Smart Access Memoryが無効表示に。実害はなかった

Smart Access Memoryが無効表示に。実害はなかった
AMD

Windows 10環境のRadeonユーザーが、ドライバ更新後にSmart Access Memoryの表示を失った。BIOSは有効のまま、Adrenalinだけが「無効」と報告する。結論を先に書くと、性能は落ちていない。だが「大丈夫」の一言で片付けるには、6月のAMDドライバは問題を起こしすぎている。


Adrenalinだけが「無効」を返す

発端は6月2日に公開されたAdrenalin 26.6.1だった。このドライバに更新した直後から、一部のWindows 10環境でSmart Access Memoryのステータスが「無効」に切り替わる報告が相次いだ。Adrenalinのダッシュボードに表示される値だけが変わっている。

Smart Access Memoryは、CPUからGPUのVRAM全域に一括でアクセスできるようにするPCIeの拡張機能だ。中身はResizable BARそのもので、AMDが独自のブランド名を付けている。有効にするにはBIOSでResizable BARとAbove 4G Decodingを有効にする必要があり、これが正しく設定されていればAdrenalin上でも「有効」と表示されるのが通常の挙動になる。

gamegpu

報告の多くに共通する症状はこうだ。ドライバ更新後、Windowsが「ハードウェア構成の変更」を検知する通知を繰り返す。Adrenalinを開くとSmart Access Memoryは無効。ところがBIOSに入ると、Resizable BARもAbove 4G Decodingも有効のまま変わっていない。

BIOSとAdrenalin、どちらの表示が正しいのか。ここが今回の問題の核心だ。

検証ツールが出した答え

ユーザーコミュニティは複数の検証ツールで実態を確認した。GPU-Z、HWiNFO64、Windowsのデバイスマネージャー。いずれもResizable BARは有効を示している。「無効」と報告していたのはAdrenalinだけだった。

SmartAccess Memory stuck in disabled after recent GPU driver issue?
by u/SinisterPixel in radeon

あるユーザーは、BIOSでResizable BARを無効にした状態と、BIOSでは有効のままAdrenalinだけが「無効」と表示している状態の両方でベンチマークを実行した。性能が落ちたのはBIOSで実際に無効化した場合だけで、Adrenalinの表示が「無効」でも実際にはResizable BARは機能していた。

結論はAdrenalinのコスメティックバグ(表示上の不具合)だった。実害はない。

ただし、この結論に辿り着くまでに多くのユーザーがDDUによるセーフモードでのクリーンインストール、BIOSの設定リセットと再適用、CSMの無効確認、複数回の再起動を試行している。結果的に不要だった作業だが、「自分の設定が壊れたのではないか」という不安の中で対処していた時間は返ってこない。

26.6.2でさらに悪化、そして26.6.3

Smart Access Memoryの表示バグが解決しないまま、6月22日にAdrenalin 26.6.2が公開された。待望のFSR 4.1アップスケーリング対応をRadeon RX 7000シリーズに載せたドライバだったが、Windows 10環境で致命的な問題を抱えていた。

インストール後にAdrenalinが起動できなくなり、デバイスマネージャーのGPU欄に黄色い感嘆符が表示される。エラーコード43を報告するユーザーもいた。GPUがWindowsに正しく認識されなくなるため、Smart Access Memoryどころの話ではない。AMDは翌23日にこの問題を認め、26.6.1へのロールバックを推奨した。

6月24日、ホットフィックスとしてAdrenalin 26.6.3が公開された。修正対象はWindows 10での26.6.2インストール問題だけで、Smart Access Memoryの表示バグへの言及はない。

6月のAMD Radeonドライバ問題の経緯
6月2日
Adrenalin 26.6.1公開
SAM表示が「無効」に。BIOSやGPU-Zでは有効のまま
6月22日
Adrenalin 26.6.2公開
Windows 10でGPU認識不能。黄色い感嘆符が表示される
6月23日
AMDが問題を認める
26.6.1へのロールバックを推奨
6月24日
Adrenalin 26.6.3ホットフィックス公開
26.6.2のインストール問題のみ修正。SAM表示バグは未修正
※26.6.3はプレビュー版。WHQL正式版は翌週予定と告知されている

現時点で、Windows 10のRadeonユーザーは二つの問題を抱えている。26.6.1由来のSmart Access Memory表示バグは未修正のまま残っており、26.6.2/26.6.3ではWindows 10対応そのものに不安が生じている。AMDは26.6.3について「1週間後にWHQL版で恒久修正を提供する」と告知しているが、SAM表示バグがその対象に含まれるかは明言されていない。

繰り返される同じ症状

この問題は今回が初めてではない。2024年7月にもAdrenalin 24.6.1でSmart Access Memoryが「利用不可」と表示される同様の報告が上がっていた。そのときもBIOSのResizable BARを一旦無効にして再有効化し、再起動することで表示が復帰するという回避策が共有されていた。

パターンは同じだ。ドライバ更新→ハードウェア構成変更の検知→Adrenalinの表示が崩れる。ドライバとOSビルドの間でPCIeバーの状態通知に齟齬が生じていると推測されているが、AMD側からこの症状に対する公式の説明は出ていない。

何をすればいいのか

Smart Access Memoryの表示が「無効」になっている場合、まずGPU-Zで実際のResizable BARステータスを確認するのが最も確実な判定方法になる。GPU-Zのメイン画面右下にResizable BARの項目があり、ここが「Enabled」であれば性能に影響は出ていない。

Adrenalinの表示を回復させたい場合、これまでのユーザー報告で成功率が比較的高かった手順がある。BIOSに入ってResizable BARとAbove 4G Decodingを一旦無効化して保存・再起動し、再度BIOSに入って両方を有効化して保存・再起動する。Windowsがハードウェア構成の変更を検知し、Adrenalinの表示が復帰する場合がある。ただし、これでも復帰しないケースも報告されている。

DDUによるクリーンインストールはこの表示バグに対しては効果が不確実で、むしろゲームの安定性悪化を招いたという報告もある。26.6.1で安定動作しているなら、表示の不正確さは受け入れてドライバを維持するのが現実的な選択肢になる。

26.6.2のFSR 4.1を使いたいWindows 10ユーザーは、26.6.3ホットフィックスの適用が前提になる。ただし26.6.3はプレビュードライバであり、来週予定のWHQL版を待つ選択肢もある。Windows 11環境ではこれらの問題は報告されていない。

6月のAMDドライバに何が起きているのか

表示バグ自体は実害がない。だが6月のAMDドライバを時系列で並べると、Windows 10環境の品質管理に懸念が残る。26.6.1でSmart Access Memoryの表示が壊れ、26.6.2ではGPUの認識自体が壊れ、26.6.3で後者だけを応急処置した。3週間で3本のドライバを出して、そのうち2本がWindows 10で問題を起こしている。

Windows 10は2025年10月にサポートが終了したOSだ。AMDはドライバの提供を継続すると表明しているが、テストの優先度がWindows 11に傾くのは避けられない。今回の一連の問題は、その傾きが目に見える形で表面化した最初の事例かもしれない。

Windows 10に留まっているユーザーには、それぞれの理由がある。ハードウェアの互換性、UIの好み、Windows 11のシステム要件を満たさないPCを使い続けている事情。その判断自体は尊重されるべきだが、ドライバの品質という面では、Windows 10環境のリスクが着実に上がっていることを今回の件は示している。

Adrenalinの表示が「無効」でも慌てる必要はない。GPU-Zで確認すれば済む。だが「確認すれば済む」を毎回ユーザーに要求する状態を、AMDがいつまで放置するのかは別の問題だ。

参照元

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