Starlink衛星260基が半年で大気圏再突入 環境審査の扱いも検証

Starlink衛星260基が半年で大気圏再突入 環境審査の扱いも検証

SpaceXがFCCに提出した半年間報告書で、2025年12月から2026年5月までに260基のStarlink衛星を大気圏再突入で処分したことが明らかになった。さらに349基が退役済みで処分待ちの状態にある。焼却の規模が拡大する一方、FCCは衛星を環境審査の対象外にする提案を進めている。


半年で260基、前期より減少した理由

SpaceXはFCC(連邦通信委員会)への半年間報告書で、2025年12月1日から2026年5月31日の間に260基のStarlink衛星を制御デオービットで処分したと報告した。内訳は第1世代が176基、第2世代が84基。報告書時点でStarlinkの稼働衛星数は1万基を超えている。

この260基という数字は、前期(2024年12月〜2025年5月)の472基超から大きく減っている。これは第1世代衛星の退役がピークを過ぎつつあることを示唆する。2019年から2021年にかけて打ち上げられた初期の衛星群が設計寿命の約5年を迎え、集中的に処分された時期が過ぎたためだ。

一方で、同期間中に別途349基が退役処理を受けており、数ヶ月以内に大気圏再突入で廃棄される。軌道離脱済みの260基と合わせると、半年間で609基の衛星がStarlinkの運用から外れた計算になる。

Starlink衛星の半年間処分数
0100200300400500472基260基349基前期処分済み今期処分済み今期退役待ち
※前期=2024年12月〜2025年5月、今期=2025年12月〜2026年5月。SpaceX FCC半年間報告書

Starlinkの衛星はクリプトンを燃料とするホールスラスターを搭載している。設計寿命に達するか、バッテリーやテレメトリに劣化が見られた時点で、残燃料を使って軌道を下げる。高度が十分に下がると大気の摩擦で機体が完全に燃え尽きる。SpaceXによれば、機体の100%が大気圏内で消滅し、地上に破片は落下しない。FCC基準の廃棄信頼性95%に対し、SpaceXの実績は99%を超えている。

回収という選択肢はない。第1世代の衛星でも260〜295kg、第2世代は800〜1,250kgに達する。軌道上の衛星を捕獲して持ち帰る技術は実用化されておらず、経済的にも成立しない。

燃え尽きた衛星は消えない

地上に破片が落ちないことと、環境に影響がないことは同義ではない。

衛星の構造材の大部分はアルミニウムだ。大気圏突入時の高温で機体は分解されるが、アルミニウムはそのまま消えるわけではない。酸化アルミニウム(アルミナ)の微粒子に変わり、成層圏に残留する。

ブリティッシュコロンビア大学のアーロン・ボーリー(Aaron Boley)准教授は、アルミナがオゾン層を破壊する触媒として機能する可能性を早くから指摘してきた。自然に降り注ぐ隕石の主成分は酸素、マグネシウム、ケイ素で、アルミニウムの含有率は約1%にすぎない。人工衛星の再突入は、自然界とは組成のまったく異なる金属を上層大気に注入している。

南カリフォルニア大学の研究チームは2024年、大気中の酸化アルミニウム濃度が2022年時点で自然水準から29.5%上昇していたことを報告した。計画中のすべてのメガコンステレーションが展開された場合、この増加率は646%に達する可能性があるとの予測も示している。

2026年5月には、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のエロイーズ・マレ(Eloise Marais)教授が率いる研究チームが学術誌Earth's Futureに大規模な分析を発表した。ロケット打ち上げと衛星再突入で発生するブラックカーボン(すす)は上層大気に長く滞留し、気候への影響は質量あたりで地上排出源の500倍以上になるという。

メガコンステレーション由来の排出は2020年時点で宇宙産業全体の気候影響の35%を占めており、2029年には42%に達すると予測されている。

現在の影響はまだ小さく、深刻化する前に対処する機会は残っている。しかし、これまでこの種の汚染を効果的に規制する取り組みはほとんど行われてこなかった(マレ教授のUCLプレスリリース

研究チームは、自分たちの予測が過小評価である可能性も認めている。2020年から2022年のデータに基づく推計だが、2023年から2025年の打ち上げ数は予測を上回っており、今後もさらなる増加が見込まれるためだ。

FCCは環境審査から衛星を外そうとしている

この規模の焼却が続いているにもかかわらず、米国の環境審査は衛星をほぼ素通りさせてきた。

FCCは1986年以来、衛星のライセンス発行をNEPA(国家環境政策法)の「カテゴリカル除外」の対象としてきた。環境影響が通常は軽微とみなされる行為に適用される区分で、個別の環境影響評価を必要としない。GAO(会計検査院)は2023年の報告書で、FCCがこの除外を大規模衛星コンステレーションに適用することの妥当性を検証も文書化もしていないと指摘し、見直しを勧告した。

衛星の環境審査をめぐる経緯
1986年
カテゴリカル除外を制定
FCCが衛星ライセンスを環境審査の対象外に
2023年
GAOが見直しを勧告
大規模衛星群への適用妥当性を検証していないと指摘
2025年7月
衛星の環境審査除外を提案
FCCがNEPA改定案を公表。「域外活動」を根拠に
2025年9月
17州+DCと天文学会が反対
打ち上げ・再突入・光害の影響は米国内と主張
2026年7月
最終規則は未採択
審査免除の行方は定まっていない
※NEPA=国家環境政策法。GAO=会計検査院。中空ドットは未確定の状態を示す

2025年7月、FCCはNEPA運用規則の改定案(NPRM)を公表した。そこに含まれていたのが、衛星運用をNEPAの適用対象から明示的に除外する提案だった。根拠は、衛星の運用は「域外活動」であり、その影響は「米国の管轄外」に位置するというものだ。

この主張に対して、2025年9月のパブリックコメントでは正面からの反論が相次いだ。17州の司法長官とコロンビア特別区は、打ち上げ排出物、再突入デブリ、光害、軌道混雑のいずれも米国内に影響を及ぼすと主張した。米国天文学会(AAS)は、衛星による光の反射と電波干渉が米国の地上望遠鏡と宇宙望遠鏡の双方に影響を与えていることを具体的に示し、「域外」の定義自体に異議を唱えた。

FCCの提案はまだ最終規則として採択されていない。だが、仮に採択されれば、SpaceXだけでなく中国の千帆やAmazonのAmazon Leoを含むすべてのメガコンステレーション事業者が、大気への化学的影響について環境影響評価書を作成する義務を免れることになる。

宇宙データセンターが焼却サイクルを加速させる

焼却を前提としたStarlinkの運用モデルは、SpaceXの次の構想でさらに拡大する。

SpaceXは2026年1月、最大100万基の軌道データセンター衛星の展開をFCCに申請した。6月に公開された初の軌道データセンター衛星「AI1」は翼幅70メートル、ピーク150kWの演算能力を持ち、テキサス州バストロップではこの量産を担う1100万平方フィートのGigasat工場が着工している。

Starlinkの通信衛星4万2000基と、軌道データセンター100万基。仮にすべてが5年サイクルで世代交代するなら、単純計算で年間20万基以上の衛星が大気圏で焼却される。第2世代以降の衛星は1基あたり800kg以上。AI1のような大型衛星はさらに重い。大気に注入される金属の総量は、現在とは桁が違う。

UCL研究チームのマレ教授は、現在の衛星メガコンステレーションによる汚染の蓄積を「規制されていない小規模なジオエンジニアリング実験」と表現した。問題は規模がこれから急速に拡大すること、そしてその拡大が環境審査の外側で進んでいることにある。

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