Steam Controller30分で完売、転売300ドル。Valve在庫確保を急ぐ
99ドルの新型Steam Controllerが発売30分で姿を消した。決済サーバーは悲鳴をあげ、eBayでは早くも300ドルの値が付く。Valveは「予想以上に早く売り切れた」と表明したが、その「予想」は甘すぎたのではないか。
99ドルの新型Steam Controllerが発売30分で姿を消した。決済サーバーは悲鳴をあげ、eBayでは早くも300ドルの値が付く。Valveは「予想以上に早く売り切れた」と表明したが、その「予想」は甘すぎたのではないか。
30分で消えた在庫、決済サーバーも巻き添えに
Valveの新型Steam Controllerが、発売からわずか30分で完売した。米国西海岸時間の5月4日午前10時にSteamストアで販売開始、価格は99ドル。日本ではKOMODO STATION経由で5月5日午前2時から1万7800円(税込)で発売され、こちらも朝までに売り切れている。
問題は売り切れの速さだけではない。発売開始直後、Steamの決済システム自体が機能不全に陥った。買おうとしたユーザーは「トランザクションの初期化または更新でエラーが発生しました」というメッセージと格闘し、20分から40分間「続ける」ボタンを連打する羽目になった。障害情報サイトのDowndetectorには、発売時刻ぴったりに障害報告のスパイクが立ち上がっている。
商品ページの配送見積りも、3〜5営業日から6〜10営業日に静かに延びていった。ボタン連打の末にようやく決済が通った人ですら、配送の待ち時間が伸びていく場面を見せられたことになる。
Steam Controllerは想定よりも早く在庫がなくなり、欲しかった全員に届けられなかったことを残念に思っています。在庫の追加に取り組んでおり、見込み時期について近く更新します。
Valveが事態を受けて公式SNSに投じたコメントだ。「想定よりも早く」という表現に、この一件の核心が凝縮されている。
「在庫は十分用意した」から1ヶ月
奇妙なのは、Valveが発売前のインタビューで真逆のトーンで語っていたことだ。PC Gamerの取材に対し、コントローラー開発に携わったLawrence YangとSteve Cardinaliは、世界規模の在庫を確保できる自信を表明していた。
Yangは「世界中で発売に向けて十分な量の在庫を持てると考えている」と述べ、Cardinaliは「この製品については良いサプライを積み上げてきた」と語っていた。Cardinaliはさらに「需要が予想を大きく上回れば、工場で生産を増やすツマミを回せる」とも付け加えている。「ツマミ」という表現は当時、自信の表れとして受け取られていた。
ふたを開けてみれば、需要はその「予想」をあっさり超えた。eBayには発売直後から確定済みの注文が転売出品され、最高300ドル前後で買い手がついている。Valveが99ドルで売った商品が、その日のうちに3倍の価格で取引される光景は、ハードウェア発売イベントの定番風景になりつつある。
なぜ99ドルのコントローラーがここまで欲されたのか
冷静に考えると、これはコントローラーである。99ドルという価格は、ソニーのDualSense Edge(199.99ドル)のほぼ半額、Xbox Elite Series 2(179.99ドル)に対しても半値近い。手の届く価格設定にもかかわらず、これほどの争奪戦が起きた背景には複数の要因が絡む。
ひとつはValveというブランドの現在地だ。Steam Deckの成功が、Valveのハードウェア事業に対する信頼を根本から塗り替えた。2015年に発売された初代Steam Controllerが最終的に5ドルで投げ売りされた過去とは比較にならない期待値が、今のValve製品にはのっかっている。
初代Steam Controllerは2015年に発売されたものの普及には至らず、Valveは過剰在庫を抱えた末に1個5ドルで投げ売り処分した。2026年版は同じValveが作った後継機だが、市場の反応は対照的だった。
もうひとつは「待たされている」状況そのものだ。Valveは2025年11月にSteam Controller、Steam Machine、Steam Frameの3製品ファミリーを発表した。本来であれば3つが揃って2026年初頭に発売される予定だったが、AI需要に起因するメモリ価格高騰の影響で、Steam MachineとSteam Frameは発売時期も価格も未定のまま2026年内リリースに後退した。
メモリを内蔵しないコントローラーだけが先行発売される形になり、新しいValveハードウェアに飢えていたユーザーが一斉に押し寄せた。コントローラーへの欲望と、Steam Machineを掴めないフラストレーションが合流したのだ。
「ツマミ」をどこまで回せるのか
Valveは再入荷の方針を明確にしている。Cardinaliが事前に語っていた「ツマミ」発言は、在庫不足が起きた今こそ試される。
大量生産マシンは慣性の大きな機械です。最初のしばらくの様子を見て、需要が高く高止まりする場合は、後で緩和するためにできることがあります。
ただし、工場で生産を増やしても、コントローラーが店頭に届くまでには数週間から数ヶ月のタイムラグが発生する。Valve自身もそのタイムラグを認めており、「在庫切れが長期化しないよう余裕を持たせている」とは言うものの、現状はその余裕を超える需要に直面している。
ここで皮肉なのは、Valveが初代Steam Controllerでは過剰在庫を抱え、最終的に5ドルで処分した経験を持つことだ。2026年版は逆に、需要を読み違えて即完売。ハードウェアの需要予測は、Valveのような巨大企業にとっても依然として難題ということになる。
何が問われているのか
今回の騒ぎは、コントローラー1個の話ではない。Steam Machineが今後発売されるとき、何が起きるかの予告編として読むべきだろう。99ドルのコントローラーで決済サーバーが落ち、30分で完売したのなら、数十万円規模になりうるSteam Machineの発売日には何が起きるのか。
転売対策、購入制限、地域別配分。Valveがコントローラー再入荷までに何を学び、どう適用するかで、Steam Machine発売の成否がかなり決まると思う。Xには「過去のSteam購入履歴がある古参アカウントを優先しろ」「Steam Deckのときのように予約制にしろ」という声が並んでいる。Valveは沈黙でこの声に応えるか、それとも「ツマミ」の正体を見せるか。
需要を読み違えて在庫を捌ききれない大手メーカーの姿は、AppleやNVIDIAでも珍しくない。ただValveは少し様子が違う。Steamという販売プラットフォームを自社で握っているのに、その決済システムが落ちた。物流も自社管理に近い。これらすべてを抱えていてなお30分で在庫が消えた事実は、もはや「準備不足」では説明しきれない領域に入っている。
ハードウェアブランドとしてのValveは、Steam Deckの成功で得た信頼を、新製品の発売運営でどこまで保てるか。再入荷の30分が、Valveの次の試金石になる。
参照元
他参照
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