AMD、FSRのマルチフレーム生成に本気で動き始めた

AMDのFSRにマルチフレーム生成(MFG)の足音がようやく聞こえてきた。ADLX SDKの最新版にフレーム生成比率を制御する新APIが追加され、NVIDIA・Intelに続く3社目としてAMDが動き始めた。

AMD、FSRのマルチフレーム生成に本気で動き始めた

AMDFSRにマルチフレーム生成(MFG)の足音がようやく聞こえてきた。ADLX SDKの最新版にフレーム生成比率を制御する新APIが追加され、NVIDIAIntelに続く3社目としてAMDが動き始めた。


ADLX SDK v1.5に現れた新API

発見されたのは IADLX3DFidelityFXFrameGenUpgradeRatioOption という名前のインターフェースだ。ADLXはAMDのドライバー制御ライブラリで、AdrenalinソフトウェアやサードパーティーツールがGPU設定にアクセスする際の窓口になる。

FSR 4 MFG imminent
by u/AthleteDependent926 in radeon

そこにフレーム生成の「比率オプション」が追加されたという事実は、単一比率しか持たない現状のFSR Frame Generationでは不要な要素だ。比率を選ばせる必要があるのは、2x・3x・4xと複数モードを持つMFG以外にない

リークはReddit r/Radeonのユーザー「AthleteDependent926」が投稿した。この人物は過去に流出したFSR 4ソースコードからRDNA 2/3向けのINT8版DLLをコンパイルした実績があり、直近ではFSR 4.1のDLLも先行テストして公開している。単なる野次馬ではなく、AMDグラフィックス関連の解析でコミュニティが一定の信頼を置く存在だ。

「ADLX SDK v1.5に4日前に追加された新機能だ。Adrenalin経由で、FSR 3.1 FGを使ったゲームならどれでもFG比率を変更できるようになりそうだ」

本人の推測が正しければ、これは単なる開発者向けSDKの拡張ではない。ドライバーレベルでの強制注入──つまりユーザーがAdrenalinの設定画面から、ゲーム側の実装に関係なくMFGをオンにできる仕組みに直結する話になる。


なぜ「遅すぎる」と言われるのか

NVIDIAは2025年1月末のRTX 50シリーズ投入時点で4倍モードのMFGを提供していた。2026年3月末にはDLSS 4.5で最大6倍まで引き上げ、モニターのリフレッシュレートに動的に合わせる方式まで加えた。Intelも2026年1月のドライバー更新でXeSS 3 MFGを解禁し、驚くべきことにArc A380のような初代Alchemist世代まで対応させている。iGPUにすら降りている。

一方のAMDは、2025年12月に「FSR Redstone」としてMLベースのFrame Generationを投入したものの、生成フレームは1枚のみ。Redstone自体はFSR 4の正式名称変更とAIベース化を伴う大きなアップデートだったが、フレーム生成という点では依然として「2xの壁」を越えられていない。

PC GamerがIntelの対応について書いた一文が、そのまま現状を総括している。AMDはフレーム生成において3社中3位、そして現時点で唯一MFGを持たない唯一のGPUベンダーだ。この状況が、今回のADLX SDK発見を単なる技術的進展以上のニュースにしている。

AMDは以前からMFGには慎重な姿勢を示してきた。AMD副社長のDavid McAfeeは2026年1月のGizmodoインタビューで「フレーム生成が行き過ぎていると感じる人もいる」と述べ、AMDは数年かけて慎重に構築していく方針を示していた。3社中1社だけがMFGを持たない状況は、GPU購入の判断材料として無視できなくなってきた。

FSR Diamondを待たない、という選択

興味深いのは、AMDが「FSR Diamond」という次世代技術を2026年3月のGDC 2026タイミングで発表済みだという点だ。Diamond(おそらくFSR 5)はRDNA 5世代とXbox次世代機Project Helix」向けに設計され、ML主導のマルチフレーム生成を含む次世代機能群を備えるとされる。ただしリーカーのKepler_L2は、このDiamondがRDNA 5専用になると主張しており、既存のRDNA 4ユーザーすら取り残される可能性が取り沙汰されている。Diamondの実機展開は早くとも2027年だ。

そこに今回のADLX APIが現れた。これはDiamondを待たず、現行のFSR Redstoneの延長線上でMFGを出してくることを示唆している。RDNA 4向けの2xから3x・4xへの段階的拡張が先に来て、その後にDiamondがRDNA 5向けのさらなる飛躍を担う、という展開になりそうだ。

もしそうなら、9070 XTを含むRDNA 4ユーザーにとっては朗報と言える。MFGに乗れないまま次世代ハードウェアまで待たされるという最悪のシナリオは、少なくとも回避される可能性が出てきた。


「数を増やす前にフレームペーシングを直せ」

ただ、Reddit側の反応は率直に言って冷めている。最も支持を集めているコメントの一つが「期待はしているが、リリース前にフレームペーシングの問題を解決してほしい」というものだった。

これは単なる難癖ではない。2025年12月にリリースされたFSR Redstone Frame Generationは、画質の向上こそ評価されたものの、フレームタイムのスパイク画面のティアリングが深刻な欠点として指摘されている。Digital FoundryHardware Unboxed、TechRadarと、主要なテクニカルレビュアーがほぼ揃ってこの問題を指摘した。ドライバーレベルでVSyncを有効化すれば緩和されるが、今度は入力遅延が跳ね上がる。フレーム生成の目的そのものを損なう回避策しかない状態だ。

NVIDIAのDLSS MFGは、RTX 50シリーズのハードウェア「Flip Metering」で均一なフレーム配信を保証する設計になっている。Intelはソフトウェアベースだが、最初から均一配信を織り込んでいる。AMDのFSR Redstoneにはこの層が薄い。

この土台の上に3xや4xを重ねても、スパイクが3倍4倍になるだけではないか──という疑念が、r/Radeonのコメント欄の根底にある。

もしRadeonがまともなら、MFG更新と同じドライバーリリースでフレームペーシングも直すはずだ。しかしRadeonはまともじゃない。

こう書き捨てられるほどの辛辣な反応が並ぶのは、AMDに対するある種の諦めが溜まっているからだ。

機能の数を競うフェーズで、AMDは品質の土台を固められていない。この順序の問題は、技術ロードマップ以上に本質的な課題として残る。


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