岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
OpenAI、GPT-5.6を限定公開。Mythos級のサイバー能力

OpenAI

OpenAI、GPT-5.6を限定公開。Mythos級のサイバー能力

OpenAIは6月26日、次世代モデルGPT-5.6シリーズを限定プレビューとして公開した。昨日報じた米政府の事前介入を受けた段階的リリースだ。ただしOpenAIは発表と同時に、政府の承認プロセスそのものに異議を唱えている。 Mythos Previewと並ぶ、トークン3分の1 GPT-5.6シリーズは、フラグシップのSol、日常業務向けのTerra、高速・低価格のLunaという3つのモデルで構成される。命名体系も変わり、世代番号(5.6)とティア名(Sol・Terra・Luna)を分離した。各ティアは独立したペースで更新される。 最も注目すべき数字はサイバーセキュリティだ。ExploitBenchは攻撃能力をクラッシュからコード実行まで16項目のフラグで段階的に測る。SolはここでAnthropicのMythos Previewに匹敵するスコアを記録した。しかも出力トークン数は約3分の1で済んでいる。 ExploitGymはUCバークレーの研究者がOpenAIや他のフロンティアラボと共同で構築したベンチマークだ。ここでもSol・Terra・Lunaの全モデルが、推論時間を増

Nova Lake、474Wの電力設計がマザーボードに降りてきた

Intel

Nova Lake、474Wの電力設計がマザーボードに降りてきた

Nova Lakeのデュアルコンピュートタイル構成に必要な電力が、ようやく設計図面の上で固まりつつある。リーク情報によれば、Intelは6月下旬にZ990マザーボードの電力設計ガイドラインを改訂し、マザーボードメーカーへ通達した。 PL2は474W、496Wではなかった 2月のリーク時点で出回っていたPL2の値は496Wだった。ほぼ500W。その数字が独り歩きし、Nova Lake=500Wという認識が広まった。だがJaykihn氏は当時から「古い値」「52コアのフラグシップ向けではなく42コアSKU向け」と否定していた。 Z990 power architecture will feature THREE 8 PIN CPU power plug ( against 2 now ). @intel revised power design delivery reserves 474 Watts for a nominal performance on dual computing SKU. Over 474

Windows 11、タスクバーのサイズ設定が専用項目に。Insiderで5ビルド同時配信

Windows

Windows 11、タスクバーのサイズ設定が専用項目に。Insiderで5ビルド同時配信

Windows 11のInsiderプレビューに5つのビルドが同時配信された。タスクバー設定の整理、再起動回数の削減、GIF検索のバックエンド刷新。変更は設定画面の細部にまで及んでいる。 タスクバーのサイズが専用項目に 現地時間6月26日、MicrosoftはWindows 11 Insiderプログラムに5つの新ビルドを一斉配信した。26H2系はExperimental(ビルド26300.8758)とベータ(ビルド26220.8754)の2本。26H1系はExperimental(ビルド28120.2374)とベータ(ビルド28020.2366)の2本。加えて、将来プラットフォーム向けのビルド29617.1000。 目立つ変更はExperimentalチャネル(26H2)のタスクバーだ。5月に実装された位置変更・サイズ変更機能に続き、今回はタスクバー設定ページにサイズ専用の項目が追加された。従来、タスクバーのサイズは「タスクバーの動作」配下の小さなトグルで切り替える仕様だったが、位置やアイコン配置と並ぶ独立した設定項目になった。 5月のタスクバー位置変更では「設定が見つけに

「0.7nm」のどこにも0.7nmはない。プロセスノード命名の構造問題

半導体

「0.7nm」のどこにも0.7nmはない。プロセスノード命名の構造問題

IBMが6月25日に発表した0.7nm NanoStackチップに対し、インテルCTOとイーロン・マスク氏が命名規則を批判した。IBM自身もこの数字が実寸ではないと認めている。問題の根は深い。 発端はインテルCTOの指摘 IBMの0.7nm発表から一夜明けた現地時間6月26日、インテルのプシュカル・ラナデ(Pushkar Ranade)CTOがこの命名に異論を投げた。 ラナデ氏はIBMの発表を引用し、このチップ上に1nm未満のサイズで製造された構造は実質ゼロであり、この命名は意味をなさず誤解を招くと指摘した。かつてIBMでキャリアを開始し、半導体デバイス物理を専門とする技術者でもある。 True, we should switch to naming process nodes according to the number of atoms wide of the smallest feature size. That would be most accurate imo. — Elon Musk (@elonmusk) June

米国5月ゲーム市場。PS5とXboxが歴史的低迷、Switch 2だけが成長を支える

ゲーム市場

米国5月ゲーム市場。PS5とXboxが歴史的低迷、Switch 2だけが成長を支える

米国のゲーム市場調査会社サカーナ(Circana)のマット・ピスカテラ(Mat Piscatella)氏が、2026年5月の米国ゲーム市場月次データを公開した。PS5のハードウェア販売台数は2000年5月以来の最低水準に沈み、Xboxは5月として史上最低を記録した。値上げが続くゲーム機市場で、Switch 2だけが成長を牽引している。 売れた台数は減り、使った金額は増えた 5月の米国ゲーム市場全体の支出は前年同月比3%増。ハードウェア支出は2億4900万ドルで前年比38%増だった。 数字だけ見ると好調に映る。だがこの38%増は、ゲーム機が売れたからではない。ゲーム機が高くなったからだ。 ハードウェア1台あたりの平均購入価格は502ドル。1年前の440ドルから14%上昇した。PS5は平均672ドル(前年比33%増)、Xbox Seriesは平均524ドル(同22%増)。PS5 Proが899.99ドルで平均を押し上げている面はあるが、通常モデルも649.99ドルだ。発売時の499.99ドルから150ドル上がっている。 台数を見ると印象が変わる。PS5は販売台数が前年比58%減

OpenAI、IPOを2027年に延期か。1兆ドルの壁

AI

OpenAI、IPOを2027年に延期か。1兆ドルの壁

6月8日に機密S-1を提出したばかりのOpenAIが、IPOの延期を検討している。2026年内の上場を目指していた計画は、わずか2週間で揺らいだ。 SpaceXが見せた「その後」 きっかけはSpaceXだった。 6月12日にNASDAQへ上場したSpaceXは、850億ドル以上を調達し、時価総額は一時2兆ドルを超えた。史上最大のIPO。だが株価は上場後わずか4日で天井をつけ、6月16日の225.64ドルから急落。6月26日時点では153ドル付近で推移している。上場時の公開価格135ドルに対してかろうじてプラスを保っているだけだ。 この急落が、OpenAIのアドバイザーを動かした。 関係者3名の証言として報じられた内容によれば、アドバイザーはこの1週間でアルトマン(Sam Altman)氏に対し、現在の市場環境では個人投資家の買い意欲が集まりにくいと警告した。テック株全体が下落基調にあり、AI企業の評価額に対する疑念も広がっている。 「1兆ドル」に退路はない アドバイザーが示した選択肢は二つ。2027年まで待ち、市場が安定してから1兆ドルの評価額で上場する。あるいは評価

米政府がGPT-5.6のリリースに介入。顧客ごとの承認制へ

AI

米政府がGPT-5.6のリリースに介入。顧客ごとの承認制へ

OpenAIの次期モデルGPT-5.6のリリースが、米政府の要請で大きく変わった。一般公開ではなく、政府が承認した少数のパートナー企業だけがアクセスできる限定プレビューとして提供される。 AIモデルのリリースに政府が踏み込んだ日 6月25日、OpenAIのサム・アルトマン(Sam Altman)CEOが社内Q&Aで従業員に伝えた内容が報じられた。GPT-5.6は当初の一般公開を取りやめ、限定プレビューとしてリリースする。プレビュー期間中、政府が顧客ごとにアクセスを承認するという。 要請の出どころは、ホワイトハウスの国家サイバー長官室(ONCD)と科学技術政策局(OSTP)だ。米政府がAI企業に対し、モデルのリリース前に制限を求めたのはこれが初めてになる。 Anthropicに対する輸出規制指令とは性格が異なる。Fable 5とMythos 5の件では商務省が法的拘束力のある指令を出し、全ユーザーのアクセスが即座に停止された。今回は強制ではなく協議だ。政府の要請にOpenAIが応じている。 Mythos級のサイバー能力 なぜ政府はGPT-5.6に踏み込んだのか。 アルト

メモリ価格は「元に戻らない」。Lenovoが示した現実

メモリ

メモリ価格は「元に戻らない」。Lenovoが示した現実

DDR5 32GBキットが6万円を超える日本の店頭価格を見て、いつかは下がると思っている人がいるなら、その前提そのものが崩れ始めている。  2025年初頭の水準には「二度と戻らない」 ドイツ・ハンブルクで6月22日から26日まで開催されたスーパーコンピュータの国際会議ISC High Performance 2026で、Lenovoがメモリ市場の見通しを示すスライドを公開した。DRAMとNANDの価格推移を示したグラフの横には「64GB Memory Crystal Ball」と題された予測が並び、Lenovoの登壇者はこう述べた。2025年初頭の価格水準には「もう戻らない」。 会場では笑いが起きたという。登壇者自身が冗談めかした口調で語ったからだ。だが続けて示された内容は冗談ではなかった。 2030年以降に価格がある程度落ち着いたとしても、それは2024年から2025年初頭にかけての水準とは別の、もっと高い場所に形成される「新しい通常」だという。メーカー各社が増産に向けた設備投資を進めていることを織り込んだうえでの見通しだった。 増産しても、足りない Lenovoがこ

Windows 11のシャットダウンが遅い原因はバグだった

Windows11

Windows 11のシャットダウンが遅い原因はバグだった

シャットダウンを押してから画面が消えるまで、妙に長い。ハードウェアが古いのか、常駐ソフトが悪さをしているのか。心当たりを探して設定を見直した経験は、Windows 11ユーザーなら覚えがあるだろう。 その原因は、自分のPCにはなかった。Windows 11そのものにあった。 シャットダウン遅延の正体はBITSだった 現地時間6月23日にリリースされたWindows 11のプレビュー更新KB5095093(OSビルド26200.8737/26100.8737)で、Microsoftはシャットダウンが遅くなっていた問題を修正した。対象はWindows 11 24H2と25H2の両方だ。 犯人はBITS(バックグラウンド インテリジェント転送サービス)。Windows Updateのダウンロード、Microsoft Storeのアプリ更新など、多くのバックグラウンド転送を担うWindowsの基盤サービスだ。シャットダウン操作を受けてもBITSの停止処理に時間がかかり、「シャットダウンしています」の画面で数秒以上待たされる状態が続いていた。 KB5095093では、このBITSの停

映画業界がWayland移行に本腰を入れる

Linux

映画業界がWayland移行に本腰を入れる

VFXとアニメーションの制作現場は、長年Linux上のX11に依存してきた。そのX11が消える。RHEL 10からXorgサーバーは削除され、GNOMEもX11コードを完全に落とした。デスクトップLinuxの世界ではWaylandへの移行がほぼ完了したが、プロの映像制作現場では話が違う。ペンタブレット、カラーマネジメント、スタジオ間のリモートアクセス、数百人のアーティストが同時に使う商用・自社製ツール群。X11の上に積み上げてきたワークフロー全体が、Waylandで同じように動く保証はまだない。 業界横断のワーキンググループが発足 Academy Software Foundation(ASWF)と視覚効果協会(VES)の技術委員会は現地時間6月24日、「Wayland for Artists Working Group」の設立を発表した。VFX・アニメーション業界全体でWayland移行の課題を洗い出し、ロードマップを策定するための中立的な場だ。 ASWFは米映画芸術科学アカデミーとLinux Foundationが2018年に設立した組織で、OpenEXR、OpenVDB、

5800X3D復活初日、転売価格が倍に跳ぶ

CPU

5800X3D復活初日、転売価格が倍に跳ぶ

Ryzen 7 5800X3D 10th Anniversary Editionが北米で発売された。希望小売価格349ドルのCPUに、即日600ドル超の転売値がついている。 数分で消える在庫 北米では現地時間6月25日に販売が始まった。Newegg、Best Buy、B&H Photo、AMD公式ストアのいずれも、買える状態だったのは数分間だけだという。Micro Centerは店頭で単体販売をしているが、一部店舗ではマザーボードとメモリのバンドル購入が条件になっている。各ストアが時間差で在庫を出しているが、いずれも数分で売り切れた。 eBayにはすでに600ドルから750ドルの出品が並び、540ドルと585ドルで落札された記録もある。349ドルのCPUが、発売初日にその1.5倍以上で取引された。 日本では6月26日午前11時に販売が始まり、店頭価格は6万7800円。1ドル194円相当の計算になる。 限定品ではない、とAMDは言う 転売価格が跳ね上がった背景には「限定生産ではないか」という憶測がある。AMDはこれを否定し、継続的に生産する方針を明らかにしている。在庫が安

バンジーが半数を失った。Destiny終了後の大規模レイオフ

ゲーム

バンジーが半数を失った。Destiny終了後の大規模レイオフ

5月の報道で予告されていた大規模レイオフが、現実になった。Destiny 2最終アップデートから16日。バンジーに残ったのは、かつてのスタジオの半分だ。 400人超が対象、スタジオヘッドも辞任 SIEスタジオビジネスグループCEOのハーマン・ハルスト(Hermen Hulst)氏が現地時間6月25日、社内メールを公開した。バンジーの人員を削減し、Destinyチームの大部分とマラソンチームの一部が対象になると伝えている。バンジーの運営を支援していたSIEのスタッフにも削減が及ぶ。 公式発表は「相当な人数(significant number)」という表現に留まったが、レイオフ通知のコールに400人以上が参加していたと報じられている。直前まで約850人だったスタジオの、ほぼ半数だ。 同日、スタジオヘッドのジャスティン・トルーマン(Justin Truman)も辞任した。前任のピート・パーソンズ(Pete Parsons)の退任を受けて2025年8月に就任してから、1年足らずだった。後任にはVP of Operationsだったポリア・トルカン(Poria Torkan)が就いた

Micronが2030年まで高値を固定する契約。メモリは安くならない

メモリ

Micronが2030年まで高値を固定する契約。メモリは安くならない

Micronの2026年度第3四半期決算で、メモリ価格の行方が決まった。16件の長期契約が保証するのは、過去最高を超える利益率だ。 1000億ドルの「下限」 3月の前回決算で、Micronは初めてSCA(Strategic Customer Agreement、戦略的顧客契約)の存在を明かした。あのときは1件だった。 現地時間6月24日の第3四半期決算で、サンジェイ・メロートラ(Sanjay Mehrotra)CEOが発表した数は16件。大口4社、中堅3社を含むデータセンター、コンシューマー、自動車の各分野にまたがる。契約期間は2026年から2030年末までの5年間(自動車は3年間)。 中身はこうだ。顧客は一定量の購入を約束し、Micron側は一定量の供給を約束する。価格には下限と上限がある。下限は、Micronのグロスマージンが「過去のどの四半期ピークをも大幅に上回る」水準に設定されている。上限は、今後メモリ価格がさらに上昇しても顧客が守られるよう設計されている。 この16件の最低保証売上は約1000億ドル。対象となるボリュームはDRAMの20%、NANDの3分の1に相当

Steam Machineの「60fps」が消えた

ゲーミングPC

Steam Machineの「60fps」が消えた

Valveが18万9,980円のゲーミングPCを出荷する4日前に、製品ページからひとつの数字を消した。 消えた「60 FPS」、現れた「FSR 4.1」 Steam MachineのハードウェアページにあるCPU & GPUの項目が、現地時間6月25日に書き換えられた。 After backlash, Valve has changed their statement on 4K gaming at 60 FPS to 4K gaming on the Steam Machine page (before and after) 😭 pic.twitter.com/I8yH18f3QS — Steam Hardware Updates (@HardwareSteam) June 25, 2026