DDR6基板開発、メモリ3社が標準確定前から先行競争
JEDEC標準がまだ確定していないDDR6で、サムスン電子・SKハイニックス・マイクロンの3社が基板メーカーと共同開発を始めている。規格主導権を狙った先行設計の競争で、量産は2028〜2029年以降が見込まれている。
DDR6基板開発、標準確定前からの先行競争
次世代サーバー向けDRAMのDDR6について、メモリ3社が基板の先行開発に着手している。韓国メディアのThe Elec(디일렉)が4日に報じた内容によれば、サムスン電子・SKハイニックス・マイクロンの主要メモリ3社が、最近になって基板メーカーへDDR6の先行開発を要請したという。基板メーカー側はメモリの厚さ、積層構造、配線などを考慮した設計に着手し、初期試作品の検証を進めている。
通常、メモリ業者と基板業者は製品出荷の2年以上前から共同開発を始めるとされる。今回の動きは、その時計が回り始めたことを示す。
「メモリ企業と基板企業は通常、製品出荷の2年以上前から共同開発を進める」
The Elecが伝えた基板業界関係者の発言
標準が固まる前から 物理設計の前倒し に踏み込むのは、異例とまでは言えないにせよ、規格主導権争いの裏返しでもある。各社にとって、自社の設計思想を仕様策定に反映させられるかどうかが、量産時の優位性を左右する。
なぜ標準確定前から動くのか
DDR6の仕様は、国際半導体標準協議機構(JEDEC)で2024年末にドラフトが公開された。しかし、厚さ・入出力(I/O)数・信号規格といった主要仕様はまだ確定していない。各社が提案した設計をもとに細部を調整している段階だ。
それでもメモリ3社が前倒しで動くのは、自社設計が標準に反映されれば、最適化された性能と開発経験を先取りできるからだ。歩留まりの安定化 でも有利な位置を取れる。標準とは、最初に決めた者が一番得をする世界の話でもある。
DDR6は、JEDECのJC-42.3小委員会で標準化が進められている。LPDDR6(モバイル向け低消費電力版)の標準は2025年7月に正式公開され、DDR6世代で最初に確定した規格となった。一方のDDR6本体は、当初2025年第2四半期に予定されていた仕様1.0の批准が、タイミングや信号パラメータの調整により2026年へずれ込んだとみられる。標準が遅れる中で、メモリ3社は自分たちのペースで物理設計を進めている。
17.6 Gbpsの世界、DDR5の2倍を狙う
DDR6の性能目標は、ベース速度が8.8 Gbps、上限が17.6 Gbpsとされている。DDR5の最新JEDEC標準(JESD79-5C)が8.8 Gbpsを上限としているため、DDR6はその起点からスタートし、最大ではDDR5の2倍に達する計算になる。将来の世代では21 Gbps前後まで伸びる可能性も語られている。
速度が倍増すれば、設計の難易度も比例して跳ね上がる。信号無欠性の確保 と電力効率の両立が大きな課題になり、基板の設計難度も高くなった。これが、メモリの初期設計段階から基板メーカーが共同で開発に参加する背景にある。シグナルインテグリティ、つまり信号の波形が乱れずに届くかという物理層の問題は、DDR5以上にDDR6で重みを増す論点だ。
DDR6はモジュールの形状も変わる見込みだ。従来の288ピンDIMMに代わり、CAMM2(Compression Attached Memory Module 2)が標準モジュールとなる方向で議論が進む。一つのDIMMを4つの 24ビットサブチャネル に分割するアーキテクチャ変更も計画されており、DDR5の「2×32ビット」構成からの大きな転換となる。形状・チャネル構成・速度が同時に動くため、世代としては久々に骨格から組み直される更新になる。
| DDR4 | DDR5 | DDR6 | |
|---|---|---|---|
| 商用化 | 2014年 | 2020年 | 2028〜2029年 以降見込み |
| 最大速度 (JEDEC) |
3.2 Gbps | 8.8 Gbps | 17.6 Gbps |
| サブチャネル 構成 |
— | 2×32ビット | 4×24ビット |
| JEDEC 仕様策定 |
策定済み | 策定済み (JESD79-5C) |
仕様1.0 調整中 |
AIサーバーが押し上げた世代交代の前倒し
世代交代の動機は、AIサーバーの拡大にある。AIによってデータ処理速度と帯域幅の要求が一気に跳ね上がり、メモリ性能の引き上げが避けられなくなった。
サーバー向けDRAMでは、すでにDDR5への移行が進んでいる。市場調査会社のTrendForceによれば、サーバー向けDRAMにおけるDDR5の比率は、昨年 80% を超えた。今年は90%まで拡大する見込みだ。一方のDDR4は新規採用が減り、比率は20%以下まで低下した。業界では生産終了の可能性も口にされ始めている。
過去のサイクルと比べると、世代交代の前倒し感が際立つ。DDR4は2014年の商用化から長期間にわたり主力として使われた。DDR5は2020年に登場し、サーバー市場での本格的な世代交代は2022年以降に進んだ。DDR5の主役期間 は、DDR4より明らかに短くなる可能性が高い。
AIサーバーは、HBMだけで足りるわけではない。サーバーCPU向けのDDR5 RDIMM、帯域幅のボトルネックを解消するMCRDIMMやMRDIMMといった派生規格も求められる。ある試算では、AI関連がDRAM全体の生産能力の20%程度を占めると見られる年が、すでに射程に入っている。
量産は2028〜2029年、DDR5の轍を踏むか
業界では、DDR6の商用化時期を2028〜2029年以降と予想している。最終顧客の需要が見えてくるまで、量産のペースは上がらないという見立てだ。
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2024年末
DDR6ドラフト仕様
公開 JEDECがDDR6の初期ドラフトを公開。厚さ・I/O数・信号規格などは未確定のまま、各社が提案する設計の調整段階に入る。
2025年7月
LPDDR6標準
(JESD209-6)正式公開 モバイル向け低消費電力版が、DDR6世代で最初に確定した規格となる。基本データレートは10,667〜14,400 MT/s。
2026年
(現在) メモリ3社が基板の
先行開発に動く サムスン電子・SKハイニックス・マイクロンが基板メーカーへ先行開発を要請。仕様1.0の批准は当初2025年Q2予定から本年へずれ込んだとみられる。
2028〜
2029年 以降 DDR6商用化見込み
業界の見通しでは量産はこの時期以降。最終顧客の需要が見えてきてから量産のペースが上がるとされる。
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ここで気になるのは、価格の話だ。DDR5は新しい消費者プラットフォームへの移行で大きな値上げを伴ったが、その後しばらくは手頃になっていった。ところがいま、DDR5の価格は再び上昇している。AIによってメモリ供給に圧迫がかかり続けているからだ。HP社が公表した数字では、PCの部品原価に占めるメモリとストレージの比率が、15〜18%から2026年には約35%へと跳ね上がった。
DDR6が出てくる頃に、価格が落ち着いているとは限らない。AI需要の重力 は、世代が変わっても消えるとは思いにくい。標準確定前から基板の設計が走り始めた理由には、技術的な準備の必要性だけでなく、「次の波が来る前に間に合わせたい」という危機感もありそうだ。
ここまでの流れを整理すると、メモリ3社は標準確定前から基板の物理設計を走らせ、DDR6は8.8〜17.6 Gbpsを目標に2028〜2029年の量産を狙う。AIサーバーが世代交代の時計を早め、価格圧力は次世代でも続きそうだ。
DDR6が登場する頃、私たちのPCやサーバーは、いまよりメモリのコスト比重が大きくなった環境にいるかもしれない。次の規格が、その重みを少しでも軽くしてくれるかどうか。次世代の競争は、製品が店頭に並ぶ何年も前に始まっている。
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