X、収益分配を廃止。新プログラムで「稼げるのはオリジナルだけ」へ

3年間続いた収益の仕組みが終わる。Xが次に報酬を払うのは、コンテンツを作った本人だけだ。

X、収益分配を廃止。新プログラムで「稼げるのはオリジナルだけ」へ
X

3年間続いた収益の仕組みが終わる。Xが次に報酬を払うのは、コンテンツを作った本人だけだ。


旧プログラムは9月7日で終わる

Xは8月7日、クリエイター向けの収益プログラム「Creator Revenue Sharing」(クリエイター収益分配)の新規登録を停止した。後継として「Original Content Rewards Program」(オリジナルコンテンツ報酬プログラム)を同日発表している

旧プログラムは9月7日に完全終了する。既存の参加者には8月14日と28日に通常通りの支払いが行われ、9月7日までの収益は9月11日前後に最終支払いとなる。9月8日以降、既存の参加者は新プログラムへの申請が可能になる。

2023年7月に始まったクリエイター収益分配は、累計で4500万ドル以上を15万人超のクリエイターに配った。単純計算では1人あたり約300ドル。額の大小はともかく、このプログラムが「誰でも投稿で稼げる」という期待を生み、同時にその仕組みを悪用するアカウントを大量に呼び込んだ。

何が変わったのか

新旧プログラムの違いは、参加条件の数字だけを見ると一見緩和に映る。

旧プログラムでは過去3ヶ月で500万のオーガニックインプレッションと2000人の認証済みフォロワーが必要だった。新プログラムではインプレッション条件が50万に引き下げられ、フォロワーも500人に戻った。

2024年12月にフォロワー条件を500から2000に引き上げた際、Xは「上位クリエイターに集中投資するため」と説明していた。今回また500に戻ったのは、方針の転換というより、プログラム自体の設計思想が変わったからだろう。

条件の数字が下がった代わりに、質のフィルタが厳しくなった。

インプレッションは「認証済みユーザーがホームタイムラインで投稿の50%以上を表示した場合」だけが対象になる。同一アカウントからの重複、有料・人工的なインプレッション、不正なインプレッションはすべて除外される。リプライのインプレッションも引き続き対象外だ。

新旧プログラム参加条件の比較
旧(収益分配)新(オリジナル報酬)
参加条件
インプレッション500万
(全体)
50万
(認証済みユーザーのみ)
フォロワー2000人500人
定額制加入Premium以上Premium以上
(Basic除外)
収益対象
報酬対象全投稿オリジナルのみ
対象指標認証済みユーザーの
エンゲージメント
認証済みユーザーの
ホームタイムライン
インプレッション
除外される行為
勧誘行為規定なし3回以上で除外
ノート付き投稿規定なし収益対象外
政治・政府団体規定なし参加不可
※旧プログラムの条件は2024年12月改定後の値。新プログラムの「インプレッション」は認証済みユーザーがホームタイムラインで投稿の50%以上を表示した場合のみ

最も大きな変更は、報酬の対象をオリジナルコンテンツに限定したことにある。

「何を付け加えたのか」を問う仕組み

新プログラムが定義するオリジナルコンテンツは、自分で書いた文章、自分で撮った写真や動画、自分で作ったミーム・グラフィック、独自の視点を加えた解説や分析だ。ここまでは常識的な話に聞こえる。

ここでXは「コメンタリーもオリジナルに含む」と明言している。既存の投稿やニュースに対する反応・分析・解説は、それが独自の視点や専門性を加えている限り、オリジナルコンテンツとして認められる。X自身が「コメンタリーはXの心臓部だ」と書いている。

一方で、以下は明確に除外される。他のアカウントからのコピー。他のプラットフォームからのダウンロードと再アップロード。軽微な加工(クロップ、フィルタ、速度変更、テキストオーバーレイなど)だけを施した転載。複数のソースを単純にまとめた集約。要するに、「自分が何を付け加えたか」が問われる。

Xは投稿前にこう考えろと求めている。「自分の貢献がなくても、このコンテンツに価値はあるか」。答えがイエスなら、もっと自分の視点や創造性を加えてから出せ、と。

アグリゲーター排除の4ヶ月

この新プログラムは突然出てきたものではない。

Xのプロダクト責任者ニキタ・ビアー氏は4月、すべてのアグリゲーターアカウント(他者のコンテンツを転載して拡散するアカウント)の報酬を60%カットし、次のサイクルでさらに20%削減すると発表した。「毎日100件の盗用リポストとクリックベイトでタイムラインを埋め尽くす行為が、本物のクリエイターの成長を潰している」という理由だった。

5月末にはフォロワー200万人近いアグリゲーターアカウント「Disclose.tv」が、小規模クリエイターの動画からウォーターマークを除去して再投稿していたとして収益化を停止された。ビアー氏は「400万フォロワーのアカウントが毎日600本の動画をダウンロード・再アップロードしている」と、大規模な転載の実態を明かしている。

7月1日にはビアー氏が実験結果を報告した。収益上位30アカウントをおすすめタイムラインから除外する実験を3%のユーザーに対して行ったところ、滞在時間とDAU(日次利用者数)がいずれも増加したという。最も稼いでいるアカウントがいない方が、タイムラインは居心地よくなる。

7月16日には約4000アカウントが一斉に収益プログラムから除外された。Grokを使った新しい検出システムが1サイクルで150万件の盗用投稿を特定し、100万ドル超がオリジナルクリエイターに再配分された。同時にエンゲージメント勧誘(「リプしたら全員フォローします」のような投稿)を3回以上行ったアカウントの自動除外も始まった。

さらに7月末には、チャットボットでリプライを自動化していた4万2000アカウントがプラットフォームから完全に削除された。

アグリゲーター排除から新プログラムへの経緯
4月
転載アカウントの報酬を60%カット
次のサイクルでさらに20%削減を予告
5月
大規模転載アカウントを個別停止
200万フォロワーのDisclose.tv等が対象
7月1日
収益上位30アカウントの除外実験
3%のユーザーで実施。滞在時間・DAUとも増加
7月16日
約4000アカウントを一斉除外
150万件の盗用投稿を検出。100万ドル超を再配分
7月末
自動返信ボット4万2000件を削除
リプライを自動化していたアカウントを全削除
8月7日
新プログラム発表・旧プログラム廃止
オリジナルコンテンツのみに報酬を支払う新制度へ移行
※日付はすべて2026年

段階的な締め付けの果てに、旧プログラム自体を畳んで新しい枠組みに置き換える。今回の発表は、4ヶ月かけた不正排除の到達点だ。

日本のクリエイターへの影響

日本は新プログラムの対象国リストに含まれている。Premium、Premium+、Premium Businessのいずれかに加入していれば申請できる(Premium Basicは対象外)。支払いはStripeまたはX Money Account(Xの送金口座)を通じて2週間ごとに処理され、最低支払額は30ドルだ。

日本のクリエイターが注意すべき変更がある。「エンゲージメント勧誘の禁止」だ。いいね・リプライ・ブックマーク・フォロー・リポストを繰り返しユーザーに求める行為が、プログラムからの除外対象になる。日本のX上では「相互フォロー」「リプ返し」「いいね回り」といった文化が根付いているが、これらが新ルールに抵触する可能性がある。

もうひとつ、コミュニティノートが付いた投稿は収益対象から外れる。誤情報や文脈の不足を指摘するコミュニティノートが機能として定着しつつある中で、これは事実上、コミュニティによる収益の可否判定が組み込まれたことを意味する。

仕組みは変わった。だが判定は難しい

Xが3年かけてたどり着いた答えは、「オリジナルでなければ稼がせない」だった。理念としては正しい。他人のコンテンツを転載して収益を得る行為は、プラットフォームの健全性を損なう。

だが、何がオリジナルで何がオリジナルでないかを判定するのは、理念を掲げるよりはるかに難しい。Grokが盗用投稿を検出する精度は上がっているが、「独自の視点を加えた解説」と「軽微なコメント付きの転載」の境界は、機械的に引けるものではない。

新プログラムの規約にはこう書かれている。「Xは、プログラムの健全性、安全性、または意図された目的を損なう行為に対し、上記に具体的に列挙されていない場合でも、資格の判定および措置を講じる権利を留保する」。つまり最終的な判断はXの裁量にある。

旧プログラムでは100万インプレッションあたり約8.5ドルが報告されていた。新プログラムの報酬水準は公表されていない。確かなのは、Xが「誰に金を払うか」の基準を書き換えたということだけだ。

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