DDR5偽造品が日本市場に流通、中身は半導体ではなくただの板
メモリ価格が前年から数倍に跳ね上がる中、見た目はサムスン製DDR5そのもの、しかし中身がプラスチック板やガラス繊維という偽造品が日本市場に出回っている。リーカーが分解解析した手口は、ヒートスプレッダ越しでは見抜けない。
メモリ価格が前年から数倍に跳ね上がる中、見た目はサムスン製DDR5そのもの、しかし中身がプラスチック板やガラス繊維という偽造品が日本市場に出回っている。リーカーが分解解析した手口は、ヒートスプレッダ越しでは見抜けない。
ヤフオクと通販で売られていた、偽装DDR5の正体
事の発端は、Xに投稿された1枚の写真だった。ユーザー @taki_pc_1115 が、見た目は普通のサムスン製DDR5 SO-DIMM(16GB)を分解した結果を公開している。基板に取り付けられていたチップを取り外して切断したところ、中身は半導体ではなく 板状の素材 が入っていた。
注意喚起
— TAKI (@taki_pc_1115) May 10, 2026
DDR5のメモリの偽物が出回ってます。
一見すると普通のメモリですが、実際に搭載されているチップはただの基板、プラスチックの板です。取り外して切断して確認しました。
動作未確認のメモリーとかマジで購入する際は気をつけてください!
4090の悲劇を起こさないように! pic.twitter.com/gcKAjRDUei
ラベルには「SAMSUNG DDR5 SODIMM 16GB」と印刷され、CEマークやUKCAマークまで再現されている。基板上のチップにも「SK hynix」の刻印が見える。一見して本物と区別できない仕上がりだ。本人は後の追加投稿で当初プラスチックと述べた中身を ガラス繊維 に修正している。基板用FR-4と思われる素材そのものを偽チップ形状に成型した手の込みようだ。
注意喚起の投稿を受けて、別のユーザー @haru_frisk が同種の偽造品が以前ヤフオクでも流通していた事実を補足した。見分け方として「PMICの形状の違い」「基板の薄さ」「チップ各エッジの丸み」を挙げている。先のヤフオク出品では、出品者自身が「動作未確認」「ジャンク扱い」と明記していた。とはいえ、見た目の精巧さからすれば「ジャンク」の表記すら詐欺の隠れ蓑になり得る。
https://t.co/6fBwfk6DJV
— 春脳。 (@haru_frisk) May 10, 2026
ちょっと前にオクでも売っていたね
見分け方は
各エッジが丸い PMICの形が違う 基板色が薄い とか https://t.co/7s8qLvXg3M
なぜ今、偽造メモリが流通するのか
DDR5メモリの価格は2025年7月から2026年1月までで一時 平均4.4倍 に高騰した。2026年5月時点では一部の規格でやや下落が見られるものの、依然として2025年夏比で大幅な高値水準にある。SO-DIMM(ノートPC用)も同様の状況だ。
価格高騰の背景にあるのは生成AI需要によるHBM(広帯域メモリ)へのウェハ振り向けだ。サムスン、SKハイニックス、マイクロンの大手3社は利益率の高いHBMやサーバー向けDRAMを優先しており、個人向けDDR5の供給は構造的に細っている。マイクロンは2025年12月にコンシューマー事業からの撤退を発表し、Crucialブランドの製品出荷は2026年2月で終了。現在は流通在庫が消化される過程にあり、選択肢自体が狭まっている。
Counterpoint Researchの予測では、2026年初頭にメモリ価格はさらに20%上昇する可能性がある。Phison ElectronicsのCEOは、NANDフラッシュの不足が10年続く可能性に言及している。価格正常化の見通しは2027〜2028年以降だ。
供給が絞られ、価格が跳ね上がれば、その隙間に流れ込むのが偽造品だ。RTX 4090の偽装基板事件、Ryzen CPUの偽造、そして今回のDDR5。狙われる対象は、市場で品薄かつ高額なものへと移っている。
見抜けない理由——ヒートスプレッダの内側
今回の偽造品が深刻なのは、デスクトップ向けメモリでは 外観での判別が事実上不可能 な点にある。SO-DIMM(ノートPC用)は基板がむき出しのため、エッジの丸みやPMICの形状から偽造を見抜く余地がある。だがデスクトップ向けのDDR5はほぼ全てヒートスプレッダで覆われており、ラベルだけ本物そっくりに作れば、起動するまで偽物と分からない。
@taki_pc_1115 自身も追加投稿で次のように述べている。
これノート PC 用だから外観で分かりましたが、デスクトップ用で上からヒートシンク被せられてたりしたらマジで分からんと思うので本当に悪質です…
— TAKI (@taki_pc_1115) May 10, 2026
見分ける手段は、購入時の信頼性に依存するしかない。
- 信頼できる正規代理店・実店舗から購入する
- 動作未確認のジャンク品、極端な安値の出品は避ける
- 個人売買サイトでは出品者の評価と実績を確認する
- 受け取り時から開封・通電確認の動画を残す
メモリは見た目で判断できる電子部品ではない。本物のチップが乗っているか、容量通りに動作するかは、実際にPCに装着して動かすまで分からない。動かなかったときに返品・返金が利く購入経路を選ぶことが、現状で取れる現実的な防衛手段になる。
偽造品流通が示す、メモリ市場の構造的な歪み
メモリが希少品になった瞬間、市場には金になる隙間ができる。価格が4倍5倍に跳ね上がれば、 原価ゼロのプラスチック板 にラベルを貼って売っても利益が出る計算だ。HBM需要に振り回される個人向けDRAM市場の細り方は、こうした犯罪の温床になり得る構造そのものだ。
メーカー側の対策にも限界がある。DDR5の正規品にはモジュールごとにシリアル番号が刻印されているが、偽造業者はそれすらコピーする。メーカー公式サイトでのシリアル照会機能の整備が急務だが、現時点ではサムスンもSKハイニックスも個人向け照会窓口を持たない。
買う側に求められるのは、価格が異常な状況下では「相場より安い」が即「お得」を意味しない事実を知っておくことだ。半額で売られているメモリは、半額の理由を疑うべき時代に入った。
開封の瞬間を録画する習慣が、いつの間にか自衛の最低ラインになりつつある。
参照元
他参照