RTX 3060が329ドルで復活。5年間、何も変わらなかった
2021年に329ドルで発売されたグラフィックボードが、2026年に329ドルで再び棚に並んだ。GeForce RTX 3060 12GBの再販が、GPU市場の5年間を一枚の値札に映した。
米国と欧州で329ドル、日本では約6万円
NVIDIAのGeForce RTX 3060 12GBが、米国と欧州で再販を開始した。米国ではMSI製Ventus 2X 12G OCがNeweggに329.99ドルで掲載され、7月2日付で入荷している。欧州では333ユーロ。2021年2月の発売時に設定されたメーカー希望小売価格329ドルと、ほぼ同額だ。
5年経って、価格が変わっていない。
日本ではこれに先立ち、6月中旬にGIGABYTE製WINDFORCE OC 12G Rev.2.0が5万9800円(執筆時点で約5万6000円)で販売を開始した。RTX 5050が約5万円前後、RTX 5060が約5万3000円台から購入できる市場で、2世代前のGPUが後継機より高い値付けになっている。
性能差は明確、それでも再販する理由
RTX 3060はAmpere、3584 CUDA、12GB GDDR6、192bit。RTX 5060はBlackwell、3840 CUDA、8GB GDDR7、128bit。1080pのゲーム性能でRTX 5060がRTX 3060を40〜55%上回ることを、複数のベンチマークが示している。
| RTX 3060 | RTX 5060 | |
|---|---|---|
| アーキテクチャ | Ampere | Blackwell |
| CUDA | 3584 | 3840 |
| VRAM | 12GB GDDR6 | 8GB GDDR7 |
| メモリバス幅 | 192bit | 128bit |
| ブーストクロック | 1777MHz | 2497MHz |
| TDP | 170W | 145W |
| DLSS | 超解像のみ | フレーム生成対応 |
| 日本実売 | 約5万6000円〜 | 約5万3000円〜 |
DLSS対応の差も大きい。RTX 3060が対応するのはDLSS超解像のみで、フレーム生成はRTX 40シリーズ以降、マルチフレーム生成はRTX 50シリーズからの機能になる。フレーム生成対応タイトルが増えた2026年の環境では、RTX 3060のフレームレートに伸びしろがない。
性能で劣る旧世代を、同じ価格帯に戻す。再生産に踏み切らせたのは、RTX 50シリーズの供給を圧迫するDRAM不足だ。
DRAM不足が消した選択肢
RTX 50シリーズはすべてGDDR7を採用した。このGDDR7を含む汎用DRAMの供給が、AI向けHBMへの生産集中で逼迫した。サムスンはQ3にLPDDRと汎用DRAMの価格を20%以上引き上げ、Q1の90%、Q2の50〜60%に続く3四半期連続の大幅値上げとなった。主要DRAM部品の価格は前年比で70%上昇し、一部では170%に達している。
ジェフリーズはメモリ価格がQ3にさらに50%、Q4に40%上昇すると予測し、正常化は2028年まで見込めないとした。マイクロンのCEOも、2028年までメモリ供給の改善には時間がかかると述べている。
NVIDIAのRTX 50 SUPERシリーズに関する情報は出ていない。当初2026年後半の投入が見込まれていたRTX 5050 9GB版は開発中止になった。RTX 3060 12GBの再投入で存在意義を失った、とされている。
RTX 3060はGDDR6を使い、サムスン8nmプロセスで製造される。GDDR7の需給とも、TSMCの最先端ラインとも無関係だ。NVIDIAにとって、既存のサプライチェーンで調達可能な数少ない製品だった。
12GBのVRAMだけが残った
RTX 3060が訴求できるのは、12GBのVRAMだけだ。RTX 5060は8GB、RTX 5050も8GB。RTX 50シリーズで12GB以上のVRAMを載せるのはRTX 5060 Ti 16GB(約9万円以上)からで、5年前のミドルレンジGPUがエントリー帯で最大のVRAM容量を持つ。
ローカルAI推論やVRAMを大量に消費する用途では、この12GBが実用的な差を生む。ゲームでも、一部の最新タイトルで高解像度テクスチャが8GBを超えるケースが報告されている。
ゲーム性能を優先するなら、RTX 5050やRTX 5060を選ぶ方が合理的だ。メーカー希望小売価格299ドルのRTX 5060は、米国の実売でも349〜359ドルにとどまり、RTX 3060との価格差は20〜30ドルしかない。
Steamハードウェア調査では、RTX 3060が2026年5月時点でも最多利用GPUの座を維持していた。5年間、多くのゲーマーがこのカードを使い続けたのは、8GBのRTX 4060にVRAMを減らしてまで乗り換える理由がなく、RTX 5060 Ti 16GBには予算が届かなかったためだ。
5年前と同じ値札の意味
RTX 3060 12GBの再販は、RTX 50シリーズのラインナップに空いた穴を旧世代で埋める措置にすぎない。DRAMメーカーはAI向けHBMに生産能力を振り向けており、数千億ドル規模の新工場建設計画もAI需要に充てられる。ゲーマー向けメモリの増産には直結しない。
2021年の329ドルと2026年の329ドル。数字は同じでも、購買力は違う。5年分のインフレを経て同額で購入できるのは、5年分古くなったGPUだ。
RTX 5060は20〜30ドル高いだけで性能は40%以上高く、DLSSのフレーム生成にも対応する。日本でもRTX 3060の最安値がRTX 5060の最安値を上回る状態が続いている。ゲーム用途でRTX 3060を積極的に選ぶ理由は、ほぼ残っていない。
5年前と同じ値札で再び出荷されたGPUが新製品として棚に並ぶ。この状況は、NVIDIAの判断ではなくDRAM市場の制約が作り出した。
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