1枚の子どもの写真から7000枚。Grokが生んだ性的虐待画像の実態
ワイオミング州の女性が、義父の犯行とAI企業の怠慢、そしてその後に残された地獄を初めて語った。
ワイオミング州の女性が、義父の犯行とAI企業の怠慢、そしてその後に残された地獄を初めて語った。
家族のパーティーが予定されていた日
今年のある日、ワイオミング州に暮らすジェーン・ドウ4(Jane Doe 4)と呼ばれる女性が、家族のパーティーの準備のために両親の家を訪れた。見慣れたはずの通りは、州と地元の法執行機関の車両で埋め尽くされていた。
バッジを見せた男が、義父の電子機器に対する捜索令状を持っていると告げた。児童性的虐待素材(CSAM)の捜査だという。
後に彼女が知らされた事実はこうだ。
義父は彼女が11歳のときの写真を使い、SpaceXAI(旧xAI)のチャットボットGrokで7000枚以上の性的画像を生成していた。大きめのTシャツを着てソファに横たわる少女の写真が、裸体の画像、複数の男に暴行される画像、義父自身との性的行為を描く画像に変換された。
一部にはキャプションまで付けられていた。義父は生成した画像をオンラインで他者と交換していたという。
捜索の2日後、義父は車の中で自ら命を絶った。彼女とパートナーが家を買ったばかりの町で。
彼女はこう述べている。
こうしたツールへの無制限のアクセスが、すさまじい速度で広がっている。日常をそのまま児童性的虐待に変えてしまう
SpaceXAIが送った通報は「1件」
米国の法律では、電子サービス事業者は児童の性的搾取を疑う情報を、全米行方不明・被搾取児童センター(NCMEC)に通報する義務がある。SpaceXAIがジェーン・ドウ4に関してNCMECに送った通報は、1件だけだった。それは義父が「複数の男による暴行」の画像を生成するよう指示したときに限られる。
7000枚以上の画像が生成される過程で、企業のシステムが検知したのは1回。そしてその1回の通報にすら、虐待画像は添付されず、加害者のIPアドレスも含まれていなかった。法執行機関がIPアドレスを繰り返し要請した後も、SpaceXAIは提供しなかったという。
原告側弁護士のアニカ・マーティン(Annika Martin)氏によれば、法執行機関は義父がGrokを選んだ理由についてこう話している。「他のAIモデルよりプロンプトへの応答が良かったから」だと。
5人の原告と広がる訴訟
ジェーン・ドウ4は、今年3月にテネシー州の10代の少女3人がSpaceXAIを相手取り提起した集団訴訟に、7月に加わった。ウィスコンシン州の女性(ジェーン・ドウ5、中学の卒業式写真を使われた)も同時に原告に加わり、被告にはStability AIも追加されている。
テネシー州の3人の訴訟は、Grokの「スパイシーモード」が実在の人物の写真を性的画像に加工する機能をほぼ制限なく提供していたことを問題にしている。2025年12月末から2026年1月上旬にかけて、Grokは推定180万枚以上の性的画像をX上に生成・投稿した。New York TimesとCenter for Countering Digital Hate(デジタルヘイト対策センター)の分析による数字だ。
この時期、マレーシア、インドネシアがGrokへのアクセスを一時遮断し、英国のOfcomが正式調査を開始し、EUが証拠保全命令を出し、米国では37州以上の司法長官がxAIに対策を要求した。
SpaceXAI(当時xAI)はその後、画像編集機能を有料会員に限定し、実在の人物を露出の多い服装に加工する機能を制限したと発表した。だが訴状は、有料化によって「CSAMの生成を防いだのではなく、CSAMの生成から確実に収益を得られるようにした」と指摘している。
規制に訴訟で対抗する企業
被害者が訴訟に参加した数週間後、SpaceXAIはミネソタ州を相手取り訴訟を起こした。AIによる非同意のヌード画像生成を禁止する州法が合衆国憲法修正第1条に違反するとして、現地時間7月27日に連邦裁判所に提訴している。
この州法は、AI事業者が自社ツールを使って人の「身体の親密な部位」を描写する画像の生成を許した場合、1件あたり最大50万ドルの罰金を科す。州議会では下院が132対1、上院が65対0で可決した。
SpaceXAIの訴状は、法律の「身体の親密な部位」の定義が広すぎるとし、水着姿やシャツなしの画像まで規制対象になりかねないと主張している。同社はすでにそのような画像の生成を自主的に禁じているとも述べた。
ミネソタ州のティム・ウォルツ(Tim Walz)知事は一言だけ返した。「法廷で会おう、変態」
SpaceXAIは法律の施行差し止めを裁判所に求めたが、連邦判事は「申し立てが遅すぎる」として却下した。法律は予定通り8月1日に施行されている。
4700件から150万件へ
NCMECのCyberTiplineに届いた生成AIに関連する通報件数は、2023年が4700件、2024年が6万7000件、そして2025年が150万件だ。ただしこの150万件のうち110万件以上はAmazon AI Servicesからの報告で、対応可能な情報を含んでいなかった。それを除いても、犯人がCSAMを所持・生成・試みた事例は18万2000件を超えている。
かつて、こうした画像を作るにはダークウェブの奥深くに分け入り、特殊なツールを探す必要があった。Grokは「写真をアップロードして指示を入力する」だけでそれを可能にした。参入障壁が消えた世界で、11歳の写真1枚から7000枚の画像が生まれた。
ジェーン・ドウ4の義父はもういない。生成された画像は、インターネットのどこかに残っている。
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