ピザチェーンまで参戦。ソニーのディスク廃止に業界が総反発

ピザチェーンまで参戦。ソニーのディスク廃止に業界が総反発
Sony

ソニーのPlayStationディスク廃止発表から48時間。24時間以上沈黙したソニーとは対照的に、業界の内外から声が止まらない。


ドミノ・ピザが「デジタルピザ」を発表した日

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が新作ゲームのディスク生産を2028年1月以降終了すると発表したのは7月1日のことだ。その翌日、ドミノ・ピザUKの公式アカウントが声明を出した。

ゲーム業界のトレンドに対応し、2027年4月1日をもってフィジカルピザの生産を中止する。今後はデジタルピザのみを提供する。ピザのダウンロードコードを購入し、想像力で食べてほしいという。

日付が4月1日なのは偶然ではない。投稿には公式声明のフォーマットが使われており、SIEの発表文そのものをなぞった構成になっている。続く投稿では、おなじみのキャッチフレーズ「Domin-oh-hoo-hoo」を「Domin-oh-hoo-whose-dumb-idea-was-this」に変更すると付け加えた。

この投稿がドミノ・ピザにとってソニーへの初弾ではない。数週間前にも、クレイトスの登場しない『ゴッド・オブ・ウォー ラウフェイ』について「ペパロニのないペパロニ・パッション」と揶揄しており、サンタモニカスタジオの公式アカウントから直接の返信を引き出している。

KFCのスペイン公式アカウントも同日、フライドチキンの「フィジカルフォーマット」を廃止し、アプリ経由の「偽PNGフォーマット」のみで提供すると発表。ソースはDLCとして個別販売、「フライドチキンを盗んだりしませんよね?」と、かつての海賊版対策広告のパロディまで展開した。

VPNサービスのProtonVPNは逆方向から攻めた。2027年4月1日からサービスを完全にフィジカル化すると宣言。暗号化された手紙を郵送し、技術サポートにはスタッフを直接派遣するという。

どの投稿にも大量のリアクションが付き、ドミノ・ピザUKの風刺は2026年7月の最もバイラルなゲーム関連投稿の一つになった。

「黙ってはいない」と宣言した企業たち

風刺の裏には実害がある。SIEの決定で直接的な打撃を受ける企業は、笑いではなく声明で応じた。

ゲームの郵送レンタルを2002年から続けるGameFlyは、声明の中で「フィジカルメディアの力を信じている」と述べた。ゲームと映画のレンタルを「柔らかく保湿された手からディスクをもぎ取られるまで」続けるという。同時に、2026年1月以前に退会した元会員に向けて2.50ドルでの復帰キャンペーンを打ち出しており、声明と販促を一体化させている。

フィジカルゲームのコレクターズエディションやビニールレコードを手がけるiam8bitは、より直截に踏み込んだ。2016年の最初のフィジカルリリース以来、保存・所有・消費者の選択肢という価値観に導かれてきたとした上で、SIEの決定に「深い失望」を表明。声明は「Long live physical media」で締めくくられた。

iam8bitはブリザード、Remedy、カプコン、アナプルナ、Xboxなど多数のパブリッシャーと提携し、ゲームのフィジカル版やサウンドトラックのビニールを制作している。同社にとってSIEの決定は、事業基盤そのものへの脅威になる。

スペインのゲーム専門店Gameも声明を発表した。「最近の業界の決定を深く懸念している」とした上で、「黙ってはいない」「デジタルとフィジカルは共存できる。実際、何年もそうしてきた」と述べている。この声明はStop Killing Games運動の文脈と重なる。ゲームのサーバー停止によってプレイ不能になる問題に対し、EUを中心に法整備を求める動きが進んでいる。

5万票が突きつけた数字

ゲーム技術分析で知られるDigital FoundryがYouTube上で投票を実施した。「SIEは2028年からのフィジカルゲーム廃止を再考すべきか」という問いに対し、5万票を超える回答が集まり、86%が「フィジカルメディアはまだ重要だ」を選んだ。デジタルが未来だと答えたのは14%にとどまる。

Digital Foundry(機械翻訳)

投票のコメント欄で最も多かった反応の一つは「PS5が自分の最後のコンソールになる」という声だった。

バーンスタインのゲーム産業アナリスト、ロビン・ジュー(Robin Zhu)氏はこの投票結果を別の角度から読んでいる。消費者の声と購買行動は一致していない。フィジカルを支持すると言いながら、実際にはデジタルで購入している。SIEの経営陣はその販売データを見て判断を下した。デジタル販売比率は2025年度第4四半期で85%に達しており、SIEが「消費者の嗜好に合わせた自然な方向性」と説明する根拠はそこにある。

86%がディスクの存続を求め、85%がデジタルで購入している。この矛盾が、今回の騒動の核心にある。消費者は利便性を選びながら、選択肢を失うことには反対している。

SIEディスク廃止発表に対する業界反応
企業・団体反応
風刺
ドミノ・ピザUK「デジタルピザのみ提供」と公式声明で風刺
KFCスペインフライドチキンを「偽PNG」で提供と発表
ProtonVPNサービスを完全にフィジカル化すると宣言
声明
GameFlyフィジカルメディアの存続を宣言
iam8bitSIEに「深い失望」を表明
Game「黙ってはいない」と声明
VGHFデジタルゲームの法的保存手段を要求
便乗
Game Informer「雑誌は取り消し不能な所有物」と購読を訴求
Evercadeカートリッジの紹介動画を投稿
沈黙
SIE24時間以上全SNSアカウントを沈黙
※VGHF = Video Game History Foundation

ソニーは24時間、何も言わなかった

SIEの対応はこれらの反応とは対照的だった。発表から24時間以上、PlayStationの公式アカウント(X、Facebook、Bluesky、Instagram)はすべて沈黙した。YouTubeにはサードパーティのトレーラーが数本上がったが、SIE自身の投稿はなく、そのトレーラーのコメント欄もディスク廃止への批判で埋まっている。

SIEが炎上時にSNSを停止するのは前例がある。2026年前半にBluepointスタジオを閉鎖した際には72時間以上の沈黙を保った。

ゲーム保存の推進団体、ビデオゲーム・ヒストリー・ファウンデーション(Video Game History Foundation)も声を上げた。フランク・チファルディ(Frank Cifaldi)ディレクターはディスク廃止に加え、同日に発表されたPS3とPS VitaのPlayStation Store閉鎖にも触れ、デジタル専用ゲームの法的な保存手段をESA(エンターテインメント・ソフトウェア・アソシエーション)に求めている。

Video Game History Foundation (@gamehistoryorg.bsky.social)
Statement from VGHF director Frank Cifaldi on the discontinuation of physical PlayStation media, and the closure of the PS3 and PSP digital storefronts.

笑っているのはドミノ・ピザだけではない。Game Informerは「印刷された雑誌は取り消し可能なレンタルライセンスではない。届いたら永遠にあなたのものだ」と読者に購読を呼びかけ、レトロゲーム機メーカーのEvercadeはカートリッジにマニュアルを同梱する自社製品の紹介動画を投稿した。

いま業界全体が、SIEの決定を自社の立ち位置を示す機会として使っている。SIEがそこから何を読み取るかは、まだわからない。


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