岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
トランプ氏「1週間前は脅威だった」。Anthropic問題の経緯と構造

AI

トランプ氏「1週間前は脅威だった」。Anthropic問題の経緯と構造

Anthropicを国家安全保障上の脅威とみなしていたか——その質問に、トランプ大統領は「今はそう思わない。でも1週間前なら、たぶん」と答えた。 「感じが良くて賢かった」 Axiosが現地時間6月19日に公開したインタビューでの発言だ。G7サミットで同席したダリオ・アモデイ(Dario Amodei)CEOの印象を「感じが良くて賢かった」と評し、関係の改善を示唆した。 1週間前、商務省がFable 5とMythos 5に対して輸出管理指令を発動し、あらゆる外国人のアクセスを遮断した。Anthropicは国籍によるスクリーニングが技術的に不可能だとして、全ユーザーへのアクセスを停止する措置に追い込まれた。米国政府がAIモデルそのものに輸出規制をかけたのは、これが初めてだった。 その発端は、Amazonだった。 130億ドルを投じた出資先を政府に「通報」した企業 トランプ大統領はインタビューの中で、Anthropicの問題を政府に持ち込んだのが「競合他社であり、一部を所有する企業」だったと明かした。Amazonのことだ。 経緯はこうだ。Amazonの研究者がFable 5

Windows 11 26H2、Insiderで初めてバージョン表記に登場

Windows

Windows 11 26H2、Insiderで初めてバージョン表記に登場

Experimentalチャンネルのバージョン表記が「version 26H2」に切り替わった。2月にWindows Update履歴の中にその名前がちらついてから約4か月、26H2がバージョン名として正式に表示された。同日公開されたIT Proブログでは、Microsoftが企業の管理者に対し26H2への準備を呼びかけている。 version 26H2、初めてwinverに表示 6月19日に配信されたExperimentalチャンネルのビルド26300.8697で、「設定」>「システム」>「バージョン情報」とwinverの表示が「version 26H2」に切り替わった。26H2としてバージョン表記に現れるのはこれが初めてで、リリースに向けた開発の段階が一つ進んだことを意味する。 前回ビルド26300.8687まではversion 25H2と表示されていた。26H2は25H2と同じサービシングブランチを共有しており、一般リリース時は小さなenablement package(eKB)で切り替わる。再起動は1回で済み、OSを丸ごと入れ替える従来の大型アップデートとは異なる。24

消えたRyzenのメモリ暗号化、AMDが7月に復活へ

CPU

消えたRyzenのメモリ暗号化、AMDが7月に復活へ

ファームウェア更新で黙って無効化されたメモリ暗号化機能TSME。コミュニティの追及を受けたAMDが、Ryzen 9000シリーズへの復活を表明した。ただし、声明にはまだ語られていないことがある。 報道から4日での方針転換 経緯を振り返る。今年4月、ベン・キルパトリック(Ben Kilpatrick)氏がRyzen 7 9700Xにセキュリティ監査ツールHost Security ID(HSI)を走らせたところ、メモリ暗号化TSMEが「サポートされていない」と報告された。BIOSにはスイッチがある。有効にもできる。だが実際には何も起きない。数ヶ月にわたる調査を経て、MSIがRyzen 9 9800X3DとRyzen 9 PRO 9945を同一マザーボード上で比較検証した。AMDのファームウェア内部フラグDfIsTsmeEnabledは、コンシューマーCPUでだけFALSEを返していた。 この調査報道が現地時間6月15日に公開されると、反響は大きかった。AMDのエンジニアが2020年にコンシューマーRyzenでのTSME動作を認め、2025年にも使用を推奨していたことが、同じ報道で

ノルウェー、小学校で生成AIをほぼ全面禁止へ

AI

ノルウェー、小学校で生成AIをほぼ全面禁止へ

ノルウェーが、子供の手からAIを取り上げる。スマートフォン、SNS、そして生成AI。この国は立て続けに「引き返す」判断を下している。 スマートフォンの次はAI ノルウェーのヨーナス・ガール・ストーレ(Jonas Gahr Støre)首相は現地時間6月19日、小学校での生成AI使用をほぼ全面的に禁止すると発表した。新たな基準は2026年8月下旬の新学期から適用される。 対象は年齢で区切られている。1年生から7年生(6〜13歳)は原則としてAIを使わない。8年生から10年生(14〜16歳)は教員の監督下でのみ慎重に導入できる。高校にあたる11年生以上(17〜19歳)は、進学や就職に備えてAIの適切な使い方を学ぶべきだとした。 「学校で最も大切なことは、子供たちが読み、書き、計算することを学ぶことだ」。ストーレ氏は記者会見でそう語った。 テクノロジーを教室から遠ざけるのは、これが初めてではない 2024年、ノルウェー政府は学校からスマートフォンを追い出した。その判断を裏づけたのが、ノルウェー経済高等学院(NHH)のサラ・アブラハムソン(Sara Abrahamsson)氏に

ノーベル賞AlphaFoldの生みの親、Anthropicへ移籍

AI

ノーベル賞AlphaFoldの生みの親、Anthropicへ移籍

タンパク質の構造予測を変えたAlphaFoldの共同開発者が、約9年を過ごしたGoogle DeepMindを離れる。行き先はAnthropic。 博士号取得の半年後にAlphaFoldを任された研究者 ジョン・ジャンパー(John Jumper)氏が現地時間6月19日、Google DeepMindを離れAnthropicに移ると発表した。しばらく休養を取ってから合流する予定だという。 A bit of news: After nearly 9 years, I have decided to leave Google DeepMind and join Anthropic (after taking some time to recharge). I am incredibly grateful for my time at GDM. @demishassabis took a real

Amazonの社員が議会で発言したら、人事から呼び出された

データセンター

Amazonの社員が議会で発言したら、人事から呼び出された

シアトル市議会でデータセンター規制を支持する証言をしたAmazon社員3人が、社内調査の対象になった。解雇を含む懲戒処分がありうるとも告げられたという。3人はシアトル市の公民権局に苦情を申し立て、政治的信条に基づく差別だと訴えている。Amazon側は「社員が会社の代表者として発言したかどうか」を調べているだけだとしている。 「犯罪を犯したかのように感じた」 6月3日、シアトル市議会の委員会で、3人のAmazon社員がデータセンター規制を支持する証言を行った。いずれもAmazon Employees for Climate Justice(AECJ)のメンバーで、勤務時間外に、公開情報をもとに発言した。証言の冒頭で全員が同じ言葉を口にしている。「従業員が雇用主からの報復に対して法的に保護されている都市に住んでいることを誇りに思う」。 1週間後、3人はそれぞれ別のZoom会議に呼び出された。招待には「機密の懸念事項」について話し合うとだけ書かれていた。会議の相手は人事部門のEmployee Relations担当者。公聴会での証言について「懸念が寄せられた」ので調査しているという説

Radeon RX 9000にまた値上げの影。7月から10〜15%

GPU

Radeon RX 9000にまた値上げの影。7月から10〜15%

ようやく手が届く価格に戻ったと思ったら、次の値上げの足音が聞こえてきた。AMDが2026年第3四半期から10〜15%の追加値上げを計画しているという。半年以上続くDRAM高騰の出口はまだ見えない。 せっかくの値下がりを帳消しにするのか Radeon RX 9070 XTの日本での実売価格を覚えているだろうか。2025年11月には9万円台前半で買えた。それが2026年1月末、DRAM高騰とNVIDIA製品の品薄が重なってピークの約14万3000円まで跳ね上がった。 その後は「この値段では買わない」という消費者の判断が効いて、価格は一貫して下がり続けた。6月20日時点で最安は約9万2800円、主流モデルは10万円前後。ピークから約35%の下落だ。RX 9060 XT 16GBも最安で約5万8000円まで下がったが、ミドルレンジとしてはまだ高い。 ここに、また値上げが来る。 AMDは2026年下半期にVRAM価格がさらに上がると見ており、GPU価格を10〜15%引き上げる計画があるとされる。効果は早ければ7月にも表れるという。ただし、ソース自身が「確定的ではない」と付記しており、

ソニー、年次報告書からPC展開の文言を削除。AIを前面に

ゲーム

ソニー、年次報告書からPC展開の文言を削除。AIを前面に

PlayStationの事業戦略に、年に一度だけ手が入る瞬間がある。米証券取引委員会(SEC)へ提出する年次報告書(20-F)の改訂だ。229ページの文書に埋まった、わずか379語のPlayStation戦略概要。ソニーがここに加えた一語、削った一行が、翌年の方向を投資家に伝える。 2026年版がSECに提出された。変更は3箇所。どれも小さく、どれも無視できない。 消えた「PC」 2025年版にはこうあった。「ソニーはファーストパーティタイトルをPCなど複数のプラットフォームに展開する取り組みを継続する」。2026年版で、この一文がまるごと消えた。 消えたこと自体は驚きではない。3月、Bloombergのジェイソン・シュライアー(Jason Schreier)氏がソニーの方針転換を報じた。5月にはSIEスタジオビジネスグループのハーマン・ハルスト(Hermen Hulst)CEOが社内タウンホールで独占回帰を伝え、今週、SIEの西野秀明(Hideaki Nishino)社長兼CEOがファミ通のインタビューで「内製シングルプレイヤーゲームについては、PlayStationが提供

Fable級に中国はいつ届くか。マスク氏の「来年Q1」をZ.ai創業者が否定

AI

Fable級に中国はいつ届くか。マスク氏の「来年Q1」をZ.ai創業者が否定

Fable 5が止まって1週間。止めた側は動けず、追う側が加速している。 7か月差か、それ以下か 中国がFable 5にいつ追いつくか。6月18日、イーロン・マスク(Elon Musk)氏が「おそらく来年Q1」と投稿した。 Probably Q1 — Elon Musk (@elonmusk) June 18, 2026 返答は早かった。Z.ai(旧Zhipu AI、智譜)共同創業者のタン・ジエ(唐杰、Tang Jie)氏が、同じスレッドで一言。 won’t take that long — jietang (@jietang) June 18, 2026 won't

SIE西野CEO、PC移植を「否定しない」。内部では「曖昧さはない」

ゲーム

SIE西野CEO、PC移植を「否定しない」。内部では「曖昧さはない」

PlayStationがシングルプレイヤー作品のPC移植から撤退する。3月のBloomberg報道、5月の社内タウンホールと続いた一連の流れは、もうほぼ既定路線として受け止められていた。そのなかで、SIEの西野秀明社長CEOがメディアのインタビューでこの話題に初めて触れた。だがPCゲーマーが待っていた「明確な回答」は出なかった。 「ケースバイケース」か、そうでないか 海外のゲーム翻訳者Genki氏が投稿したことで、内容は瞬く間に海外コミュニティに広まった。西野氏の発言の骨子はこうだ。タイトルごとの特性に基づいてプラットフォームを選定してきた。PC展開がゲーム体験を最大化するなら、今後も検討する。ただし現在の基本方針として、ファーストパーティのシングルプレイヤー作品はPlayStationで提供できるゲーム体験の価値をさらに磨くことに注力する。ライブサービス作品はオンラインマルチプレイを通じてできるだけ多くの人に届けたいから、PS5とPCの両方でリリースを続ける。 PlayStation CEO Hideaki Nishino on PS5 games releasing on

GPUクラッシュ解析の新標準。DirectX Dump Files始動

Windows

GPUクラッシュ解析の新標準。DirectX Dump Files始動

ゲーム中に画面が固まり、数秒後に「ディスプレイドライバーが応答を停止しました」という通知が出る。PCゲーマーなら一度は見たことがある、あの瞬間だ。原因を調べようにも手がかりはほぼない。ドライバを入れ直すか、それともGPUの設定をいじるか。結局は手探りで、同じクラッシュが再発しないことを祈るしかなかった。 その手探りに、ようやく共通の手がかりが生まれようとしている。Microsoftが6月18日、DirectX Dump Filesのパブリックプレビューを公開した。 GPUクラッシュに「メモリダンプ」が生まれる DirectX Dump Files(DDF)は、3月のGDC 2026でMicrosoftが発表した新機能だ。発表から約3か月、実際に開発者が試せるプレビューが動き始めた。 仕組みはシンプルに言えば、CPU側で昔からあるメモリダンプのGPU版にあたる。Windowsがグラフィックスドライバの応答停止(TDR)を検知した瞬間、GPU側の実行状態をまるごとスナップショットとして記録し、.dxdmpという拡張子のファイルに書き出す。 このファイルには、GPUが何をしていた

Telegram遮断のインドでVPN需要が急増。裁判所は政府を支持

インターネット規制

Telegram遮断のインドでVPN需要が急増。裁判所は政府を支持

NEET再試験を理由にTelegramを遮断したインド。ユーザーは黙って従うどころか、VPNと代替アプリに一斉に流れた。デリー高裁はその遮断を「合法」と認めた。 1日で20万件のVPNダウンロード インド政府がTelegramの全面遮断を発令した6月16日、VPNアプリのダウンロード数は国内で1日20万8000件に跳ね上がった。直近の平均は13万9000件。49%の急増だ。Appfiguresの集計では、2025年以降でインド最多の1日だった。 なかでもProton VPNの伸びが目立つ。App Storeでのダウンロードは113%増、Google Playでは64%増。ランキングもApp Storeのユーティリティ部門で18位から5位へ、Google Playのツール部門で8位から2位へと駆け上がった。Turbo VPN、NordVPN、ExpressVPNも軒並み30〜85%増を記録している。 ダウンロードだけではない。Proton VPNのゼネラルマネージャー、デヴィッド・ピーターソン(David Peterson)氏によると、遮断当日の夜にはインドからの1時間あたり新

AI生成の性的画像で大学生を脅迫した疑い 米司法省が男を連邦起訴

AI

AI生成の性的画像で大学生を脅迫した疑い 米司法省が男を連邦起訴

ニューヨーク在住の21歳の男が、AI生成のヌード画像と偽のSNSアカウントを使ってジョージア州の大学生を3カ月にわたり追い詰めたとして、連邦サイバーストーキング罪で起訴された。写真1枚から偽のヌードを作り、被害者になりすまして人種差別的な発言を拡散する。標的は有名人ではない。ごく普通の大学生だった。 3カ月間の執拗な嫌がらせ 6月3日、ジョージア州北部地区の連邦大陪審がアンソニー・ベルフォード(Anthony Belford)被告をサイバーストーキング1件で起訴した。ベルフォード被告は6月10日に連邦裁判所で罪状認否に出廷している。 起訴状と司法省の発表によると、ベルフォード被告と被害者は2023〜2024年度に同じ大学に通っていた。2024年8月に被害者がジョージア州の大学へ転校すると、ベルフォード被告は転校先を把握した上で嫌がらせを始めたという。 2025年1月から3月にかけて、被告はInstagram、LinkedIn、Reddit、X、Strava、Yahooに被害者を装った偽アカウントを作成。AIで生成したヌード画像を十数件投稿した。被害者が黒人学生やイスラム教徒を

6月の月例更新で、ごみ箱が「中身」を見せてしまう

Windows

6月の月例更新で、ごみ箱が「中身」を見せてしまう

Windowsのごみ箱からファイルを完全に削除しようとすると、確認ダイアログに見覚えのない文字列が表示される。自分が削除した「レポート.docx」ではなく、「$R4K9MW.docx」。6月のセキュリティ更新を適用した全てのWindows環境で、この症状が確認されている。 ずっと隠されてきた裏側 Windowsのごみ箱は、見た目ほど単純な仕組みではない。ファイルをごみ箱に送ると、内部では $Rxxxxx というランダムな識別子にリネームされる。元の名前やパス、削除日時は別の $Ixxxxx ファイルにメタデータとして残る。エクスプローラーがこの2つを照合して、ユーザーには元のファイル名だけを見せていた。Windows Vista以降、この仕組みは一度もユーザーの目に触れることなく動き続けてきた。 6月9日に配信されたセキュリティ更新(Windows 11 24H2/25H2向けのKB5094126ほか)が、この内部名を表に出してしまった。ごみ箱の一覧では従来どおり正しいファイル名が並ぶが、ファイルを1つ選んで完全に削除しようとすると、確認ダイアログにはエクスプローラーが「翻訳」