RTX 5090焼損、独メディア試験機が3例目

RTX 5090焼損、独メディア試験機が3例目
PCMasters

毎日使う試験機のMSI GeForce RTX 5090 Gaming Trio OCがついに12V-2x6ケーブルで焼損した。サーマルカメラは外側のピンだけが急上昇する瞬間を捉え、ロードバランシング不在の構造問題を改めて突きつけている。


試験機が「次の被害者」になった

ドイツのハードウェアメディアPCMasters.deが2026年5月6日、自社のメインテストシステムに組み込んでいたMSI GeForce RTX 5090 Gaming Trio OCで12V-2x6 PCIe 5.1ケーブルが焼損したと報告した。

このカードは毎日のように動かしている主力機材で、トラブルが起きたのはNVMe SSDの検証作業中だった。GPUに負荷がかかっていない状態でPCを何度か再起動していたところ、シャットダウンの瞬間に小さな煙が見えた。焦げたような匂いはなかったため、その場では原因がはっきりしない。次に起動したときに不調が表面化し、グラフィックスカードを外そうとして異変に気づく。普段なら少し力をかければ抜けるコネクタが、今回はソケットに溶着していて、まったく動かなかった。

ケーブルを引き抜いた跡には黒く変色したピンと、樹脂が溶けて他のケーブルと一体化した光沢のある部分が残っていた。

高負荷でゲームをしている最中ではなく、SSDの検証作業中という地味な日常で起きた点が今回の事例の不気味さだ。

電源側はもっとひどい状態だった

カード側よりも深刻だったのは、電源ユニット側のNZXT C1500に挿さっていたケーブルだった。12Vラインの被覆が片側でごっそり失われ、コネクタは複数箇所が溶けて変形している。引き抜くには力を入れる必要があった。

焦げ方が最も激しかったのはピン2と4で、これはGPU側でも同じだった。

PCMasters.deはこの観察を残している。6ピンのうち外側付近の2本に電流が集中した形跡で、過去にDer8auer氏やBuildzoid氏が指摘してきた「ロードバランシングを持たないRTX 5090ではピン間の電流分散ができず、接触の良いピンだけに負荷が集まる」という構造的弱点をなぞる結果だ。

サーマルカメラが捉えた「次の焼損」

幸いにもグラフィックスカード本体のコネクタ部分は溶けておらず、Windowsもカードを認識した。RGBも点灯し、見た目には動く状態を保っている。ただし、これで安心して使い続けられるわけではない。

PCMasters.deはElmor PMD2でカードを介して電力測定を行ったあと、ThermalMaster P3のサーマルカメラを使ってピンの発熱を撮影した。ここで決定的な現象が記録される。Furmarkで負荷をかけて1〜2分後、6本あるはずのピンのうち外側の1本だけが急速に高温化した。残りのピンは穏やかなままで、外側だけが赤く染まっていく。被覆温度はあっという間に約50℃に達し、テストは中止された。

6本のうち2本が既に焼け落ちている状態で残り4本に電流を分けることになり、その中でも外側のピンが最も多くの電流を引き受ける格好になっていると考えられる。

PCMasters.deはこう推定している。次の焼損は時間の問題で、グラフィックスカードはMSIへの修理依頼を前提にシステムから外された。


「press test system」での3例目

これは報道機関側の機材で確認された3例目の焼損事例にあたる。最初は2025年2月、スペインのYouTuberであるToro Tocho氏がRTX 5090 Founders Editionで電源側コネクタが焼ける様子を公開した。次が同年7月、DSOGamingの編集長John Papadopoulos氏がWuchang: Fallen Feathersをプレイ中に異臭で気づいたケース。そして今回のPCMasters.deだ。

メディア試験機は、一般ユーザーよりも頻繁にカードを抜き差しする。コネクタの摩耗が進みやすく、半挿しが起きやすい環境ではある。だが今回のPCMasters.deは「再起動を繰り返した」だけで、抜き差しを伴う操作中の事故ではない。日常運用の中で突然焼け落ちた点は、Toro Tocho氏のケースと同じく、ユーザーの取り扱いに帰せない要因が背景にあることを示している。

報道機関側で確認されたRTX 5090焼損3例
時期 公開元 GPU 被害の様子
2025年
2月
Toro Tocho
(YouTube)
RTX 5090
FE
電源側コネクタ
焼損
2025年
7月
DSOGaming RTX 5090
FE
ゲーム中に
両端ケーブル焼損
2026年
5月
PCMasters.de MSI Gaming
Trio OC
両端焼損、
被覆も溶失
※ FEはFounders Edition(NVIDIA純正カード)。ピン2と4の損傷集中、ロードバランシング不在の構造的弱点が3例に共通する。

NVIDIAは何をするのか

12V-2x6コネクタの問題は、RTX 4090時代から指摘され続けてきた。MSIが投入した黄色ティップ付きケーブル(挿し込み具合を視覚化するためにコネクタ先端を黄色に染めた対策品)でも焼損報告が出ており、対策の難しさを象徴している。MSIの工夫はユーザー側のミスを防ぐ方向には効いたが、ピン間の電流分散ができない構造そのものには触れていない。

リファレンス設計のRTX 50シリーズは、6本の12Vラインを単一のシャント抵抗にまとめて受けている。これにより、カード側からはピンごとの電流値が見えない。接触抵抗のばらつきがあれば、電流は抵抗の低いピンに勝手に集中し、そこが過熱する。Buildzoid氏が繰り返し説明してきた構造で、RTX 3090 Tiが同じ電力でも焼損しなかった理由でもある。

RTX 3090 TiはGPU側の配電を3系統のシャント抵抗に分けて受けていたため、ピンごとの電流をGPUがある程度認識でき、自前で負荷を均す余地があった。

PCMasters.deのサーマルカメラ映像は、この理屈をそのまま画面に映し出した形になる。外側のピンだけが赤く光り、残りは冷えたままの状態は、設計上の盲点を可視化する記録だ。

修理が通れば、PCMasters.deのMSI GeForce RTX 5090 Gaming Trio OCはまた稼働する。ただ、同じシステムで再び使い続けるかは必ずしも自明ではなく、コネクタとケーブルへの不信感は元には戻らない。後継のRTX 60世代が2028年まで来ないという観測も出ている中で、現役ハイエンドの発火リスクには、買った人が個別に向き合うしかない。


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