サムスン労組、34万ドル賞与を拒否 制度化求めスト寸前

サムスン労組、34万ドル賞与を拒否 制度化求めスト寸前
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賞与13%で合意目前のサムスン電子と労組が、最後の一点「単発か恒常か」で決裂しかけている。5月21日から18日間の全面ストへ突入すれば、最大1兆8400億円の損失試算もある。AI景気の果実をどう分けるかという問いが、世界のメモリ供給を揺さぶる。


13%で合意目前、それでも決裂しかけている理由

サムスン電子の半導体部門で、賞与をめぐる労使の最終局面が続いている。フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)の報道によれば、労使は営業利益の13%を賞与原資にあてる線で歩み寄っており、これは1人あたり約34万ドル(約5300万円)に相当する。金額の大きさだけ見れば、世界の製造業でもまず例のない水準だ。

それでも全国サムスン電子労働組合は、この提案を蹴った。

理由はパーセンテージではない。「一回限りの支給」か「毎年の制度として保証するか」という、契約の構造そのものにある。経営側は今回限りの一時金として渡したい。組合は文書化された恒常的な制度として残したい。表向きは数%の差だが、両者の隔たりはむしろここで広がっている。

サムスンの労使は、2026年の賃金交渉を昨年11月から3か月以上続けてきた。2月19日に決裂を宣言、3月3日には政府の調停も打ち切られた。労組は組合員投票で93.1%の賛成を得て争議権を確保し、5月21日から6月7日までの18日間の全面ストを通告している。

この対立は、AI需要が生んだ巨額の利益を、誰がどう分け前にするかという問いとほぼ同義だ。サムスンの半導体部門は2026年第1四半期に営業利益57兆2300億ウォン規模を稼ぎ出した。前年同期比で7倍を超える急増である。


SKハイニックスとの比較が、火に油を注いでいる

労組が単発ではなく恒常制度にこだわる背景には、ライバルとの目に見える格差がある。

SKハイニックスは昨年、賞与上限を撤廃したうえで、営業利益の10%を10年間にわたって従業員に分配することを労使協定で確定した。AIメモリ需要の爆発で同社の営業利益は急伸し、今年の1人あたり賞与は約47万7000ドル(約7500万円)、来年は90万ドル近くに達するとの見通しが立っている。

サムスン労組の試算では、同等水準の社員で比べたときのチップ部門社員の賞与は、SKハイニックスの3分の1にも届かない。コリアヘラルドの報道でチェ・スンホ労組委員長は、過去4か月で200人以上の社員がSKハイニックスに移籍したと明かしている。

「入社直後から、SKハイニックスへの転職準備のために勉強会を作る社員すらいる」。サムスンの半導体社員のひとりがコリアヘラルドに語った言葉は、数字の格差が現場の人材流出として顕在化している現実をそのまま映している。

サムスン提案とSKハイニックス確定値の比較
サムスン
(経営側提案)
SKハイニックス
(確定済み)
配分比率 営業利益の
13%
営業利益の
10%
1人あたり
賞与額
約34万ドル
(約5300万円)
約47万7000ドル
(約7500万円)
支給形態 一時金
(今年限り)
恒常制度
契約期間 10年間
来年見通し 未公開 90万ドル近く
※ サムスン側は2026年5月時点の労使交渉における経営側提案。SKハイニックスは労使協定で確定済みの内容。1ドル=約157円で換算。

18日間ストの損失額、最大117億ドルという幅

ストが現実になった場合の損失見積もりは、出所によって大きく振れる。

成均館大学のクォン・ソクジュン教授がフィナンシャル・タイムズに語ったところでは、18日間の直接損失は69億ドルから117億ドルの範囲。日本円に換算すると、おおむね1兆800億円〜1兆8400億円のレンジだ。間接損失を含めれば、さらに上振れする可能性がある。

コリアヘラルドが報じた業界推計では5兆〜10兆ウォン、つまり約5400億円〜1兆700億円。最大117億ドルという数字は、これらの試算群の上限値を取った形だ。

数字の幅が大きいのには理由がある。サムスンの半導体ファブは約90%が自動化されており、人手の介入を前提としない設計だからだ。クライアントもこの構造を理解している。

ただし、自動化が損失を完全に防ぐわけではない。

4月単発ストでのサムスン半導体生産への影響
サムスン半導体ファブの自動化率 約90%
メモリファブ 生産効率 −18.4%
ファウンドリライン 生産効率 −58.1%
※ 4月23日に平沢キャンパスで実施された約4万人参加の単発集会における当日のシフトでの生産効率低下。労組発表値。棒の長さは項目内の最大値(58.1%)を100%として相対比較。
4月23日に実施された平沢キャンパスでの単発の集会では、参加者は約4万人。当日のメモリファブの生産効率は18.4%低下し、ファウンドリラインに至っては58.1%もの落ち込みを記録した。労組の発表数字とはいえ、自動化されているはずの工場でこの規模の影響が出ている事実は重い。

KB証券は、ストが世界のメモリチップ供給の約3%を毀損する可能性があると見積もっている。3%という数字は控えめに見えるが、AIデータセンター向けHBM4の供給がすでに逼迫している現状では、許容範囲を超えうる規模だ。

顧客は逃げない、しかし将来の契約は揺らぐ

ストが起きてもNVIDIAやAMDがすぐにTSMCやSKハイニックスに乗り換える、というシナリオは現実的ではない。長期供給契約が結ばれており、認定プロセスにも巨額の時間とコストがかかる。在庫バッファも一定程度ある。

産業研究院のキム・ヤンペン研究員はコリアヘラルドの取材に対し、「短期的には既存契約と認定プロセスの存在で、顧客が供給先を一気に切り替えるのは難しい」と語っている。

ただし「短期的には」という条件付きだ。

ソウル市立大学のソン・ホンジェ経済学教授の指摘はもっと厳しい。半導体産業ではプロセス検証に莫大な時間と資金がかかるため、いったん離れた顧客を取り戻すのは極めて難しい。サムスンは今この瞬間の出荷を守るだけでなく、3年後5年後の信頼を売っている。

シティグループは労組の要求を反映させた場合の影響を試算しており、サムスンの2026年・2027年の営業利益見通しは10〜11%程度下振れする計算になる。

政府まで動き出した、その重さ

5月8日、雇用労働部京畿支庁長のキム・ドヒョンが労組委員長と会談し、調停打ち切り後の追加協議に入ることで合意した。協議は5月12日と13日に予定されている。

サムスン電子の株主団体は、ストが核心資産に損害を与えた場合に組合員に対する法的措置を取る可能性をすでに警告している。労使対立はもはや一企業の枠を超えて、韓国経済全体の問題として扱われ始めた。

李在明(イ・ジェミョン)大統領も4月30日の首席秘書官会議で発言した。特定の労組を名指しこそしないが、「組織化された一部の労働者が自分たちだけを守るため過剰または不公正な要求を行えば、当該労組だけでなく他の労働者にも害が及ぶ」と語ったのだ。誰に向けた発言か、韓国国内で誤解した者はいない。

サムスン経営陣は今年、研究開発と設備投資に110兆ウォンを投じる計画だ。日本円で約11兆7000億円。AI半導体での主導権を維持するには、この投資水準を緩めるわけにはいかない。労組への配分を増やせば、その原資に手をつけることになる。


残された問い

13%で合意目前という事実は、歩み寄りが完全に途絶えたわけではないことを示している。次週の追加協議で「年次保証」の文言を経営陣がどこまで飲めるかが、5月21日のストを止める最後のレバーになる。

ただ、この対立をどちらかの「勝ち負け」で語るのは難しい。労組が15%の恒常制度を勝ち取れば、利益部門と非利益部門の格差を制度として固定することになり、社内の別の対立を呼ぶ。経営陣が一時金で押し切れば、SKハイニックスとの人材獲得競争でさらに不利な立場に置かれる。

AIブームが生んだ収益を誰がどう分けるか。この問いに、どの会社もまだ正解を見つけられずにいる。サムスンの今回のストは、その難しさを世界で最初に可視化した事例として、半導体業界全体の参照点になりそうだ。

メモリ価格は11か月連続で上昇している。この需給で18日間のストが現実になれば、その影響はソウルの会議室の外まで確実に広がる。


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