「ケーブルが何もしないほうが、ASUSの工夫より結果が良い」という結論に、der8auerも当惑を隠せていない。


17Aの謎、根拠が見えない

ASUSは公式ページで「9.2A→17A」という数字を大きく掲げている。しかしder8auerの分析によれば、ROG Equalizerのワイヤー自体は他社製と大きく変わらない。違いはコネクタ内部のスプリング接点で、ASUSは従来の3点ディンプル設計から4点スプリング設計に変更し、接点幅を23%広げたと説明している。

走査電子顕微鏡で接点を観察したder8auerが指摘したのは、4点スプリング設計はそもそも新しいものではないという事実だった。Igor's Labは3年前に同じ設計を取り上げており、現在も両方の方式が市場に共存している。スプリング自体の幅も、ASUS版は他社版よりわずかに長く太いだけで、設計思想を変えるほどの差ではない。

それでも電流定格は9.2Aから17Aへ、ほぼ倍になっている。スプリングの小さな改良で1.85倍の定格を稼ぐ計算根拠が見えない。der8auerは率直にこう述べた。

接点が少し変わったくらいで、これだけ大きな数字の飛躍を正当化するのは難しい。これは無理がある。

金接点という、もう一つの罠

ASUSはGPU側のスプリング接点に金メッキを採用している。一見すると高級志向の良い選択に思えるが、der8auerはここに別の問題を見つけた。

GPU側のソケット内部のピンは、ほとんどのカードで錫メッキになっている。Asia Horseなど一部の高級ケーブルを除けば、業界標準は錫メッキだ。そして電気接点の世界には経験則がある。金は金とだけ、錫は錫とだけ接触させるべきだ、という原則だ。

走査電子顕微鏡とEDX分析で、der8auerはROG Equalizerのスプリング上に錫の粒子が付着している様子を撮影した。GPU側の錫メッキピンと擦れ合うことで、錫が金の表面に削り取られて残ったのだ。錫は金より柔らかく、そして急速に酸化する。酸化した錫がスプリング表面に堆積していくと、接触抵抗はむしろ上がっていく。

長期使用で接点が劣化していく構造を、ROG Equalizerは持っている可能性がある。短期テストでは現れない問題だ。


ASUSの言い分を考える

ここでASUSの論理も検討しておきたい。ASUSはROG Equalizerについて、「不均等が起きても焼損しない高い電流耐性こそが本質」という立場を取りうる。17Aという定格は均等化の精度ではなく安全マージンを表している、という解釈だ。実際、独自テストでは中央4本の+12Vワイヤーを意図的に切断するという極端な条件下で、温度を約73.4°Cに抑えたとしている。同条件で標準ケーブルは146°Cまで上昇したという。

ブリッジについても別の見方ができる。一部のケーブルが断線するなど大規模な故障が起きた際、ブリッジが残った導線へ電流を分散させ、特定ピンへの集中による焼損をPSU側とGPU側の両方で防ぐ可能性がある。der8auer自身も以前は「悪いというより、別のシナリオを与えているだけ」と評していた。

ただし、これらは「故障時の保険」としての価値であり、平常時の電流分布が標準ケーブルより悪いという測定結果を打ち消すものではない。ASUSが宣伝の前面に出している「均等化」というメッセージと、実測の挙動の間にある明らかなギャップは、消費者が知っておくべき情報だろう。

ASUS独自テスト:中央4本切断条件下の温度比較
項目 ROG Equalizer 標準12V-2×6
ケーブル温度 約73.4°C 約146°C
材料の安全限界 範囲内 大幅に超過
ピン定格(1本あたり) 17A 9.2A
※ ASUS公式が公表したテスト条件は「中央4本の+12Vワイヤーを切断・周囲温度55°C・600W連続負荷」。極端な異常条件下での比較である点に留意。出典:ASUS公式ROG Equalizer製品ページ。

50ドルを払う価値はあるか

検証結果を並べると、ROG Equalizerの売り文句のうち少なくとも一つ、「電流の均等化」は揺らいだ。「17A定格」の根拠も、コネクタの小さな改良では数字の飛躍を説明しきれない。「金メッキ接点」は錫メッキのGPUと組み合わさることで、長期的にはむしろリスクになりうる。

加えて副作用もある。ブリッジがコネクタ前を硬く長くしているため、ケーブルがGPU直近で曲げにくくなり、PCケースとの干渉リスクが上がる。

der8auerは動画の最後で、控えめながら明確に結論を述べた。普通の12V-2×6ケーブルが半額以下で手に入る現状で、ROG Equalizerに7,800円を払う合理的な理由は見当たらない、と。これは特定の競合製品を推す結論ではない。「同じ博打なら半額以下で十分だ」という冷静な計算である。


ブリッジを取り外したほうが電流分布が良くなる製品を、誰が高い金を払って買うだろうか。der8auerの分解検証は、ROG Equalizerが掲げた「均等化」という看板を、実機の挙動で塗り替えてしまった。


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