データセンター37か所の郡が教師に「節電しろ」。ヘンライコ郡の25%値上げ

データセンター37か所の郡が教師に「節電しろ」。ヘンライコ郡の25%値上げ

バージニア州リッチモンド郊外のヘンライコ郡で、郡の最高行政責任者が全職員に節電を求めるメールを送った。7月1日から電気料金が25%上がる。年間500万ドルのコスト増を、ブラインドを閉め、パソコンの電源を落とすことで吸収しろという。この郡にはデータセンターが37か所あり、さらに17棟の新設が進んでいる。


郡マネージャーのメール

ヘンライコ郡カウンティ・マネージャーのジョン・ヴィトゥルカス(John Vithoulkas)氏が6月26日、数千人の郡職員に宛てたメールの内容が明らかになった。教師、消防士、社会福祉の担当者を含む全職員が対象だ。

7月1日から、郡の行政施設と学校の電気料金が25%上がる。年間の追加コストは推定500万ドル。今後数年間、さらなる値上げも見込まれるとメールは伝えている。

ヴィトゥルカス氏は職員に対し、退勤時のPC・ノートPCの電源オフ、未使用の照明の消灯、ブラインドによる日射熱の管理、充電器やその他電気機器の使用後のコンセント抜き、そして暖房器具の使用制限を求めた。暖房器具1台で年間150ドルから300ドルの電気代がかかる、と具体的な数字も添えている。

24.9%の値上げと、その背景

この値上げは、ヘンライコ郡だけの問題ではない。バージニア州内の約170の地方自治体が加盟するVEPGA(Virginia Energy Purchasing Governmental Association、バージニア・エネルギー購買政府協会)が、州最大の電力会社ドミニオン・エナジーと新たな電力契約で合意した。7月1日発効で、全体の値上げ率は24.9%。郡、市、町、教育委員会、地方公共団体が電力を一括購入するこの枠組みでは、料率区分ごとに影響の度合いが異なるものの、いずれも大幅な上昇になる。

バージニア州郡協会は4月の時点で、最大30%の値上げになりうると警告していた。

値上げの原因として、データセンターの電力需要の急増を無視することはできない。ドミニオン・エナジーは2023年時点で発電量の26%をデータセンターに供給しており、その比率はその後も上がり続けている。バージニア州北部の「データセンター・アレー」と呼ばれる一帯を中心に、州全体で400か所以上のデータセンターが稼働し、数百の新規計画が控えている。ドミニオン・エナジーはこの需要増に対応するためにインフラ拡張を続けてきたが、その建設費は一般家庭や地方自治体を含む全顧客に分散されてきた。

ドミニオン・エナジー自身は、値上げの理由は燃料費、インフラ維持費、建設費の上昇だと説明している。一般住宅の月額電気料金は2026年の新料金で約16ドルの上昇が見込まれ、平均月額は約165ドルに達する。14.7億ドルの新規ガス貯蔵施設の建設費も消費者に転嫁された。この施設の必要性自体がデータセンターの電力需要に起因するとの指摘がエネルギー政策研究者から出ている。

ヘンライコ郡とデータセンター

ヘンライコ郡は人口35万人超、リッチモンドのすぐ東に位置する。ホワイトオーク・テクノロジーパークを中心に37か所のデータセンターが稼働しており、メタが2017年にデータセンターを建設して以降、急速に集積地となった。

拡大は止まらない。データセンター大手QTSは、ホワイトオーク周辺で1,100エーカーにわたる2つの新キャンパスを開発中で、最大17棟の新規データセンター建設を進めている。完成すれば全26棟・約800万平方フィートの規模になる。南北戦争の戦場跡を含む622エーカーの用地は、地元開発業者ホーリガンが再区画を主導し、郡の監督委員会が全会一致で承認した後、約1億3,700万ドルでQTSに売却された。QTSはこの拡張に伴い、370基のディーゼル緊急発電機の許可をバージニア州環境局に申請している。

QTSホワイトオーク・テクノロジーパーク拡張計画
現在完成後
データセンター棟数12棟26棟
総床面積約300万
平方フィート
約800万
平方フィート
ディーゼル発電機544基914基
現在=稼働中12棟(承認済み未着工8棟は含まず)。完成後=RIC4(10棟)+RIC5(7棟)+既存9棟の合計。発電機914基=許可済み544基+申請中370基

すでに許可済みの544基の発電機と11基の冷却塔に上乗せされる。

5月の住民集会では、電気料金の高騰、水資源の消費、騒音、ディーゼル発電機の排気に対する不満が噴出している。ある住民は、ソーラーパネルとヒートポンプを導入していたにもかかわらず、1月の電気料金が前年の2倍になったと訴えた。

この郡にはデータセンターの税収を住宅問題に充てた実績もある。ヘンライコ郡はデータセンターからの税収を原資に6,000万ドルの住宅信託基金を設立し、中間所得層の教師や看護師が住宅を購入できるプログラムを始めた。公立高校の数学教師が、この基金の助成で市場価格より9万2,000ドル安い住宅を購入できた事例も報じられている。

データセンターの税収が地域に還元されていることと、その同じデータセンターが電気料金を押し上げていることは矛盾しない。両方が同時に起きている。

州レベルの対応

バージニア州議会は6月22日、データセンターに対する全米初の電力消費税を含む予算案を可決した。1キロワット時あたり0.011ドルの課税で、7月1日から施行される。年間最大6億ドルの歳入が見込まれ、超過分はデータセンター事業者に按分返還される仕組みだ。スパンバーガー知事の署名が見込まれている。

この課税は、データセンター設備に対する年間16億ドル規模の売上税免除を廃止すべきだとする州上院と、免除の維持を主張する下院・知事との間で数か月にわたった予算交渉の妥協として生まれた。電力消費税という形を取ることで、既存の税優遇は残しつつ、実効的にデータセンターの電気料金を約10%引き上げる。

25メガワット以上の電力を消費する大口需要家に発電容量の増強コストを負担させる法案や、大口顧客向けの新料金区分の設定も進んでいる。2027年1月からは、データセンターは契約した送配電容量の85%分、発電容量の60%分について、実際の使用量にかかわらず料金を支払う義務を負う。

データセンター事業者に環境基準を課す提案やディーゼル発電機の排出規制は、今回の予算案では見送られた。

バージニア州 データセンターと電力料金の経緯
2017年
メタ、データセンター建設
ホワイトオーク・テクノロジーパークが集積地に
2023年
発電量の26%がデータセンター向けに
ドミニオン・エナジーの供給比率。以降も上昇
2026年4月
州郡協会、最大30%値上げを警告
2026年6月22日
州議会、電力消費税の予算案可決
全米初。1kWhあたり0.011ドル。年間最大6億ドルの歳入見込み
2026年6月26日
郡マネージャー、全職員に節電要請
年間500万ドルのコスト増。PC電源オフ等を指示
2026年7月1日
VEPGA新料金発効
全体で24.9%値上げ。約170の地方自治体が対象
2027年1月
大口顧客向け新料金制度
送配電容量85%分・発電容量60%分の固定支払い義務
※電力消費税は知事署名を経て施行予定

500万ドルの節電と、500メガワットの消費

ヴィトゥルカス氏のメールには、「節約した1ドルは、郡が職員やサービスに再投資できる1ドルだ」と書かれていた。

ヘンライコ郡の教師が退勤時にPCの電源を落として節約できる電気代と、同じ郡内で24時間稼働するデータセンター37か所が消費する電力は、桁が違う。バージニア州のハイパースケールデータセンター1か所が消費する電力は100メガワットを超え、数万世帯分に相当する。それが37か所。さらに17棟が建つ。

ヘンライコ郡は、データセンターの恩恵と代償が最も集中している自治体だ。住宅基金への投資は、同種の取り組みとして全米初とされる。それでも、年間500万ドルの電気料金の増加分を暖房器具の使用制限で埋めようとしている。

データセンターの電力消費税が7月1日に施行され、新たな大口顧客向け料金制度が2027年に始まる。制度上のコスト分担は少しずつ修正されつつある。問題は、その修正が実際の電気料金に反映される速度が、データセンターの建設速度に追いつくかどうかだ。

参照元:County With 37 Data Centers Asks Schools to 'Conserve Electricity'

他参照:Virginia county asks all employees, including schools, to conserve power due to AI-driven electricity price hikes Localities in Dominion Energy Territory to Experience an Overall Rate Increase of 24.9% on July 1, 2026

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