FSR 4.1、7月にRDNA 3へ正式対応

旧世代GPUへの沈黙を続けてきたAMDが、ようやく重い腰を上げた。FSR 4.1はこの7月、RDNA 3に正式対応する。RDNA 2は2027年初頭。

FSR 4.1、7月にRDNA 3へ正式対応
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旧世代GPUへの沈黙を続けてきたAMDが、ようやく重い腰を上げた。FSR 4.1はこの7月、RDNA 3に正式対応する。RDNA 2は2027年初頭。


ジャック・フイン氏が投稿一本で沈黙を破った

ジャック・フイン(Jack Huynh)氏が自身のXに動画付きの投稿を上げたのは、日本時間5月14日の午後9時38分。AMDのコンピューティング&グラフィックス担当シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーが、FSR 4.1をRDNA 3に対応させると、文章ではなく自分の口で宣言した。

As a lifelong gamer, I spend a lot of time thinking about how to push gaming experiences forward across CPUs, GPUs, software, and games.(生粋のゲーマーとして、CPU・GPU・ソフトウェア・ゲームを通じてプレイ体験をどう前に進めるかを考え続けてきた)

RDNA 3、つまりRadeon RX 7000シリーズのオーナーは、この7月にFSR 4.1を使える。300本以上のゲームが初日から対応する、と本人が動画で語った。RDNA 2、つまりRadeon RX 6000シリーズのオーナーは、2027年初頭まで待たされる。具体的な月までは明かされなかった。

公式発表が「Xの動画一本」だったことに、すでに違和感を覚えた読者もいるはずだ。AMDのニュースルームに正式なプレスリリースは出ていない。Radeonの旧世代オーナーをこれだけ待たせた末の幕引きとしては、あまりに静かな登場だった。

FSR 4.1の対応ロードマップ
世代 対応時期 対応バージョン 主要シリーズ
RDNA 4 2026年3月 FSR 4 / 4.1
(FP8)
Radeon RX 9000
RDNA 3 2026年7月 FSR 4.1
(INT8)
Radeon RX 7000
RDNA 2 2027年初頭 FSR 4.1
(INT8)
Radeon RX 6000
※ RDNA 3向けは300本超のタイトルが初日対応。RDNA 2向けは具体的な月および互換リスト未公表。

半年以上、AMDは黙っていた

FSR 4自体は2025年3月、RDNA 4世代のRadeon RX 9000シリーズと同時にデビューした。当時のAMDの説明は明快で、FSR 4はFP8の機械学習モデルを前提とした設計であり、RDNA 4にしか積まれていない第2世代AIアクセラレータがなければ動かない、というものだった。

ところがその後、AMDの社内コードからINT8で動く派生版が「事故的に」流出した。コミュニティはこれを掴んで、OptiScalerなどのツール経由でRDNA 3、さらにはRDNA 2の一部カードでも動かしてみせた。動いた。画質も向上した。

それでもAMDは公式には何も言わなかった。半年経っても、Redstoneアップデートが出ても、互換表に旧世代GPU向けFSR 4の欄は空白のままだった。

RDNA 3(場合によってはRDNA 2も)は置き去りにされるべきではなかった。それだけだ。

掲示板にはこうした書き込みが並び、「7900 XTXが最後のAMDカードになる」と離反を宣言するオーナーが現れるところまで来ていた。NVIDIAがDLSS 4.5を2018年発売のRTX 20シリーズにまで配ったタイミングだっただけに、対比が残酷だった。

「INT8専用版」という落としどころ

今回RDNA 3向けに用意されるFSR 4は、RX 7000シリーズに載る第1世代AIアクセラレータが扱えるINT8命令で組み直された版になる。2025年に流出したコードと同じ路線で、RDNA 4向けのFP8版とは別物だ。

この設計は、AMDが昨年まで繰り返してきた「FP8がないと動かない」という説明と、表面上は矛盾しない。ただし「動かないからやらない」ではなく「動かす版を別に作っていた」ことが今になって明かされた格好になる。沈黙の期間に水面下で開発は進んでいた、というのがフイン氏の言い分だ。

性能面の細かい数字は、現時点で何も出ていない。INT8エミュレーションでRDNA 3に乗せた非公式版は、画質が改善する代わりにフレームレートが10〜20%低下するというコミュニティの計測結果がある。公式版が同じ妥協を引き継ぐのか、そこを越える最適化が入るのかは、7月のドライバーが配られるまで分からない。

FP8版とINT8版の構造差
項目 FP8版 INT8版
対応GPU Radeon RX 9000
(RDNA 4)
RX 7000 / 6000
(RDNA 3 / 2)
使用AI命令 FP8
(浮動小数点)
INT8
(整数)
AIアクセラレータ 第2世代 第1世代
画質 基準品質 FP8版にやや劣る
フレームレート影響 3〜5%低下 10〜20%低下
※ 性能・画質はコミュニティ計測の非公式版に基づく。公式版での数値は7月のドライバー公開まで未確定。

RDNA 2オーナーには長い半年

RDNA 2のオーナーにとっては、朗報と微妙な落胆が同居している。FSR 4.1がいずれ来ることは確定したが、待たされる期間がさらに半年以上ある。Radeon RX 6000シリーズはデスクトップ・モバイル含めて広く普及した世代で、AMDが互換リストを最終的にどこまで広げるかは未公表だ。

2027年初頭という時期は、AMDの次世代GPUアーキテクチャ「UDNA」が立ち上がってくる頃合いと重なる。新世代と引き換えのお詫び配布、という見方もできるし、単純に開発リソースの優先順位がそうなっただけ、とも取れる。

And for our RDNA 2 players, we have something exciting coming in early 2027.(RDNA 2を使っているプレイヤー諸君にも、2027年初頭にエキサイティングなものを届ける)

確かなのは、半年前にOptiScalerに頼ってFP8をエミュレーションし、Linuxの上でなんとか動かしていた人たちが、ようやく公式ドライバーをインストールするだけで済む日が見えてきた、ということだ。

信頼の回復には時期が遅すぎたかもしれない

純粋に技術ニュースとして見れば、これは歓迎すべき発表だ。数百万台のRadeonが、買い替えなしでAI画質に乗れる。発売から3〜4年経ったカードに新機能を追加する動きは、ハードウェアメーカーとしてあるべき姿に近い。

ただ、タイミングが惜しい。RDNA 4が出てから1年以上、コミュニティがINT8の動作実証を済ませてから半年以上、AMDが公式に動くまでに時間がかかりすぎた。その間にRadeonから離れる決断を下したオーナーは、もう戻ってこない。

ジャック・フイン氏は投稿の最後で「次に何を見せるかは乞うご期待」と書いた。次に必要なのは新技術のお披露目ではなく、今回のような沈黙を二度と繰り返さない運営かもしれない。


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