CXMT、設立当初からサムスン技術の窃取を計画。元技術者が法廷で証言
中国最大のDRAMメーカーに成長したCXMTは、設立時に研究所も設備も持たず、自前で技術を開発する意思もなかった。元サムスン技術者が韓国の法廷でそう証言した。
中国最大のDRAMメーカーに成長したCXMTは、設立時に研究所も設備も持たず、自前で技術を開発する意思もなかった。元サムスン技術者が韓国の法廷でそう証言した。
「研究所も設備もなかった」
中国最大のDRAMメーカー、長鑫存儲技術(CXMT)が設立当初からサムスン電子の製造技術を盗み出してDRAMを開発する計画だったと、韓国の法廷で証言が出た。
証言したのはチョン(Jeon)氏。サムスンで28年間勤務した後、2016年頃にCXMTへ移籍した元エンジニアだ。2026年4月、サムスンのDRAM製造プロセス(18nmクラスノード)に関する約600ステップのPRP(Process Recipe Plan、製造工程レシピ)情報を不正に取得した罪で懲役7年の判決を受けた。
チョン氏は現地時間8月11日、ソウル中央地方法院で開かれたサムスン技術流出事件の公判に証人として出廷し、こう述べたという。
CXMTのCEOとCTOは、当初からサムスン電子のPRP情報を盗んでDRAMを開発しようとした。CXMTには設立当時、研究所も設備もなく、自前の研究で技術を開発する考えはなかった
日和見的な引き抜きではなく、事業計画の根幹に技術窃取が組み込まれていたとチョン氏は証言している。
「レシピ」を盗んでも、料理はできない。だが時間は買える
PRPとは、DRAMの製造工程を構成する手順書だ。成膜やエッチングの条件、アニール、洗浄、イオン注入のパラメータ、温度、圧力、使用装置の種類まで、約600ステップにわたって記録されている。サムスンが5年間、約1兆6000億ウォン(約1800億円)を費やして開発した18nmクラスDRAM工程の核心情報だ。
レシピをコピーしただけで量産ラインが動くわけではない。互換性のある装置を揃え、条件を調整し、歩留まりを出す作業が残る。
しかしレシピがあれば、膨大な試行錯誤を省ける。通常、DRAMメーカーが1つのプロセスノードを開発して歩留まりを安定させるまでに3〜5年かかる。新規参入者がゼロから始めれば5年以上。レシピを手にしたCXMTは、その時間を買った。
検察はCXMTがサムスン出身の中核人材を組織的に引き抜いた後、不正取得した工程情報を中国の設備に合わせて修正・検証し、2023年に中国企業として初めて10nmクラスDRAMの量産に成功したと判断している。
10年で世界4位、そして中国最大の上場企業へ
CXMTの歩みを振り返ると、証言の重みが増す。
2016年に合肥市の国策プロジェクトとして設立。2019年に22nmクラスノードでDDR4 SDRAMの量産を開始し、2023年には18nmクラスプロセスでの量産に移行した。設立からわずか10年で、サムスン電子、SKハイニックス、マイクロンに次ぐ世界DRAM市場4位に駆け上がった。
カウンターポイント・リサーチによると、CXMTの世界DRAMシェアは2025年1〜3月期の3%から2026年1〜3月期には8%へ上昇した。
そして2026年7月27日、CXMTの親会社である長鑫科技集団は上海証券取引所の科創板(STAR Market)に上場。初値は公開価格8.66元に対して49.50元をつけ、初日の上昇率は466%に達した。調達額は約579億元(約86億ドル)で、2026年アジア最大のIPOとなった。時価総額は約3.3兆元(約4880億ドル)に膨らみ、中国工商銀行を抜いて中国本土の上場企業で首位に立っている。
バイトダンスとの70億ドル超のサーバーDRAM供給契約、テンセントとの30億ドル契約も締結済みだ。アップルもCXMT製DRAMの中国向け端末への採用を検討していると報じられている。
繰り返される技術流出
この急成長の起点が、サムスンから盗まれた技術だったと法廷で証言されている。
CXMTを巡る技術流出事件は今回が初めてではない。2025年12月、韓国検察は元サムスン社員ら10人を産業技術保護法違反で起訴した。うち5人は逮捕、5人は在宅起訴。検察は、CXMTがサムスン出身の副社長を研究部門長として2016年の設立直後に引き抜き、この人物を通じてサムスンの中核エンジニアを組織的に勧誘させたとしている。流出した技術はサムスンの10nmクラスDRAM工程で、サムスンの売上減少額から算定した被害額は2024年時点で約5兆ウォン(約5640億円)にのぼるという。
CXMTはさらにSKハイニックスの技術も、2020年に協力企業を通じて不正取得したと検察は認定している。
2026年1月には韓国最高裁(大法院)が、営業秘密の窃取・伝達・使用をそれぞれ独立した犯罪として起訴できるとの判断を示した。これにより、組織的な技術流出に対する刑事責任の範囲が広がった。
2016年 CXMT設立 合肥市の国策事業として設立。研究所も設備もなし 2019年 22nmクラスでDDR4量産開始 設立から3年で量産体制を構築 2023年 中国初の10nmクラスDRAM量産 盗まれた工程情報を中国設備に適合させた結果と検察は判断 2025年12月 元サムスン社員ら10人を起訴 被害額は約5兆ウォン(約5640億円) 2026年4月 元サムスン技術者に懲役7年の判決 韓国の技術流出事件で過去最長の量刑 2026年7月 上海で上場、初日466%上昇 時価総額約3.3兆元で中国最大の上場企業に 2026年8月 「設立当初から技術窃取を計画」と証言 元サムスン技術者が法廷で証言 |
法廷の証言がもたらすもの
チョン氏の証言は、韓国国内の刑事事件にとどまらず、国際的な法的対応の根拠になりうる。
韓国の法曹界では、この証言が判決で事実認定されれば、サムスンがCXMTの営業秘密侵害を主張する根拠として活用できると分析されている。CXMTが製造したDRAMやそれを搭載した製品が米国市場に流通する場合、サムスンが米国国際貿易委員会(ITC)に対して韓国の刑事裁判資料を提出し、排除命令を求める可能性がある。
先例はすでにある。サムスンディスプレイは中国BOEを相手に有機EL(OLED)の営業秘密侵害を主張してITCに提訴し、2025年にITCはBOEの侵害を認定、14年8か月間の米国輸入禁止を勧告した。
CXMTは米国防総省から「中国軍事企業」に指定されており、米国議員からはエンティティリスト(禁輸リスト)への追加を求める声も出ている。自社DRAMの売上の98%以上が汎用品で、AI向けに需要が急増するHBM(広帯域メモリ)への参入は始まったばかり。サムスンやSKハイニックスがHBMに生産能力を振り向けたことで空いた汎用DRAM市場を埋める形で急成長してきたが、その成長の起点に盗んだ技術があったという法廷証言は、CXMTの国際展開にとって重い足枷になりうる。