マスクのOpenAI訴訟、陪審が2時間で全却下

イーロン・マスクがOpenAIに対して起こした訴訟を、カリフォルニア州の連邦陪審が全員一致で退けた。審議はわずか2時間足らず。理由は「訴えるのが遅すぎた」。

マスクのOpenAI訴訟、陪審が2時間で全却下

イーロン・マスクがOpenAIに対して起こした訴訟を、カリフォルニア州の連邦陪審が全員一致で退けた。審議はわずか2時間足らず。理由は「訴えるのが遅すぎた」。


90分で決着した3週間の裁判

2026年5月18日、カリフォルニア州オークランドの連邦裁判所で、9人の陪審員がイーロン・マスク(Elon Musk)の訴えをすべて退けた。

審議は太平洋時間の午前8時30分に始まり、午前10時23分に終わった。実質 2時間足らず だ。イボンヌ・ゴンザレス・ロジャース(Yvonne Gonzalez Rogers)判事は、評決を直ちに自らの判断として採用した。

陪審の判断を支持する証拠は十分にある。だからこそ、私はその場で棄却する準備ができていた。

判事は評決後にこう述べた。

マスクの訴えの相手は、OpenAIのCEOサム・アルトマン(Sam Altman)、共同創業者グレッグ・ブロックマン(Greg Brockman)、そしてMicrosoftだった。約1300億ドル(約20兆7000億円)の損害賠償、アルトマンとブロックマンの解任、営利法人の解体を求めていた。

「訴えるのが遅すぎた」

争点は、マスクがいつ「違反」に気づいたかだった。

カリフォルニア州法では、公益信託に関する請求には 3年 、不当利得の請求には 2年 の時効がある。マスクは、2023年にMicrosoftがOpenAIの営利部門に100億ドルを投資した時点で「慈善団体が盗まれた」と確信したと証言した。それまではアルトマンの説明を信じていたという。

OpenAI側の弁護団は、マスクが遅くとも 2017年 には営利化を知っていたと反論した。マスク自身が自らのファミリーオフィスを通じてOpenAIの営利版となる会社を登記していた事実も示された。

陪審はOpenAI側の主張を採った。時効の判断で決着がついたため、アルトマンとブロックマンがOpenAIの非営利ミッションに違反したかどうかという本題には、陪審は踏み込まなかった。

控訴の壁

マスクの弁護団は控訴の権利を留保した。だが、ゴンザレス・ロジャース判事は控訴が難しい見通しを示した。時効の問題は事実認定であり、法律上の判断ではないためだ。

この訴訟が何だったかを陪審の判断が裏付けた。競合他社を妨害しようとする偽善的な企てだ。

OpenAIの弁護士ウィリアム・サビット(William Savitt)は裁判所の外で記者にこう語った。

マスクは評決後、自身のSNSでゴンザレス・ロジャース判事を「ひどい活動家判事」と呼び、「慈善団体の略奪を数年隠し通せば無罪放免という前例を作った」と書き込んだ。

IPOへの障壁が消えた

3週間にわたる裁判では、OpenAI共同創業者イリヤ・サツキバー(Ilya Sutskever)を含むテック業界の億万長者6人が証言台に立ち、数百ページの内部メール、テキストメッセージ、会議メモが証拠として提出された。マスク、アルトマン、ブロックマンの3人はいずれも評決の場に出席していなかった。

この訴訟は、OpenAIが非営利から営利の公益法人(Public Benefit Corporation)へ組織変更を進めるうえで、最大の法的障壁だった。

OpenAIは2026年3月に評価額 8520億ドル (約135兆円)で 1220億ドル の資金調達を完了している。NVIDIAが300億ドル、Amazonが500億ドル、ソフトバンクが300億ドルを出資した。2026年第4四半期のIPOを準備中とされるが、PitchBookのアナリストはコスト構造と長期インフラ投資の規模から、2027年にずれ込む可能性を指摘している。

共同被告のMicrosoftも、同じ時効の理由で全面的に免責された。Microsoftは2019年から2023年にかけてOpenAIに計130億ドルを投資していた。

マスクとOpenAIの対立経緯
2015年
OpenAI共同設立
マスクとアルトマンが非営利のAI研究組織として設立。マスクは初期に3800万ドルを拠出
2017年
営利化の動き
マスクは営利化を認識。自身のファミリーオフィスでOpenAI営利版の会社を登記(陪審が時効判断の根拠に採用)
2018年
マスクがOpenAIを離脱
資金提供を停止し、組織から退いた
2019年
営利子会社の設立
OpenAIが営利部門を設立。Microsoftが投資を開始(2023年までに計130億ドル)
2023年
Microsoftが100億ドル投資・xAI設立
マスクはこの時点で「慈善団体が盗まれた」と確信したと証言。同年、競合するxAIを設立
2024年
2月
マスクがOpenAIを提訴
約1300億ドルの損害賠償、アルトマンの解任、営利法人の解体を要求
2026年
3月
OpenAI、1220億ドル調達
評価額8520億ドル。IPO準備が本格化する中、裁判は最大の法的リスクとされた
2026年
5月18日
陪審が2時間で全却下
全員一致で時効を認定。判事もその場で評決を採用。OpenAIの最大の法的障壁が消えた
※ カリフォルニア州法の時効:公益信託は3年、不当利得は2年

マスクは2015年にアルトマンとOpenAIを共同設立し、初期に3800万ドルを拠出したが、2018年に離脱。2023年に競合するxAIを設立し、2024年2月にOpenAIを提訴していた。

裁判所が出した答えは、訴えの中身ではなくタイミングの問題だった。マスクが次に何を仕掛けるかより、OpenAIがこの先どう変わるかのほうが、業界にとっては大きい。


参照元

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